池袋演芸場17 その2(柳亭こみち「鮫講釈」)

いつも寄席のマナーについて厳しめに書いている私、丁稚定吉であるが、今日はなんと他の客から睨まれた。
ちょっと音を出すたび、前の兄ちゃんがいちいち後ろを振り返る。
昼の部で、立っていて喉が渇き、ペットボトルを袋から出すときの、ごくわずかなビニールの音にまで後ろを振り返る兄ちゃん。
その後夜の部で、この兄ちゃんの真後ろに座っていたときもたびたびこっちを見てくる。
私は別に、他の客を気にせず我が物顔で振舞っているわけではない。ビニールを平気でガサゴソしたりしないし、携帯の電源もちゃんと切っている。
睨み過ぎ、神経過敏な兄ちゃんをどうこう言いたいというより、マナーについて日頃いろいろ書いている奴も睨まれることがあるという状況が、ハタから見たときちょっと面白くもあるかなと思った。

柳亭こみち「鮫講釈」

クイツキ、女流の柳亭こみち師は久々だ。声が素敵で、かなり好きな人だけど。
女性だって、年輪を重ねるごとに味が出てくる人がいてもよかろう。色物さんでなく、噺家で。
登場して、「柳亭こみち、25歳です」と言って拍手をもらう。
かなり珍しい噺に。
兵庫から大坂に向けて船に乗る、兵庫船である。上方落語ではおなじみだが、東京で聴いたのは初めてだし、あるとも知らなかった。
舞台は上方のまま、登場人物を江戸っ子にする「愛宕山」「茶金」方式の噺。
「兵庫船」というより、なんとなくだが 東京では 「鮫講釈」という別題のほうがふさわしい気がする。後で調べたら、実際ネタ帳には「鮫講釈」と書かれるようである。
こみち師の師匠、燕路師がやるらしい。
客席入口付近で、高座の際中なのに席に割り込んできた客がいる。客の目線がみなそちらに向かってしまったのをすかさず登場人物のセリフで「ちゃんとあたしのほうを向いてくださいな」と引き戻す。
もちろん、「(池袋の)構造上こうなってしまうので」とフォローも忘れない。
鮫に魅入られる講釈師になって、五目講釈を楽しく語るこみち師であった。

入船亭扇遊「狸賽」

ヒザ前は入船亭扇遊師。
こんなに入っていると私はおかしなことを口走りそうですだって。
おかしなことに含まれるのかどうか知らないが、以前落語研究会で、「私は山尾志桜里という人は、好きです。それ以外はどうでもいい」と語っていたのはやたら面白かった。

この日の夜、日テレで放映される「平成狸合戦ぽんぽこ」について少々。先代小さんや上方四天王たちが声優で出ているすごいキャスト。
「御殿対宮殿」など、狐・狸の小噺。
さらに様々な狐がいると。白い白狐、金色の金狐、風を呼ぶ狐が風狐。雲を呼ぶ狐が、・・・。これは初めて聴いた。
狸といえばやはり先代小さんだと振って、「たぬき」に。扇遊師は、大師匠小さん宅で修業をした人である。
前座はよく「狸札」をやるが、扇遊師は「狸賽」。狸賽だと、看板のピンと同様、真打の噺になる。
「ピン」「グ」の説明が丁寧だ。説明っぽくはなくて、しっかり噺を楽しむ前振りになっている。
ただ、後で気づいたけど、サイコロに化けるたぬきのほうも、入念な「天神様」の説明を聴いてるのだから、普通にサゲるとちょっと変だな。後で気づく程度のものはアラでもないが。

続きます。

作成者: でっち定吉

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