国立演芸場12(中・林家正雀「親子茶屋」)

落語が3席続いて、ここで色物。漫才のニックス。
落語協会の寄席に最近非常によく出ていて、私もよく巡り合う姉妹漫才。それだけ席亭の評価が高いわけである。
ロケット団に迫る勢いじゃないか?
冒頭の「姉妹です」「祖父がアメリカ人です」。そして終盤の「お姉ちゃんがネタ書いてくれてます」だけがおおむね決まっていて、あとは様々なパターンがある。
今日は妹・トモが婚活するテーマ。「教会で結婚したい」「落語協会で?」というギャグを久々に聴く。
「そうでしたか」はあまり出ない。飽きたのかな。定着するまでやって欲しいななんて思う。
この日改めてニックス、舞台における姿勢がすごくいいなと思った。動き方が。動き自体がギャグという人を除けば、ニックスの動き方は特筆すべきものだ。

仲入りは林家正雀師。
若旦那というものがありますと。現実世界の若旦那といえば、親父と揉めてる花田優一であるが、そんな俗なことはこの師匠は言わない。
三道楽、飲む打つ買うのうち、若旦那が最もハマってはいけないのは博打ですと。酒と女は、体を悪くしたりするので控えめになるのだが、バクチは全財産を突っ込んでしまう。
かつてある紙屋の若旦那が博打に財産つぎ込んでしまいましたなんて話。懐かしい、大王製紙の事件を持ってくる。

博打はいけないというのは、「親子茶屋」のフリだよなと思う。
以前池袋で正雀師から、このフリのために親子茶屋だと思わされ「不孝者」のサゲまで来て勝手にずっこけたことがあった。
いや、ストーリーはかなり違うのだけど、「若旦那というものは博打はやらなかったそうで」というフリから入ったので、ごっちゃになってしまったのだ。
しかしその、3年前の謎が決着した気がする。やはり博打を仕込むのは「親子茶屋」のほうであって、勘違いなのか急遽変えたのか、いずれにしても正雀師、違うフリを入れてしまったのだろう。
親子茶屋も不孝者も、上方種。遊び人の息子を持つ商家の大旦那が主人公。
柳橋の芸者に入れあげている点、上方っぽいのだ。江戸の若旦那はもっぱら吉原にハマるから。
帰ってこない若旦那を迎えに、飯炊きの権助に化けて茶屋に出向くのが「不孝者」、若旦那が親父より芸者が大事だというので頭にきた大旦那が気晴らしに芸者遊びをしにいくのが「親子茶屋」である。
親子茶屋は、楽しく遊んでいる大旦那に、親父と知らない若旦那が飛び入りで座敷に加わってという噺。博打はサゲに出てくる。
先代(三代目)春團治の得意ネタ。正雀師もまた、ハメモノを入れる。
春團治や米朝のウケどころである、「親父が古い遊びばかりしていて、芸者は飽き飽きしている」というくだりはない。大旦那はとことん粋な人である。
ただし若旦那が、全額は悪いので半額持つと言っているのに対し「全額払えばいいのに」とおかみにつぶやくあたりは、さすが商売人。

扇子で顔を隠す所作をはじめ、実に難しい噺である。
そして、意外なぐらい軽いのである。軽やかというか。いいなあ。
親子茶屋でございましたと正雀師。しかし幕は下りない。これは踊りでもするのだろう。
まだ2月なので「松尽くし」をご覧に入れますと正雀師。名前を知らない前座さんが、松の扇子を持ってくる。
お囃子は、三味線の上手いおふゆさんですと。
踊りを披露して、大きな拍手を受ける正雀師であった。

仲入り休憩を挟んでクイツキ(兼ヒザ前)は金原亭世之介師。
森喜朗のおかげでまた男が責められると。あまり声高に言わないほうがよさそうな話。
女の人のほうが浮気率が高いんですよと。はて、そんな調査あったっけ。
家に帰って戸を開けたとき、チェーンが付いてたら、30%の確率で浮気してます。奥さんがシャワーから出てきたら、50%の確率で。
押し入れやトイレに男がいなかったら、ベランダにいます。その証拠に、高島平団地を車で走ると、ベランダでうずくまってる男がよくいます。
嘘つけ。
団地のネタから、ごく自然に冷蔵庫小噺に入る。そんなに面白い小噺と思わないのだが、入り方に感心しました。

本編は星野屋。
珍しい噺で喜んだのだが、デキのほうは今日はもうひとつでしたか。
とんとーんと運ばないといけない噺だと思う。ちょっと引っ掛かってしまって残念。
あと、旦那の狂言自殺に付いていかない妾は、もう少し可愛げが必要なのではないだろうか。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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