柳枝のごぜんさま(上・真打ち競演用「目黒のさんま」)

金曜から3連休に掛けて、行きたいところは無数にある。
当初土曜の外出ついでに、黒門亭で駒治師を聴くつもりでいた。
土曜は他にもある。にぎわい座地下で白鳥・彦いち・はん治というキャンプ好きの会。
最近この人たちの話よく聴いてるもんで面白そうだなと。
そして日曜は梶原いろは亭で「なかよしおじさんズ」(鯉橋・小助六・夢丸)も。
いろいろ考えすぎて、結局金曜のうちに出かけてしまうことにした。それも午前中。
巣鴨スタジオフォーでは午前11時から「柳枝のごぜんさま」。
何度か来ようと思った会。先日、直前で神田連雀亭ワンコインに替えてしまった。
大名跡を継いでいる柳枝師、若手真打の中でかなりの腕達者なのは間違いないが、決してそれほど聴いてはいない。

やや眠かったが、地下鉄で3駅ほど寝られてリフレッシュ。
お客は20人強。
なじみの客が多いのだろう。もっとも、偉そうな常連などいない。
演者の人柄がそうさせるんでしょう。

目黒のさんま
にかわ泥
(仲入り)
禁酒番屋

9月下旬になっても暑いですね。以前なら、10月の声を聞くと長袖準備してませんでした?
今は基本Tシャツですもんね。
平日の朝からこれだけお越しいただきありがとうございます。
私お客だったとき、11時の会に行こうなんて思ったことないですよ。
この会は勉強会でして。いまひとつ手の内に入っていない噺をやります。
その分料金をお安くしています。
だから、もしデキが悪くてもそういうものですので。

謝楽祭の話。
もとは8月1日にやっていた、圓朝まつりでした。圓朝を偲ぶといいつつ、ただの顔見世ですね。
お客さんがどんどん増えて全生庵ではまかないきれなくなりまして、湯島天神に移りました。移ってもう10年ぐらいです。
全生庵から出て、1年だけその近所の防災広場で開催したんです。ただグラウンドで風が強くて。師匠がたみんな砂埃だらけで区別がつかなくなって、湯島に移りました。

謝楽祭では、私は天どん師と一緒に似顔絵描きですよ。
今年は西陽が強く、本当にしんどかったです。
午前10時からスタートなんですけど、お客さんはもう並んでるんですね。でも10時より早く始めると実行委員長に叱られますから待ってもらってました。
なのに隣の志ん輔師匠、時間前に物販始めてるんですよ。お客さんはそれ見て、なんで始めないのっていいますし。
その声が志ん輔師匠の耳に入りまして。師匠が言うんですよ「いいんだよ、始めたって。なにも言われやしないよ」。
お客さんからもつつかれるので仕方なく始めました。また、天どん師匠が遅れてやってきまして。なんでもう始めてるんだよなんて叱られまして。
志ん輔師匠、フォローしてくれるのかと思ったら知らん顔で。
私の会に来てくださるお客さんは、列に並びません。遠くから手を振ってくれたり、差し入れ置いていってくれたりします。
住吉踊りが流れてくると、ようやくもうそろそろ今年も終わりだなあと。私は住吉踊り観たことがありません。
時間間際に並んでいるお子さんの絵を間に合わせるため、その前数人は手抜きでした。本当、申しわけないです。

最近はうっかりすると、「落語の上手い絵描きさん」みたいに紹介されることがあります。本業ですから。
おかげさまで、今度NHKラジオの真打ち競演に出してもらえることになりました。
演目は目黒のさんまです。今日やります。
なんですか? 勉強会ですからね。あまり出してないのは稽古しないと。
ひとつ問題があって、放送の時間は15分なんです。
師匠から教わったのは30分ですからね。縮めないといけません。そのリハーサルも兼ねまして。
今、11時18分ぐらいですか? 今からやって、33分までにサゲに入れれば大丈夫ですね。

と振って鯛と殿さまへ。
15分でも付属の小噺はちゃんと振るのだ。
三太夫さん代わりの鯛がないので困りまして。セブンイレブンもないですし。
なんてことをよく言うんですが、セブンイレブン行っても鯛は売ってないんですけどね。

殿さまのかけっこも入っていた。腹を減らすためには必要なんだろう。
ビリの殿さま、権力行使の上1位。あと全員2位。
ちなみに詰めまくって15分にしたのかと思いきや、さにあらず。
脱線小噺が長いのだ。
目黒のさんまも地噺だから、お血脈みたいなやり方してもいいわけだ。それでも実際にやった人は始めて見た。

脱線は、目黒について。
昔は田舎だった目黒も、今はちょっとセレブな住宅地として知られています。
いま目黒というと、なんだか中目黒のことになってます。
でも、柿の木坂の私からすると、中目黒はちょっと野暮な街ですね。
目黒川の桜有名で、目黒川もなんだか風情あるみたいな扱いですが、私に言わせればドブ川です。
桜は上野なんかいいですね、といきなり上野の桜の木になる柳枝師。
花見客を優しく見守る桜の木の擬人化。これはもう、新作の人たちの技法。
いっぽう中目黒の桜の木は、客に立ち止まるなとうるさい。
キリン、アサヒ? ビールはクラフトビール買ってくださいね。
おつまみはケバブがあります。
なに、足立区から来た? 帰れ。

殿さまにようやく戻る。
腹ぺこの殿さま、ウーバーイーツでも頼もうか。
ここはNHKではカットですね。

ここから先は早かった。
地の説明も最小限。房州産のさんまもとっとと蒸し上げられ、団子にされる。

いい客だなと思うのは、拍手のタイミング。
誰でも知ってるサゲだが、しっかり一呼吸あって手を叩く。

ちなみに当ブログの話だが番組名が3か所ほど「真打ち共演」になってた。
みっともない。直しました。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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