2番手の桂竹紋さんに戻りまして。マクラ全部思い出したわけではない。
芸協の若手で一度も聴いたことのない人はごく少ないが、その一人。
こちらは南楽さんとまるで違うタイプ。押しが強い。
今一番押しの強い兄弟子、竹千代さんよりさらに押しが強い。
とはいえ乱暴ではなく、ちゃんと客との関係性を大事にしている。
直接客にグイグイ迫るのではなく、どこかに向かってグイグイ迫っていくようすを客に見せる。これなら拒否反応はないし、勢いだけ高座に漂う。
出囃子は「あんたがたどこさ」。
名前からもわかるが熊本の出である。竹紋の紋はくまモンのモン。
今日は満員ですけど、先日、芸協のホームグラウンド上野広小路亭で、お客さん一人だったんです。東京マラソンで。
故郷の老人ホームで落語をし、冗談を喋ったら、なんでウソを話すんだと怒られた。
それから秋田のクマ出没、佐竹知事の炎上の話。
ネタの中身はさして覚えてない。クマ出没の最後にくまモン登場。
あと、女性の武道の達人が出ていたように思うが。
本編は時うどん型時そば、だと思ったら時うどんそのものだった。
東京では極めて珍しい。浅草お茶の間寄席で林家ひろ木師が、やってるのは聴いた。
竹紋さん、うどんのほうが好きなのかしら。
言葉は東京だが、ほぼ上方落語の演出。あちらで教わったのでは。
そこにオリジナルギャグを密やかに入れていく。
アニイはうどん3本しか残してくれない。
二軒目のうどんはまずくない。
節を回しながら作ってくれと頼まれるが断る。音痴だから。なおも強要し、無理やり歌わせるがやっぱり音痴。
足りない男が、前日のマネをするオウム返しの噺。
といっても前日はアニイと二人だったのに、二人連れの客をひとりでやろうとする。
このおかしな状況を、徹底したオーバーアクションを用い、実に自然に描いていて驚いた。
本来、自然なはずないじゃないか、アホだもん。
だが「とにかく完遂する」強い意志だけは濃厚に伝わってきた。
アホ男が一切日和らないこと、そしてうどん屋が目の前のシュールな状況に心底怯えているのが秘訣みたい。
うどん屋が、一度は代金要らないと。
アホが払わせろと言うと「15文で結構です」。すでに1文少ないというのは斬新。
ひとつだけ引っかかった。演出にではない。
本家上方と違い、時そば風に「四つ」で落としている。
サゲで「3文多く払いました」というのだが、4文じゃないの?
勘定の仕方は基本ひいふうみいだが、「四つ」のあとは上方ふうに「いつつむっつななつ」だった。
東京より地元の仕事の方が多いのかもしれないが、またどこかで聴ければと思う人でした。
変な構成だが、ここから昨日の続き。
マクラの最後に鯉白さん、故郷のひなびた三朝温泉の話。
ここにある芝居小屋で落語をやらせてもらっている。元ストリップ劇場。
昔を知る人によると、呼び込みのおばさんがいい子いるわよと言うので入ってみると、そのおばさんがステージに上がる。
私は宮脇俊三のエッセイを思い出した。三朝温泉かは忘れたがその付近で同じ状況になり、「彼女の古びた山陰本線」を見せつけられる羽目になるという。
鯉白さんはなんだったかオチをつけ、その頃からやってる前座噺をと新聞記事に入る。
古典落語は初めて聴くが、新作と似ていて、舞台設定が非常に緩い。
古典落語の住人たちから骨を抜くと鯉白古典になる。
そんな世界では「お前さんクレージーだよ」「そんなアンニュイなこと言って」「なんだその逆ベンジャミンバトンみたいな設定は」「BLかい?」などのセリフは平常運転。
現代用語をぶっ込んでそこだけウケを狙おうなんてのではない。
若手の間である種スタンダードになっているとおぼしき一之輔師の新聞記事にも空気が似ている気がするが、ただ一之輔師は新聞記事の不自然さを一掃しようと試みていた。
鯉白さんのは、隠居が「天ぷら屋の竹さん」が殺されたと聞いているのに慌てない。親友が死んだんだから慌てろ!と思わないでもないが、そういう緩い世界なのだ。
隠居が止めるのにやりにいって、最初に遭遇するのが当の竹さんなのが昔ふう。
竹さん、八っつぁんから話聞いて「その竹です」。こちらもさほど動じない。
ちなみに竹さん、柔術でなく剣術使い。
アニイに話を聞いてもらう。手が離せないから帰ってくれというやりとりは陳腐に思うのか、ない。
泥棒マクラを交わす、とか、話しているうちにBLになりかける。
心臓のゾウが思い出せない。
アニイ動物園行ったことある? あの大きくて薄汚いのなんだっけ?
お前のおっかさんか?
今の時代そういうのやめようよ。
タイを思い出す際は、アニイに上田正樹の悲しい色やねを歌わせる。
恥ずかしそうに歌うアニイ。
タイはやっとサビに出てくる(よかったら歌ってみてください)。
楽しい3席でした。
新作まつり、王楽襲名、真打披露など色々やってる中で、二ツ目の1時間半の会。
でも実に楽しい。