柳枝のごぜんさま(中・「にかわ泥」)

目黒のさんま、15分にだいたい収まりましたねと柳枝師。

しかし、柿の木坂から中目黒をdisって、嫌なムード皆無というのは改めてすごい。
一般論として、ギリギリを攻めたギャグがあちらに落ちて、そんな演者に対し気分悪いなんてこともよくある。
攻めてるから仕方ないと諦めることもあれば、演者の今後の評価に関わることだってあるが。
柳枝師についてはそれ以前に嫌味を感じない。育ちの良さを感じさせる。

この二席目のマクラ。
金子みすゞの会をやります。「みんな違ってみんないい」の。
「みんな違って」という噺で、亡くなった圓窓師匠が作りました。
圓窓師匠は先代柳枝師匠の最後の弟子ですからその縁で。
圓窓師匠は金子みすゞ大好きでした、
金子みすゞの詩は、面白いですよ。落語っぽいところもあって。
柳家小満ん師匠とやります。小満ん師匠も金子みすゞ大好きなんです。

もう一席、泥棒の噺をやって休憩にします。
泥棒の噺は縁起いいんです。お客さまの懐を取り込むと言って。
十両盗むと首が飛び。どうしてくりょう三分二朱と振る。

この本編が、演題のわからない噺。
でも、内容は知っている。いったいなんだっけ。
結構、泥棒のマイナー噺って多いな。
釜泥、もぐら泥、両泥とか。でもどれでもない。

泥棒に入られてもまるで動じない男。夏泥に似てるが、夏泥みたいに盗られるものがないわけではない。
二尺八寸だんびらものを振りかざす泥棒に男は、「商売柄寸法は見ればだいたいわかるが、それは一尺八寸がいいところ」。
一尺もサバ読むとは。
一両二分あるから持っていけ、いや、明日の朝食など必要なのでな、二分は残しておいてくれ。
調子狂うが、一両手に入れて帰ることにする泥棒。
今度来るときは先に教えてくれと男。用意しとくから。
泥棒、来た道を帰ればいいのに、うっかり奥に進んでしまう。
そこに大入道がいたので、思わず首をハネてしまう。

それまでの穏やかさがウソのように声を張り上げる男。
修理したばかりの仏さまの首を落とすとは!
お前にやった一両がどこから出てると思う。この仏さまの修理賃だ。

ようやく演題がわかった。
上方落語の「仏師屋盗人」である。
東京では「にかわ泥」だったはず。現場で聴くのは初めて。
いかにも西の噺。京都なら仏師もたくさんいたわけで。
まあ、江戸にだって仏像あるんだから仏師もいたでしょう。

泥棒をこき使い、にかわを煮させる。
仕事が増えたと文句言いつつ、深夜の作業でようやく首はくっついた。

夏泥は、泥棒が施しをする価値観の逆転を狙った噺だが、このにかわ泥もまたもうひとひねりがあって面白い。
余計なことしなければ、一両ぐらいいつでもくれてやる仏師であるが、仕事の邪魔するやつは許さない。
そしてトホホの泥棒も、盗み以外の悪いことした自覚はあるのだ。
だからにかわを準備する間、仏師が寝ていても逃げない。

噺の骨格が揺るがないので、大声上げて泥棒に指図する仏師、実に自然。
というか柳枝師はきっと、理由があったうえで大声出すのが好きなのだ。

十両盗めば首が飛ぶを回収する、楽しいサゲ。

仲入り休憩後、もう一席。
大谷選手すごいですね。ニュースでやってますけど50-50達成ですよ。
今の大谷選手の活躍、マンガに描いてたら編集者にボツにされてますね。リアリティなさすぎですもん。
通訳の件でケチはつきましたけど、完璧すぎますよね。奥さんも美人で。
なにか完全じゃないところないですかね。実は足がすごく臭いとか、水虫がひどいとか。

「大谷に骨折してほしい」ギャグとは根本が違うなと感心。たとえ足が臭くったって実害はない。
やはり柳枝師はひとがいいなと思う。

赤パンツだけ売ってたりする巣鴨の話。
和菓子はみずの派と伊勢屋派に分かれるみたいですね。
私はタカセ派です。池袋の駅前にあるお店の支店ですね。
ここのパンが素朴で大好きで。素朴が一番旨いですよ。
シュークリームなんかも素朴なのがいいですよ。
ベアドパパなんてクッキー生地で美味しいですけど、完成度が高すぎまして(残念、ビアードパパだ)。
それに比べて、何でしたっけ、あの(お客さんから「ヒロタ」と声)、そうヒロタですよ。
あれがいいんです。クリームも全然入ってないですしね。生地もふにゃふにゃで、あれを食べるとホッとします。

甘味について語っているのは、禁酒番屋のフリ。
つなげちゃうからすごい。

マクラの途中ですが、続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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