拝鈍亭の橘家圓太郎3(上・落語の中の差別要素をさりげなく考える)

日曜は雑司が谷拝鈍亭に橘家圓太郎師が出る。3年連続で参戦。
先週聴いたばかりだけど、気にしない。
今、いちばん面白い噺家は橘家圓太郎だ。
その前に、寄っていくところがないか。
高円寺演芸まつりを実施中で、ひとつワンコインの会を見つけた。
NHK新人落語大賞を獲った、桂慶治朗さんの会。
慶治朗さんは、冒頭15分でもって落語入門。学校寄席などでやるもの。
伊藤夢葉先生の苦笑マジックを挟み、もう一席「鬼の面」。

慶治朗さん、声量あって、しかしながら押し付けがましくない芸風でいいのだけど、今日はやや消化不良気味。
鬼の面はもう少し人情漂う一席であって欲しい。これは東西の違いじゃないと思う。
ちょっと軽いなあ。
上方落語でも、押し付けがましくないほうの芸人ですと語っていた。
夢葉先生は毎回同じなのに、面白過ぎる。
高円寺の婆さん客は、高座始まってからでも、なぜ開演に遅れたのかという話を平気でしている。
演芸まつりは大変結構だが、客の質の向上も目指して下さい。

急いで電車に乗る。
高円寺から雑司が谷(駅は護国寺)へは、一番早いのは、自転車。
バイクシェアにしようかとも思ったが、くたびれて絶対寝そうなのでやめた。

拝鈍亭は客30人強。
ちなみに昨年は3月に圓太郎師の会があった。それ以来。

マクラ20分(歯医者、ハラスメント、コンプライアンス)
馬の田楽
マクラ5分(おかみさんの下着)
厩火事
(仲入り)
マクラ10分(落語東と西)
祇園祭

2週連続で厩火事に遭遇だ。
季節ものだったら被りやすいが、そういうわけでもなく。
ただ、続けて聴いても非常に面白かった。
その前に、やはりマクラが爆笑。
本当に来てよかった。

圓太郎師、今日は絶好調ですよと。
なにせ1週間、ほっぺたが痛くて。ハチに刺されたみたいな。でも、中にも外にも傷はない。
かかりつけの歯医者によると、やっぱり被せた歯の神経の問題かなと。
レントゲンは撮ったが、歯が横に割れた場合は映らないそうだ。
これ以上はCTスキャンしかない。ただ、CTは2週間待ち。
もっと早い方法をというわけで、明日開けることになりました。
この北区中里の先生には、前座の頃からお世話になってます。
私の親知らず4本抜いてくれました。お金取らないで。
ただ、最近3千円取られました。取るんですかと訊いたら、真打だからと。
先生は口が悪いです。気をつけなきゃいけないんですよ最近は、こういう医者と患者とか。師匠と弟子とか。

ここから話はハラスメントへ。
1週間前もそうだったが、でも同じ話は出ない。
「ハラス弁当」という夫婦喧嘩のギャグから、放送禁止用語の話へ。一時期流行りましたとのこと。
われわれも団体に呼ばれて糾弾されました。
われわれはお客さまに合わせる立場です。
寄席の短い時間で、こちらの考えがすべて伝わるわけじゃないですから、発言にはいつも気をつけています。
宗教、贔屓の野球チーム、支持政党、こういうことにはなるべく触れないようにしてるんです。

言葉狩りの流行った時代はたしかにあった。
私は当ブログでこの周辺のことをちょくちょく取り上げているが、最近は本当に緩やかになった。
ふぐ鍋や、唖の釣り、心眼や麻のれんまで平気で放送されるし。代書屋の朝鮮人のくだりまで。
差別を表面的にではなく、ちゃんと中身で判断する成熟した時代になった。
こういうことがあるので、でっち定吉は現代社会が窮屈だとはかけらも感じていない。むしろ、いい時代。

それから動物。
落語には、動物を叱りつけるような場面もある。でも、実際には飼い主と信頼関係があるのだ。
私は愛犬家なので、犬が社会性をいかに身につけるかについてはうるさいのです。
マンションに住む、仕事はしてないがお手当をもらっている女性がいます。これについても気をつけて発言しないといけない時代ですが。
こういうところの小型犬、昔は狆でした。今は狆飼ってる人は少ないですが。
こういう犬は、女性が寂しいからというので与えられているので、社会性が身についていません。すぐにキャンキャン吠えます。
それでも、こういう犬の中にも社会性を身につけているのがいます。たぶん、いろんな人が家に来るんでしょうね。

マクラはたっぷり20分。
やりたい噺がここ(喉元)まで上がってきたと圓太郎師。
最近昔覚えた噺をやり直しています。思い出すと、やりたくて仕方なくなります。

「馬方船頭おちの人」を説明。
馬方や船頭は、客の命を預かってるから言葉が厳しいわけです。
職業と動物に気を遣ってようやく本編に入るのだった。
邪魔にも思えるが、時間がたっぷりあるこの席では、演者がどんな人間かわかってもらえる。差別主義者でないことも。
そして、現代の気を遣いがちな客が、落語を聴きながら「これ、いいのかな」と悩まなくてよくなるのだ。

田舎の馬方が、峠ふたつ超えて味噌樽を運んできた馬をねぎらっている。
一方で、前掻きすんでねえと叱りつけてもいる。
このために動物愛護を振っているのだった。
これは、珍品の部類に入るだろう、馬の田楽である。
寄席では白酒師から聴いたが。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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