小ゑんハンダ付けwith馬石 その2(林家きよひこ「うちの村」)

「演題・演者」の順番の件だが、小ゑん師匠、ツイッターで「墓穴を掘った」って。
ご自身の会、このハンダ付けもそうだが、チラシが「演者・演題」の順になってると。あ、ほんとだ。

あとはトークの中で馬石師、「国立演芸場はどうもウケない気がする」ということだった。
私も先日、国立で聴いたけど。
技術者小ゑん師がそれを拾って、国立はマイクが違う。ステルス機みたいな集音マイクなのだと。
だから、演者からは一瞬、マイクがないように見える。
マイクがないと思って、ムダに大声でしゃべる人がたまにいるんだって。
あのマイク、本当に入ってるんですかねと馬石師。入ってるよと小ゑん師。

前座は、トークにおける話題の中心、やまびこの妹弟子、林家きよひこさん。
のだゆきさんみたいなおかっぱ。
高座返しをしてるのは見たことがあるが、高座は初めて。
「やまびこの妹弟子のきよひこです」
日本橋亭のほど近く、北海道は札幌の生まれですと自己紹介。
大都市札幌といっても、温泉街だから田舎であるそうな。定山渓温泉なんだろうか。
東京でいうと、東小金井ぐらいの感じでしょうかだって。それはちょっと違うと思うぞ。
先日、札幌に熊が出たというニュースを、地下鉄内で視る。そこに実家が映っていたんだと。

たぶん自作の新作である。寄席じゃないから前座でも新作やっていい。
主人公は、田舎から東京に出た女。
村から友達が訪ねてくる。村の近況をいろいろと聞く。
その後実家から電話で、祖母が危篤だと聴き、嫌いな田舎に里帰りする女。
久しぶりの田舎は、温泉を掘ったら石油が出て、金がうなっている。ドバイみたいな大発展を遂げている。
「ドローンのお化け」みたいな宙に浮かび上がる機械を、自家用車として村民みんなが持っている。

噺を作るのが上手く、そして話術も前座離れして上手い。
新作落語に不可欠だと私が思っている「飛躍」の要素の盛り込みかたも見事。
実際、ウケていた。
きよひこさん、必ず出世するであろう。女流落語界に新星現る。
一度聴いただけでそこまで確信している。
にもかかわらず、今回単体で見たとき、どうもしっくりこなかったのも事実。
なぜだろう。

どうやら、落語に対して「これは冗談なんですよ」というメッセージが欠けているためらしい。
古典落語も難しいが、新作落語もまた、実に難しいものだ。
常に冗談が漂うというのは、古今亭駒治師の新作にいつも感じる要素である。これがあることで、荒唐無稽な話にも没入できるようになるのである。
噺に対してマジに迫り切らない人の噺は楽しい。これは古典落語だってそうだが。
どこかにハンドルの遊びのような余裕があるといいらしい。
駒治師もしばしば、あえて素っ頓狂な状況を作っておいて、登場人物に、世界に対しての疑問をあえて抱かせることがある。
それにより、客の疑問を一緒に飲み込んでしまうわけだ。
古典落語でいうと、「転宅」で、泥棒と所帯を持ちたい女なんかいねえよという疑問を、泥棒と一緒に飲み込むような。

いっぽう、きよひこさんの作る世界は楽しいのだけど、整合性の取れない部分が多々あって、そこに引っかかってしまうのだ。
整合性など、取れなくていいのだと思う。噺の緩さ、遊びによって、整合性のなさが吸収されて気にならなくなるわけだ。
まあ、私の厳しめの感想も、もはや前座に対してのものではない。大いに期待してます。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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