ざま昼席落語会(上)

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緊急事態宣言下の都内では、落語はほぼ中止。
県境を越えればやっている。多摩川またいでいいですか。
最近、神奈川づいている。中央林間、あざみ野などへ行った。
座間に安い落語会がある。当日千円の「ざま昼席落語会」。
毎月に近いペースで開かれる会で、この日は橘家圓太郎、三遊亭王楽二人会。
会の存在は以前から知っていた。何度か検討したこともあるが、いかんせん遠い。駅からもまた遠い。
最寄り駅は、小田急相武台前。そこから歩いて16分。
座間市まで来ると、視界に常に大山が入ってくる。このためなのかどうか、付近は落語会も多いし、出身の噺家もまた多い。

遠い座間だが、電車賃は工夫すると意外と安い。田園都市線で終点、中央林間まで行き、小田急で相模大野まで戻って折り返す。
貧乏人の面目躍如。
さらに地図をよく見ると、会場のハーモニーホールざまから中央林間まで徒歩59分ということなので、帰りは思い切って歩いてしまった。さすがに疲れたけど。
ここまでするなら都内の会と交通費は変わらない。
遠いのは確かだが、安い入場料と高い満足の両立する、いい会だった。
また来ようかな。次回7月10日は、むかし家今松、桂ひな太郎という、実に渋い落語協会の両師匠の顔付け。

会場は非常に立派なホール。
隣の市と張り合った箱モノ行政を令和に振り替えると、いささか気恥ずかしくなるぐらい立派。
立派な市役所の隣にあり、ホールの中も立派。
千人以上収用の大ホールに、客は百人いないくらいか。このご時世ならまあ、十分な集客と言っていいだろう。

のめる市松
強情灸圓太郎
帯久王楽
(仲入り)
孝行糖王楽
百川圓太郎

 

落語会の頻度が高い地域の客は、だいたいレベルが高い。
そして客のレベルの高さと、落語会の料金とは実は反比例するのではないだろうか。安くて来やすい会は、客のレベルを保つのに最適だ。
座間のお客さんもハイレベル。落語をよく聴いている人が多い。
最初に前座の柳亭市松さんが登場した際、誰も手を叩かない。メクリを「ざま昼席落語会」に自分自身で替えてから拍手。
まあ、これはレベルがどうというより、自然発生のローカルルール。

市松さんは、調べたら黒門亭で聴いて以来2年振りだ。
八っつぁんが隠居に知恵を借りたいとやってくる。「のめる」である。
落語協会の前座さんから聴くのは初めてかも。ホール落語だからこれを選んだのかもしれないが、寄席で出しても構わないと思うが。
型はバラエティに富んでいる。この市松さんのもののように、隠居と八っつぁんからスタートするものもある。
柳家らしく、ムダに弾まないいい形。
八っつぁんが隠居に相談する前に、すでに留に1円取られている。留が「天狗の一本下駄をやる」と八っつぁんに言い、八っつぁんが、一本下駄なんて履いても前に「のめる」からいらないと答えてしまったのだ。
こんなの初めて聴いた。昔の型にはあるのだろうか。
でも、これがあるおかげで「大根醤油樽に詰まろうかね」と、詰将棋の件が、卑怯でなくなるわけだ。
サゲもとんとーんといい感じ。

続いての出番は橘家圓太郎師。
プログラムもないので落語会の構成は知らないのだが、この時点で二席ずつやってトリが圓太郎師だということがわかる。

圓太郎師、緊急事態宣言前の新宿で聴いただけでなく、配信でも鈴本・浅草と両方出ていた。
なので最近の師のマクラは聴き尽くしただろうかと。
いや、実は聴き尽くしてもいないし、すでに聴いたネタ(八村塁のモノマネなど)も実に楽しい。

座間まで、車を自分で運転してきたそうだ。
高速を使わず246で板橋区から来たそうな。寄席が休みで収入がないのでなんて言っていたが、実はあまり変わらないのだ。

圓太郎師、髪の毛を大変短く刈り込んでいる。その話。
もう58歳になる師だが、小学4年の娘さんがいる。娘の話はマクラでも時たま出るところ。
5月2日に師は、娘とディズニーランドに行くつもりだったのだが、緊急事態宣言に。
ディズニーは千葉だから開いているが、娘が自ら行かないほうがいいだろうと大人の判断をする。なので結局その日はかっぱ寿司へ。

かわいそうな娘のために、お父さんは願いごとをひとつだけかなえてやることにした。娘に、実現可能な「やってみたいこと」5つを提出させ、くじを引いた。
その結果採用されたのが、「お父さんの頭をバリカンで刈ってみたい」だったのだと。
配信が終わってからにしてくれと言って、娘の夢は実現したそうで。

続きます。

 

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作成者: でっち定吉

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