小ゑんハンダ付けwith馬石 その3(柳家小ゑん「ほっとけない娘」)

ぎっちょんちょんジャズVer.で小ゑん師登場。
歴女のネタから、落語にもハマる女子がいる。
昭和元禄落語心中以来、落語の好きな女の子が増えているのを感じると小ゑん師。
ドラマの前にアニメが流行っていた頃、「劇中のあの噺が聴きたい!」という子が多かったと。
「死神」を一度聴きたい。誰のでもいいからなんて言う。
だけど、誰のを聴いてもいいわけじゃないんですよ、上手い人のを聴いてくださいと小ゑん師。

黒門亭でディープな落語マニアに向けてよく語っていることだが、あのアニメはしん平師が監修していたのだが、先に絵が上がってくるので直せなかったそうな。
前座がデビュー時に「時そば」やるはずないだろうと。あと、時そばの手が「応挙の幽霊」みたいだと。

歌舞伎なんかも好きになるとハマる子が多い。アタシは全然好きじゃないですけどと。
歌舞伎は最近、客足が減っているらしい。海老蔵の灰皿テキーラ事件を芝居化すればいいのにと。
お寺巡りにハマる子も多い。御朱印帳を集めたり。
このマクラはどうやら「ほっとけない娘」のフリらしいと気づく。
この後、四谷の坊主バーの話も入る。
もっとも人気のあるカクテルが「極楽浄土」、人気のないのが「無間地獄」。
池袋でこのマクラを聴いたとき、「顔の男」という珍品に入ったので驚いたのだが、本来は「ほっとけない娘」のためのマクラらしい。

小ゑん師冒頭で、今日の噺は皆さんわりと聴いたことがあるんじゃないかと思いますが、寄席では15分。こういうところで長い時間でやって、ストレス解消するんですと語っていた。
フルバージョンの今回は、実に40分であった。もちろん鎌倉の寺の道中付けが入る。言い立て終わってドッと中手。
以前も聴いた「ほっとけない娘」、また進化している。
TVのコレクションも持っている。
今回は超ロングフルバージョンなのに、知らない部分がないのは実に不思議だ。
この長い噺を日頃寄席で15分でやっている、そちらのほうにも感心したりなんかして。

オタクを楽しむ噺である。
オタクが、女性なのが珍しいものの、師の鉄道落語や電気落語と構造はいっしょ。
しかし小ゑん師の落語は、聴けば聴くほど古典落語。現代が舞台の落語なのに。
道中付けが入ってるとか、そういうことだけじゃなくて。
だから何度聴いたって楽しい。
幼少の頃から新作落語大好きの私であるが、実は小ゑん師については古典落語を聴きに来てるんじゃないかと思うことがしばしばある。
古典落語と同様、多くの教養が盛り込まれているのもまた楽しい。落語ファンはすでに教養マニアなところがある。

35になって、見合いを勧めても食いつかない娘。
少女マンガばかり読んでいたが親父からもらった和辻哲郎「古寺巡礼」から仏像にハマり、奈良に一人旅。
親は旅での出逢いを期待するが、娘の口からは、興福寺での阿修羅との劇的な出逢いを聞かされる。
そんな中で、同期の部下である「大仏」と知り合う親父。
顔がそっくりなので、娘も気に入って、とんとん拍子に鎌倉デート。

大仏と上司に呼ばれる寺出悟が、そこにいるだけで拝まれるというギャグ。酔っぱらって駅のベンチに横になるだけで、涅槃像と間違えられるとか。
こういう、あえてリアリティを裏切ってくるあたりに、落語ならではの味があるなと思う。
先に聴いたきよひこさんの落語にまだないのは、このあたりの風味と思う。つまり、こういうさりげないシーンで、噺の中に冗談が徐々に蓄積されてくるのだ。
表面的なストーリーだけ追ってしまい、「この交際は悲劇に終わるのだな」などと、真剣に考える必要はない。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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