毒舌ライターが上原浩治氏の顔面をdisった話(下)

コラム打ち切りの決定が、上原浩治の権力行使によるものだとは言わぬ。
だが、迅速な決定が行われたその背景にあるのは、力関係の見極め。忖度ともいえる。
確かにまあ、書き手のほうも、消えて別段困る人ではない。この事実も怖い。
「猫の首に鈴付けてくれたよ!」なんて思ってる関係者もいたりして。実はもっと早くから切りたかったのかもよ。
そんな難しい話じゃなくて、正義が通っただけだろう、そう思う人も多いだろう。でも決して単純じゃない気がする。
現に他人を怒らせたら、その怒りが激しすぎたとしても正義が一応あれば、怒らせた側はもうどうしようもない。これが現代社会。
あれ、その怒りちょっとおかしいんじゃないのとなって初めて、炎上事件となる。蒙古タンメン中本騒動とか、中尾ミエや神野美伽。

世間は麻生千晶を袋叩き。
触れる必要のない人の容姿をことさらに持ち出すなんて、非常識だと非難の嵐。
仮に、女の容姿を話題にしたらどれだけ問題になると思ってるのだ!と。いやいや、まったくその通りだし、それこそ私自身が用いがちなレトリックでもあるけども。
でも正論を背景にした世間の非難の中には、「汚いババアが人の顔のことを話題にするな!」という内容も入っている。
乗っかってくる人の中に、どさくさに紛れて人権侵害丸出しの輩もいるから気を付けないと。

今回の事件、筆の矛先が怒ったので大問題になった。
だが、この程度で毎回騒ぎになっていると、世から毒舌は消滅する。
消滅してもいいって? うーん、そう言われてしまうと、もうなにも言えません。
私の嫌いな立川志らくも一緒に消滅してくれるなら、多少はメリットかもしれない。あの男は、へっぽこ毒舌を理由に嫌いなわけじゃないけど。

私も当ブログにおいて、たまに顔の造作のことを話題にしていた。
女流落語家については、「美人」とは書くが、悪いほうは書いたことはない。これは当然。
しかし書いていないということは、残酷な評価になってしまうかもしれない。そう考えると美人云々もよくないかも。
でも、現に林家つる子さんとか、それで名を売っている人がいるのも事実であり、それに触れないのも変。
もちろん、美人もそうでない人も、最終的には落語の実力で評価されて欲しい。それも間違いないのだが。

男の噺家についても、「いい男」と書くことは多い。そうでない噺家について、さすがに「ブサイク」とは書かない。
だがある二ツ目さんについては、何度か「面白い顔」だと書いている。
これも叱られるかなあ。ご本人よりも世間にだ。
この二ツ目さんには非常に好意を持っており、将来に大きな期待もしている。だが、今回見えてきた世間の怒り基準によるなら、「ユニークなフェイス」と書くのも絶対NGということになる。
ご本人が許してくれたとして、免罪符になるとは限らない。
書かないのが賢いとなる。

だけど噺家にとって、面白い顔は飛び道具のひとつだからな。柳亭左龍師なども武器としてフル活用している。
マクラでもよく言うでしょ? 生まれたばかりの子について「いい男になるね、役者にしよう」「面白い顔だね。噺家にしよう」。
元野球選手はダメで、噺家さんならいいことにする? そんなルール、勝手に作っていいはずはなく。
ただユニークな顔の二ツ目さん、面白落語でなく本格派なんだこれが。顔のことを言うと、本格芸への営業妨害になりかねない懸念も確かにある。

正解は多分ない。だが、どう乗り切っていくかという方策はわかってきた。

  1. 無自覚に書いちゃダメ
  2. 上から書いちゃダメ
  3. 筆致の隅々に、配慮と敬意が溢れているのは大前提
  4. 世間の動向には敏感であれ

今回の麻生千晶のコラムは、振り返れば、すべてに抵触しているわけだ。
毒舌をウリにするなら、上記1~4をすべて満たして、なおかつ対象者や読み手の共感を得ないとならない。大変だ。

You Tubeを何の気になしに視たら、女流落語家ふたりが、「落語協会男前ランキング」という、どうでもいい内容の企画をしていた。
この女流のひとりが、面白い顔の噺家さんの夫人。
こういうどうでもいいものも、消えるべき?
まあ、いいっちゃいいんだけどな・・・

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作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 容姿をいじるのがNGだとして体形もダメなんでしょうかね?
    「デブにデブって言って何がわり~んだデーブ!」はもちろんNG。
    この場合は恰幅の良い方と言うんですね。
    「ハゲ」は?
    寄席で落語聴いてたらNGワード出まくりですよね。
    嫌な時代というのは年寄りの戯言でしょうか。
    「年寄りの戯言」もNGかな?
    「高齢者の不用意な発言」でいいのかな?

    1. まるかんさん、コメントありがとうございます。
      難しい時代ですね。
      小ゑん師匠の「吉田課長」がツラくて聴けない、ボールドヘッドの人もいるかもしれませんし。
      とはいえ先代文楽の「心眼」において「人無化十」で笑う客に、現代を生きる私が引くのもまた確かです。
      私は今回発見した基準を大事にして、今後もいろいろ書いていこうと思います。

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