神田連雀亭昼席7(上・連雀亭のアクリル板が外された)

もう月末だが、11月わずか3回目の外出。
別にフラストレーションはない。
ワンコインと迷って神田連雀亭の昼席へ。

入口抜けて、いつものように検温しようとしたら機械が撤去されている。
客席上手側にある木札、「三遊亭天歌」のものが「真打昇進」のスペースに置かれていたのだが、なくなっている。
ちゃんと「吉原馬雀」の新しい木札が落語協会の香盤の中にあった。

焼肉 ふう丈
大工調べ 遊かり
辰巳の辻占 小もん
花筏 鷹治

客は5人。これぐらいの人数だと特定されそうでイヤだが。演者にはとうに特定されてるはず。
笑点特大号でおなじみの美魔女も出てるのだから、もっと来てもいいのに。

その美魔女・遊かりさんが前説に出てきた際にようやく気付いた。
高座と客席を仕切るアクリル板がない!
この、いつまでもマスク着用を義務付けていた席も、ついに仕切りを外した!

遊かりさんはアクリル板には触れず諸注意。
携帯が鳴りますと、いえ鳴らしていただいてもいいのですが、特定できます。この人数では。

あと、なにか違うなと思うと、メクリ台が下手から上手に移っている。

トップバッターは三遊亭ふう丈さん。
昨日までは春風一刀さんの名があったが、代わっている。
ふう丈さん、坊主頭。初めて見る。
なんでも、しくじりがあったらしい。

なにかお気づきになりませんかと。
アクリル板の前に、自分の頭のことに触れたいらしかった。

アクリル板、今日外れたんですとのこと。
昨日も番頭会があり、もういいんじゃないかということで意見集約して、オーナーの加藤さんにも具申した。オーナーは渋い顔。
なにしろここのアクリル板は特注なのだ。それに外してどこ持っていくんだ。
オーナーは一切費用を取らず貸してくれている。だから芸人は頭が上がらない。
だが本日来たらなくなっていた。なんて素早い。

でっち定吉個人は、アクリル板のことはそんなに気にしていなかった。マスク義務のほうがよほど気に障っていた。
まあそれでも、ひとつの時代の終わりとして、感慨深い。

アクリル板ないとほんとに声が通りますねとふう丈さん。
でも、もういいわけできませんね。スベッたときにアクリル板のせいにできませんからね。

オーナーへの具申を、世代間の、そして地位の違う間でのコミュニケーション断絶に広げ、本編へ。
焼肉屋で、社内の宴会。
しかし若い社員が乾杯の際、ブルーハワイを頼むので、幹事の社員はご機嫌を損ねる。こんなときはみんなでビールで乾杯するものだ。
え、ビール好きじゃないですし、同じもの頼む意味がわかりません。
幹事の上司が仲裁に入るが、今後はタン塩を頼んでいないので、上司がおかんむり。
喧嘩になるが部長が仲裁に入る。
この構図が繰り返される、天狗裁き方式の噺。
焼肉の作法など、かくあるべしと思っているのは当人だけで、正解なんてどこにもないことを描く、風刺の効いた一席。

面白いのだけど、私は新作落語には「飛躍」が必要と思っていて、その点物足りない。この噺は地に足がついたままだ。
上方に行くと、飛躍のない新作がたくさんあるんですけどね。

それはそうと、久しぶりに聴いたふう丈さん、落語が上手くなっていて驚いた。
喋りのリズムが非常にいいし、なんというか、噺を徹底してコントロールしている感じ。
いや、今まで下手だったなんて言わないけども、どこか噺がご本人から浮き上がってしまうようなムードもあったから。
これなら古典だって上手いのでは。

次が三遊亭遊かりさん。
あいびきを隠し持ってきて、体で隠しながらそそくさと着席。
「いや〜最近もうトシのせいかヒザが痛くなりましてね〜今日は正座の補助器具を使わせてもらってます。いささかお見苦しいでしょうが」
なんてことは、一切言わない。
なんだかちょっと乙女じゃないですか。下りる際も、脱いだ羽織であいびきくるんで退場していました。

落語には江戸っ子が出ますけど、江戸っ子は少ないんです。私は千葉の佐倉です。
先ほどのふう丈さんは熊本で、トリの鷹治さんは愛知県の岡崎です。
このあと出る小もんさんは熊本ですね(本当は群馬)。
私の大師匠小遊三も山梨の出ですし、昇太師匠は清水ですしね。

今日はいつもやらない噺をしてみたいんですと言って、なんと大工調べ。
連雀亭昼席では、二番手の人はつまり仲入り扱いのようで、比較的大ネタもいいみたい。
名前を出した大師匠の得意ネタ。そこから来ているのだろう。

意外な気がしたが正攻法の大工調べ、啖呵も含め絶品でした。

本編は明日

 
 

作成者: でっち定吉

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