浅草配信:夜席

浅草の配信、夜の部を見ていきます。トリの喬太郎師については、一昨日触れた。
今日も肝になる部分がないのですが、とりとめもなく。

柳家わさび師は、寄席でおなじみの狸札かと思いきや、狸の鯉。
配信で驚いた人、初めて聴いた人も多かっただろう。
たぬきは「札」「賽」がよく掛かり、「鯉」「釜」は珍品。だが狸の鯉、最近よく聴く気がする。
前座がやるのは、ほぼ札。
たぬきシリーズは、途中まで完全に一緒。噺の中で一晩明ける場合は、賽ではない。

鯉も楽しくて、寄席で最適なネタと思う。
最後狸の化けた鯉が、ぴょんぴょん跳ねて逃げていくシーンのナンセンスさがたまらない。
わさび師のものは、逃げ方がちょっと違っていたが。
もっと掛かって欲しいものです。
わさび師は、軽い古典落語が実にいいなと思う。
天どん×一之輔のトーク配信で、ファンからのお便りでもってヘアスタイルの心配をされていた。
個人的には、噺家さんの髪は短いほうがいい。角刈りじゃなくてもいいけどさ。
男の噺家で長くてもいいのは、フェミニンな三遊亭丈二師ぐらいと思う。
水曜のラジオビバリー昼ズ(昇太師)では、わさび師、三題噺を即席でこしらえていた。

桂三木助師にはちょっと驚いた。
早くから落語研究会に顔付けされるなど、一部に強く買われている人だが、個人的にはなんでかなと思っていた。
嫌いというほどでもない。ただ実力と無関係に、噺家のくせに偏食がひどい点だけは普通に嫌い。
私は、「二番煎じ」や「時そば」「ふぐ鍋」等の食欲増進効果を愛してやまない者だ。
落語協会の寄り合いで、たこ焼きのガワだけ食べてタコを残し、仲間の噺家が残したタコを食っていたと時蔵師のブログに匿名で書いてあった。
あとはご本人のせいでもないが、お母さん(三代目の娘であり、四代目の姉)がなんだかなと。談志を後ろ盾に使うのに、ぜん馬師とは自殺未遂までして別れている。
このお母さんのおかげで、三木助師は小さん系統の噺家さんの誰にも拾ってもらえなかったようである。稽古はつけてもらっているようだが。
だから系列と全然関係ない馬生師の元にいる。ただ、実質的には一門に所属しているとはいえず、フリーみたいな扱いみたい。

つい悪口から始めてしまったのだが、この配信で掛かった「猿後家」は実によかった。
長回しのセリフが、途切れず、急かず、スラスラ―とつながっていって高揚する。
東京では珍しい噺だが、志の輔師のオンエアを聴いたことがある。そちらから来ているのだろうか。
気のせいか、志の輔師の声そっくりのため息まで入っていた。

この配信だけで褒めているのではなく、つい最近の浅草お茶の間寄席を観たのもある。
三木助師、柳家喬太郎師の「夜の慣用句」を掛けていたのだ。
喬太郎師のユニークな新作落語、教わりたい人は多いが、誰がやってもウケるなんてものではない。ちゃんとウケる形まで作っている、白鳥師の作品とは違うのだ。
これがいいデキで、大幅に見直したところだ。でも三木助師、私の行き先にはいないんだよな。

隅田川馬石師の爆笑堀の内は、検索で私のブログが1位に掛かるのだけど、この関連の訪問もなかった。圓歌師の「やかん」へのアクセスはあったけど。
神田を出発した八っつぁん、間違って浅草ではなく両国へ行く型。
他の誰も気づかなかった独自の演出が、堀の内まで行くと、当然のように粗忽の人がお詣りに来ている点。
古典落語も、じっくり掘り下げると無数のヒントが隠されている。

新生ホンキートンクは、あの芸を無観客でやるとはすごい。くじけても不思議はないところ。

入船亭扇遊師は、めでたい席でもないのに「一目上がり」。
この楽しい噺も、導入の同じ道灌の、3分の1でいいから掛かって欲しいものだ。

ヒザ前の五街道雲助師は、「辰巳の辻占」。そういえば、私は寄席でこの師匠のヒザ前を見たことがないかも。
廓噺のマクラ「手練手管」を振るので、なにを掛けるのかと思った。
先日、弟子の馬石師が「おなじはなし寄席」で掛けていたが、寄席では掛けづらいと話していた。トリの師匠に気を遣うから。
確かに出番を選ぶ噺。
この日のトリ喬太郎師だって、「品川心中」と「居残り佐平次」を持っているのだが、新作派だからあまり気は遣わなくていいのかも。

しかし、廓噺にしてヒザ前にぴったりの噺であるな。
雲助師のものは初めて聴くように思う。馬石師は師匠から教わっているようであるが、また味は違う。
このぞろっぺえな花魁、たまりませんな。とても人の命が掛かっているとは思えぬ。

そんなわけで、鈴本に次いで、浅草の配信を楽しませていただきました。
ありがとうございます。
5月31日の余一会まで全パーな予感だが、復活したら必ず行くぞ。

ただ、頭の中が落語協会に占拠された感があるので、復活したら芸協へ行こうと思うが。

(昼席に戻る)

 

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作成者: でっち定吉

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