小菊姉さんと順序入れ替えで今日は夫婦楽団ジキジキ。押しているので手短に、頭ピアニカで沸かせる。
早くも昼トリ、菊之丞師。黒門亭に続き、同じ週に菊之丞師のトリが2回も聴けるとは幸せなことである。
古今亭菊之丞「三味線栗毛」
視聴率の取れない大河ドラマの監修をしている菊之丞師。
菊之丞師がテレビに出演すると、ピエール瀧、新井浩文、TOKIO山口と、なぜか共演者が次々やらかす。
先日、一之輔の番組(落語ディーパー)に出してもらったので、次はあいつだと思う。
やたら稼いでいる一之輔だが、クスリはやってないはず。だが、神田松之丞はやってると思う。楽屋では物静かなのに、高座に出るとハイテンション、あれはクスリの効果です。
客も大爆笑。
菊之丞師のマクラは、いつも本当に面白い。面白いマクラ振らなくても十分成り立つ芸に、とても嬉しいボーナスが付いている。
こういうマクラが許されるのに、どうして昔、昇太師が「談志師匠はクスリやってますからね」とマクラで語って家元に激怒されたんだろ?
大名、酒井雅楽頭(さかいうたのかみ)に疎まれる次男坊角三郎。
あ、三味線栗毛。錦木検校っていうんだっけ?
うろ覚えだったが、どちらでも正解。菊之丞師の三味線栗毛はCDで聴いた。
ひょんなことから大名になる角三郎と、彼との約束によって盲人の最高位、検校になる錦木。
按摩の錦木は、盲人だが寄席に通うのが趣味。だから、落とし噺を多数覚えていて、いつも角三郎にこれを語る。
だから落語はいいんですよと地に返る菊之丞師。
心眼、景清などと同じく盲人の噺。菊之丞師はこれら全てをやる。
あとは「言訳座頭」とか「麻のれん」なんてあるが。
抑制がとても利いていて、いい味。
三味線栗毛、いい噺なのだが、じっくり語りこむ人情があるわけでない。構造としてはただのシンデレラストーリー。
どこかを強調しようとして客を泣かせようとしても、得られるものはさしてないということなのだろう。
でも逆に、こういう噺だとして、どこも押さずストーリーと人物の心情をしっかり語りこむことで、たまらない気持ちのよさが湧いてくる。落語には、「小間物屋政談」とか、こういうタイプの噺があるね。
門番に押しとどめられ、くやしさのあまり歯噛みの錦木だが、そんなに悲劇は長く続かない。すぐに爺と遭遇し、ちゃんと大名になった角三郎に逢うことができる。
実のところ、物語としては平板なのだ。
石井徹也氏の、この噺についての演出論評がWebに出ていて参考になる。菊之丞師について語っているわけではないのだけど、これを読んで菊之丞師の演出のすばらしさを認識しなおした。
誰もがいいなと感じる人情については、その正体を解説しなくても、みな理解している。だから膨らまさないほうがいいこともあるのだろう。