笑福亭たまのブログ批判を批判する

昨日は、笑福亭たま師のコラムを記事にさせてもらった。
上方落語家が陥りがちな、東京落語の認識の誤りを正したもの。
誤りは正して欲しいが、昨日はそれ以外で師を悪く言ったわけではない。「インテリをこじらせている」と書きはしたが。
インテリなのはちっとも悪いことではないが、師の文章は「難しいことを難しく書く」スタイル。
難しいことは、やさしく書かないと価値がない。
・・・まあ、そう言うお前のブログは、「難しいことをやさしく書けているのか」と問われると困るけど。
たまに、自分で読み返して意味がわからないこともあるんですよ。
やさしく書くことには常に留意したいものだ。

今朝、ラジオの「なみはや亭」を聴いたら、たま師の新作落語が流れてきた。「バーテンダー」というもの。
これは悪くなかった。たま師の人気がよく理解できる一席。
声質も決して好きじゃなかったのだが、今回の落語を聴いて、師が確信的にこの声を選んでいることもわかった。
だから今日、ちょっと印象がよくなったばかりなのだ。

それはそうと、「難しいことを難しく書く」たま師の、以前のツイッターでどうしても気に入らないものがある。
以前たまたま見つけたものだったと思う。

(↑ クリックすると続きのツイートも出てきます)

なに言ってやがる、似非インテリめと。
かつて存在した落語のサイトが、噺家の悪口を載せていたのが気に入らないという。
今だったらブログである。私の書いているこの「でっち定吉らくご日常&非日常」だって、噺家の批判を載せていたら槍玉に上がっておかしくないわけだ。
いや、批判が気に入らないところまではわかる。誰だってそうだろう。
エゴサーチの結果、傷つく噺家だっている。そういう人の気持ちをないがしろにするブログが批判されるのは、ある種当然。
だが、批判の角度がまるでおかしい。
「落語界を大きくするために」は、悪口を載せるのは逆効果だ、だからやめろというたま。
要は、落語界に忖度しないとあんたも結局損するだろうと言っているのだ。

その、昔のサイトの管理人が唱える正義が、気に入らないところまではわかる。
好き嫌いから始まるしかない悪い評価を載せるのが正義だと主張する管理人。それに対する反発、理解できないなんてことはない。
だが、たまよ。「表現の自由」という概念は、まったく脳裏をよぎらないのか?
最優先されるべきはこれだろうに。
後から大騒ぎになっている大村愛知県知事リコール問題も、元はと言えばあいちトリエンナーレに端を発している。
当時、表現の自由に足枷をはめる人たちの実に多かったことよ。志らくとか。

ベースとして、「書きたいものを書くのは原則自由」。
ここを認めるところから始まらない批判は、悋気の独楽のように心棒が狂っている。
ブログで好きなことを日ごろから書いている私も、たまツイートにはかなりカチンと来た。

もちろん、表現の自由は無制限ではない。他人の人権と抵触する際には制限を受ける。
だが原則あっての話である。表現の自由という大原則を、落語界成長の効果測定のためという、実にあやふやな、立証困難な概念でもって自粛させようとするなんて。
結局は、「落語界に、そしてわれわれ噺家に忖度せよ」と言っているに過ぎない。

営業妨害の恐れを主張し、悪口書くなと言うところまでは間違っていない。
昨年、自殺者への言葉の暴力で大きく話題になったように、あまりにもひどい内容についてクレームを付けるのは正しい。

だが、「今日はイマイチ」程度の批判を取り締まろうとするのなら、その神経はどうかしている、あまりにも批判の根拠がなさすぎる。
実際は、彼が槍玉に挙げるサイトには、ひどい内容が書かれていたのかもしれない。
だが、もしそうならそのひどい内容自体が責められるべき。なのに、批判も自由だという大原則そのものに対して牙を剥く噺家。

ちなみに当ブログは、読者がどう思うかは別にして、私としては批判する相手に最大限の配慮はしている。
表現の自由は認識しているが、自由をムダ遣いすることは戒めている。
大したことがなければ、まずはスルーしている。
そして怒りが湧いた場合にする批判も、だいたいは名前を隠して行っている。まあ、詳しい人ならわかってしまう点に問題はあるが、でも数か月経ったらたぶん誰のことかまるでわからないと思う。
私は別に、当ブログにより落語界をどうこうしようなんて壮大な思いはない。
気に入らない噺家を追放し、落語のアベレージを上げようなんてこともまったく考えてはいない。
ただ、書きたいから書いているだけだ。
書いたものが別の人権に抵触しない限りは、余計なことは言われたくはない。

作成者: でっち定吉

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