子ほめ | きよひこ |
無精床 | 小駒 |
長屋の花見 | 馬玉 |
ニックス | |
親子茶屋 | 正雀 |
(仲入り) | |
星野屋 | 世之介 |
ダーク広和 | |
抜け雀 | 馬生 |
「ミルクボーイです、お願いします。ああー、今、国立演芸場のチケット売り場で東京かわら版を出したときに、スタンプがにじまないように挟んでくれる白い紙をいただきましたけどね。こんなんなんぼあってもいいですからね」
芸術協会は桂宮治師匠の披露目で賑わう中、私は本日、国立演芸場の落語協会の芝居へ。
主任は金原亭馬生師。
この席では毎年「鹿芝居」をやっている。昨年も観たいなと思ったのだが行かなかった。そして今年はコロナでお休み。
披露目に比べると非常に地味な顔付けだが、そんなのがいい。私は今、この一門にかなり惹かれている。
緊急事態宣言の折、今年はわずかに2度目の落語。
今週水曜の昼間に、所沢で「雀々・喬太郎二人会」というのがある。人気のキョン師、コロナがなかったら、平日昼間でも早々に売り切れているところ。
安い席が1,500円なので最初はこちらに遠征しようかと思った。だが交通費も掛かるしやめる。
私にとっては、やはり寄席が基本です。
仕事が切れてしまっていたが、落語を聴いている最中に3つ決まった。大雨とはいえ、いいときに出かけた。
落語の前に1件街で用事があったのだが、有楽町のルミネが本日休館で果たせず。
2月なんだから調べていかないと。おかげでたっぷり時間が余ってしまう。
なんなら、有楽町から皇居沿いに歩いていくのだが、雨ではどうにもならない。
ちなみに開けっ放しの楽屋だが、覗きに行ってみたら手前に板が置かれて目隠しされていた。私みたいな奴がいるから隠すのでしょう。
いろいろ申しわけありません。
20人を超えるぐらいの客数でスタート。最終的には30人ぐらいか。
前座は彦いち師の弟子、女性のきよひこさん。
「先日健康診断に行って、『あなたは普通の女性の13倍、男性ホルモンが出ていますね』と言われた」というツカミからスタート。
前座も古くなると、こんな挨拶を入れたりする。
子ほめをずいぶんメリハリ付けて、たっぷりの演技でもって語る。デビューしたての前座がこんなことをすると白けるのだが、きよひこさんはさすがに上手い。
落語って難しいんだなと。こう思うのは、下手な落語を聴いたときが多い。
だが、上手い前座を聴いてこう感じた。上手いか下手かの差は、それほど明白とは限らない。
10分しか持ち時間がないので、どこか端折らないといけない。55から上の年齢を褒めるくだりを抜いていたのに、番頭さんに会って「上は教わったんだけどな」。いや、教わってないだろう。
番組トップバッターは二ツ目交互で金原亭小駒さん。先代馬生の孫。
ずいぶんと愛想がいい。福々しいのもいい。
海老床のマクラでもって、躊躇なく手を叩く人が数人。「手を叩かれるほどのネタじゃないですけど」とご本人。
無精床。つまらなかったわけではないが、眠気がこらえられなくてここで陥落。
最近国立に来て、寝なかったためしがない。ひたすら寝続けてるよそのおじさんもいたけどね。
次がお目当てのひとり、金原亭馬玉師。しっかり目を覚まして聴こう。
今年は馬玉師の落語会からスタートしたのだ。ちなみに私の好きな池袋下席昼は、この人の主任。行きたいと思っている。
今日は長屋の花見。
この噺、季節を先取りした2月ぐらいが一番いいのではないかな。
先日、「おなじはなし寄席」でも出た噺であり、文治師と塩鯛師(貧乏花見)を随分繰り返し聴いた。飽きてしまっても不思議はない。
だが馬玉師の語り、実に気持ちいい。
この人の落語が大変好きなのだが、「声がいい」とか「編集力に優れている」とかいった部分部分ではなくて、トータルでどこが好きかは非常に説明しづらい。
だが、今日はひとつ謎が解けた気がする。幼少期から繰り返して聴いている噺を、新鮮に聴かせてくれる見事な語り。
落語好きの頭の中には既存の落語が詰まっている。よく出る噺の場合、なんとなくテキストができあがっている。
そのテキストを、常にちょっとだけ裏切ってくる馬玉師。
「甘茶でかっぽれ」に対する「番茶でサッパリ」。このクスグリは通常、ツッコミとして発せられるものだが、語り手が自らこう語っていた。
この微妙なズレがとても楽しく嬉しい。なるほど、飽きないわけだ。
いっぽう初心者には、とてもスタンダードな落語として記憶に残るだろう。
この噺の、すべての演出を知っているわけではない。季節ものだし。
だからどこまでが馬玉師の独自演出なのかはわからないのだが、かなりさりげなく、マイナーな流れを選んで採用しているように思った。
長屋の連中が表から大家に呼び掛けたり、お重の蓋をちょっと粋にずらしてみたり、大家が自らお茶けの最初の一杯を飲んだり。などなど。
先人の埋もれた演出を使うのもまた、すばらしい工夫であり、とにかく参りました。