池袋演芸場17 その7(林家彦いち「熱血!怪談部」)

林家彦いち「熱血!怪談部」

ヒザ前は白鳥師と交互出演の林家彦いち師。
体育会系の人に、駅のホームで「林家さん」と呼ばれるマクラ。
知っているマクラも、立派なドキュメンタリー落語の一部。完成度が高く実に楽しい。
それから、イケメン噺家についてインタビューを受けたという話。これは初めて聴いた。
今日はイケメン、出てません。この先も出ません。先に上がった人(左龍)を見ればわかるでしょう、男梅みたいな顔してだって。
「熱血!怪談部」はさらにパワーアップしていた。これからの季節、寄席で重宝される噺だ。
もちろん、何度聴いても楽しい。もともと達者な彦いち師だが、現在落語のステージを急速に上り詰めているようだ。
熱血教師の流石(ながれいし)先生、幽霊に向かって「なんだそんなガリガリの、柳家わさびみたいな体して」。
トリの師匠に備えるヒザ前で、こんなにウケていいのかしら。
昨年、白鳥師のヒザでも平気でウケていた。

ちなみに先代正蔵一門に連なる噺家の、ヒザ前の務め方を比較すると面白い。

  • ヒザ前らしい、主任を立てる仕事をする人・・・正雀・一朝・文蔵・百栄
  • ヒザ前でも平気でウケさせる人・・・圓太郎・彦いち

どんな哲学なのかしら。

林家二楽

林家二楽師匠は、鋏試しでいつもの「セロテープで貼れば」「アナザーサイドB面」を語り、ウケない客を見て、「楽屋で、今日のお客さんはマニアではなく、普通に笑ってくれる人たちだと聴いてきたのですが、違ったようです」。楽屋を向いて「違うじゃないか」。池袋用の話に変える。
太神楽の際のタイミングいい拍手を見れば、マニア度は決して低くないと思うのだけど。また、深い出番になるにつれ、マニア度が高くなっていったということもあるだろう。
紙切りはどこで聴いてもだいたい話す内容は一緒だが、池袋だけはしばしばそれが許されないのである。

「大化の改新」という変わったお題で、中大兄皇子と「イルカ」を対決させる二楽師。海のイルカだ。
時間が押しているので注文はもう一枚だけ。「令和」というお題に応じて菅官房長官を切るが、これはよく見えなかった。

二枚目の注文を切りながら二楽師、最前列に座っている坊っちゃんをターゲットにする。
「どうしてあのガリガリに痩せたおじさん、さっきから体を揺らしてるんだろう」と思うかもしれませんが、坊っちゃん以外はみんな知ってるんですだって。
ただし理由は、ちゃんとした大人に訊いてください。あいつはアル中だなんて適当なことをいう人もいますから。
アル中は正楽です。
マニア度高めの客、爆笑。
二楽師、下がりながら楽屋に向かい「今日のお客さんマニアばっかりじゃねえか、嘘つき」。
高座返しを務める息子の、客を見る目を叱っていたのかな?

続きます。

作成者: でっち定吉

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