鈴本演芸場、夜席休止と月曜定休へ(影響を想像する)

スポーツ報知のスクープ記事です。

鈴本演芸場、寄席初の“定休日”導入 4月から月曜定休&夜の部休止 コロナ禍で

三遊亭円楽師の芸協入りを4年前にスッパ抜いたのも、そういえば報知だった。
鈴本演芸場は、3月20日まで休業中。3月下席(21日から)の真打昇進披露で再開するが、夜は休席。ここまではすでに発表済み。
今回の報道によると4月以降も夜席休止が続くということだ。しかも、毎週月曜日が休み。

この改革の影響を、さまざまな点から推測してみることにする。

鈴本は東京の寄席の最高峰。最も格が高い。
昔、芸協が喧嘩して出ていってしまい、最高峰なのに落語協会だけが使うという、不思議な立ち位置の寄席である。
私の予想だが、コロナが落ち着いたとしても、夜席は二度と帰ってこないと思う。
現在は、どこの寄席も昼席のほうが混んでいて、夜席は閑散としている。夏でもそうだ。
特に鈴本は入替制なので、昼から居続けるファンがそもそもいない。
記事中にもあるとおり、働き方改革もある。夜を休むのは理にかなってもいる。
国立演芸場のような、定席と落語会を組み合わせた寄席形態になるのではないか。国立は、定席の下席がないけれど。

月曜が祝日に重なったらどうするのかなど、不明な点は多い。月曜は祝日である場合が多いのだが、その場合火曜休みにスライドするのかな。
ならば、公共施設によくあるパターン。

落語協会の噺家さんも大変だ。鈴本の出番が半分になるのだから。
トリを取れる人も半分になる。
もっとも、寄席の出番が減っても収入はさして減らない。空いた夜席に拘束されなくなるのは、ある意味チャンスでもある。
初席だけは特別に、夜も開けそうな気がするが。
5月上席は、正月以外の書き入れ時。例年、昼は正蔵師、夜は権太楼師であった。
今年は、権太楼師の芝居は確実になさそうだ。

お盆を挟む8月中席は、昼が圓歌師で、夜が「さん喬・権太楼」。
圓歌師も重要だが、積み重ねと、5月とのバランス的にさん権のほうが残りそうな気がする。

鈴本は、単一の協会だけが出るためだろう、結構トリで冒険をしている。若手を抜擢するのだ。
だが、単純に芝居が半分になると、若手の主任が消滅しそうな気がする。集客を考えれば、そうせざるを得ない。
たぶん国立と同じく、夜は芸人に貸してくれると思う。ただしスタッフは自分で用意しなきゃいけないのでは。
出番が減る以上、特に若手は空いたその席で、自分の会を開かないといけない。
いや、若手に限らないか。ベテランの師匠だって、確実に出番は減る。

夜が貸席になるのが前提だが、その場合、31日の余一会は減ると思う。
落語会がいつもあるなら、31日の特別感などなくなる。
31日は下席を延長するか、あるいは単純に休館してしまうのでは。鈴本の場合、もともと余一会が埋まらないときは休んでしまうことが多かった。
ちなみに、今年の5月は31日が月曜日で、休みは確実。その次は2022年10月31日が月曜日。

今年の3月31日については、もう決まっているので余一会は実施。柳家さん喬一門会で、夜もある。

他の寄席には、この運営法は広がらないだろうか?
他は入替なしだし、芸協の芝居もあるので、たぶん広がらないと思う。
池袋の下席は入替ありだが、夜はもともと落語会。

夜が貸席になるのなら、私の勝手な希望。
芸協をはじめ、落語協会以外の噺家にも開放して欲しい。
それから講談界にも。そもそも落語協会所属の講談師が極端に少ないので、東京の寄席で最も講談を聴く機会が少ないのが鈴本ということになる。
もしそうなるなら、夜席実質廃止だとしても、悪いことばかりではない。

これを機会にいろいろ考えようではありませんか。
夜に落語会をするにしても、人件費抑制のためテケツは使わないとか。
チケット事前発券のみにするとか、いくらでも方法はある。今でも初席などは、全席指定でやれているのだし。
キャッシュレスにも対応してください。
QRコード決済で発券しておいて、購入履歴だけ確認するとかすれば、簡単だ。
いっそ、指定席を確保した人はどんどん入れちゃったっていい。席を移らないように義務付けていれば、キセルで入場する客を見抜くのは簡単だと思うのだ。

私はキャッシュレスライターで、私生活においてもすべてをキャッシュレスにしているのだが、落語に行くときだけ現金を下ろしているのである。
これがいつも、嫌で嫌で。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。