池袋演芸場17 その6(柳亭左龍「鈴ヶ森」)

柳家花緑「天狗裁き」

柳家花緑師は、一生に占める睡眠の割合、夢の割合を軽く説明して、天狗裁き。
かなりユニークな、マンガチックな一席。入れごとも多い。
なんで夢の話をそんなに聴きたいのか、そもそも意味不明な前提の噺であるが、理由付けを多少する。
兄弟分の隣人は、八っつぁんが不慮の事故に遭ったとき、かわら版の取材で故人を語ることがあるかもしれない。その際、どんな夢を見たか話せないとみっともないので、ほんのダイジェストでいいから教えてくれというのだ。
大家のほうは、老い先短いので、八っつぁんの夢を楽しみにするのだそうだ。

普通はユニークな演出をしようとすると、だいたいお奉行を攻める。奉行など、ハタで見ているほど面白い仕事ではないのだと。
だが花緑師、逆にこの奉行(大岡越前だった)はさほど攻めないのが面白い。天狗も同様。
なるほど、お奉行や天狗は、夢の話を聴きたがる時点ですでに面白いということなんだろう。

柳亭左龍「鈴ヶ森」

仲入り後のクイツキは、喬之助師と交互出演の柳亭左龍師。
一時期、どの主任のときも寄席に出まくっていたのでよくお見かけしたのだが、最近出世した分、寄席が減ってきたように思う。
まあこの先もう一段階出世すると、再度寄席が掛け持ちで増えると思うけど。

引っ越し前の当ブログ、左龍師の検索でよく起こしいただくのだが、ヒットする記事が、2年前の鈴本。なんと私もそれ以来のご無沙汰である。
主任の芝居など行きたかったのだけど。今年はもっと聴くつもりだ。
最近も、らんまんラジオ寄席で聴いた「鈴ヶ森」。鈴本の際もこれ。十八番なんだろう。
鈴本で聴いた鈴ヶ森は素晴らしかったのだが、それよりもラジオで最近聴いたこれに、衝撃を受けた。生の高座よりラジオのほうが上だったというのは、つまりこの期間に落語が大きくパワーアップしたということ。
このような経験、他には春風亭一之輔師の「初天神」ぐらいしかない。

生の高座で聴く鈴ヶ森は、ラジオよりさらに素晴らしい。
面白い顔が、新米泥棒にぴったり。そして、声がユニーク。
落語で、声を使い分けるやり方は否定されるのだが、キャラクターにあった面白い声を出すのは問題ないと思う。兄弟子の喬太郎師もやっている。
ケツに刺さったたけのこを抜く際、ラマーズ法なのがとっておきのギャグ。

人気の演目鈴ヶ森だが、左龍師のものが一番面白い。
そして面白古典としては珍しいことに、高座に一切、演者自身は顔を出してこない。冒頭のパパイヤ鈴木でおしまいなのだ。
それもまた、現代ではかえってユニークさの一因になっている。

続きます。

作成者: でっち定吉

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