神田連雀亭ワンコイン寄席32(上・春風亭一猿「商売根問」)

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池袋演芸場、喬太郎師の席には、なんともズシリと来たものだ。その凄みを世間に伝えたい。
なのに「心眼」記事の個別アクセスが伸びない。
直前の「その6」までずっと多かったのに、まさか主役を迎えて下がるなんて。
世間が喬太郎師に期待するのは、爆笑新作のほうなのだろうか。心眼に当たって私は本当に嬉しいのに。
そのため検索トップにはまだ立っていません。1ページ目には出ているため、今後は自力で這い上がっていくことを期待。

ともかく、そんなに寄席に行きたい気にはなっていなかったが、仕事のほうが急に切れ目に差し掛かる。
なので木曜日、ちょっと神田連雀亭ワンコイン寄席へ。

商売根問 一猿
ん廻し 楽八
マリオネット 希光

 

当初、林家扇兵衛さんが顔付けされていたのだが、朝に番組を再確認すると、三遊亭楽八さんに差し代わっている。
扇兵衛さんは、骨折入院中の、師匠の世話でもあるのでしょうか。
楽八さんね。
まあ、行ってみよう。他のメンバーは、笑福亭希光さんと、春風亭一猿さん。

春風亭一猿さんは、前座時代の2018年の暮れ、光が丘のIMA寄席で聴いて以来。
その際、二ツ目昇進が決まりましたと語っていた。
久々なのだが、なにしろ落語界随一のエリート一門に連なる人なので、ずっと気になっていた。
一朝師の9番弟子が一猿さん。
8番弟子の一花さんは、若手の登竜門であるさがみはらも獲って順風満帆。笑点特大号の女流大喜利でも大人気。
10番弟子の朝枝さんは、天才と呼び名が高い。呼び名というか、私がそう言ってるんだが。
間に挟まれた一猿さんも、いい味の人という印象。

久々に観た一猿さん、持ち味がまるで変わっている。アクションが大きく、メリハリを強調した芸だ。
前座時代は実に朴訥だったのに。
してみると、最初から前座時代は朴訥で行くぞと決めていたのだろう。私も前座を多く観察している限り、回り道に見えても、それが結果を出すのに最適の方法と信じている。
建てた方針をちゃんと守れたのなら、実に偉い人だ。
二ツ目になり、顔までなんだか変わった印象。ずいぶん垢抜けて見える。

雨がパラついてきたのでお客さん来ないんじゃないかと思ったんですが、大勢お越しでありがとうございますと挨拶。まあ、大勢といっても8人。
連雀亭のネタ帳見てたら、「雨で中止」と書かれていた日があったそうな。大雨だったのでお客さんが来なかったのだと。

前座は日給千円スタートなので、ご馳走してもらうのが楽しみ。
寄席の打ち上げで、並みいる師匠たちを差し置いて、酔っぱらったお客さんに「お前知ってる」と話しかけられたというマクラ。
いろんな仕事があります。私も入門前は旅行会社に勤めてましたと振って本編へ。
演目は3年前と同じ商売根問。鷺とりの前半で、雀とりとウグイスとり。
3年前は、ウグイスでなくカッパだったと当ブログには書いている。時間に合わせて構成を変えているのだ。
最近、久々に聴いた人の噺が、数年前最後に聴いた演目と同じだという経験を、立て続けにしている。
偶然というより、どうしても得意な噺に当たりがちなんでしょう。
もっとも一猿さんに関しては、そのときのムードとまるで異なり、同じ噺という感じはしない。

弟弟子の朝枝さんと、意外と呼吸が似ていた。全体のスタイルは違うのだが、やはり同じ一門なのだなと。
メリハリが強いのはいいのだが、隠居と男の会話、もっと軽くやって欲しいと思った部分もある。
「お前さんどこにいるんだい」「隠居の前ですよ」ぐらい軽いのが私の好み。
上方落語はおおむねこってりしているが、鷺とりのこの部分に関しては、実にあっさりしていて好き。
ただし一猿さん、噺がどんどん進んでいく中で、徐々にこってり味に意味が生じてくるのがいい。
大阪出身なので、上方落語がベースにあるのだろうか。
ウグイスとりなんて、手を松の枝に見立てる極めてアホなエピソード。ここはさすがに、あっさりやっていてはいけないもの。

ともかくも、今後が楽しみ。
様々なスタイルの演者がいる一門。一猿さんは、一之輔、一蔵といった兄弟子のように、ギャグをたくさん入れていくスタイルに変わっていく予感がする。
今日のところはギャグよりも、強いメリハリが目立つ。

続きます。

作成者: でっち定吉

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