神田連雀亭ワンコイン寄席19(上・柳家緑助「元犬」)

仕事の合間に、金曜日の昼前から神田連雀亭へ。
まっすぐ行ってまっすぐ帰ります。
つ離れしていなかったが、途中で入ってきた人もいてようやく10人。

緑助  / 元犬
扇兵衛 / 長短
希光  / 狸の化寺

なかなかいい顔付け。
といいつつ、柳家緑助さんは初めてだ。
初めてだが、いまや落語界のスーパーエリート集団、花緑一門である。上手いに違いない。
スーパーエリート集団って私だけが言ってるのかもしれないが、この見立てには自信を持ってます。
緑助さんを聴くと、花緑師の前座以外の10人の弟子、私はコンプリート。

巨体の林家扇兵衛さんが前説。
初めての客はいないと確認した上で、連雀亭ルールをごく簡単に説明。
「飲食はいいですがお持ち帰りください」って言ってた。おいおい。
食べるほうはダメだよ。
ちなみに、喫煙は外のちょっと遠い喫煙室まで行ってくださいと。守らない客は、扇兵衛さんが簀巻きにして神田川に放り込むんだそうだ。

柳家緑助「元犬」

さて楽しみな緑助(ろくすけ)さん。昨年11月に二ツ目になったばかり。
ドラマの昭和元禄落語心中で、初代助六役として、モノクロ回想シーンにちょっと出演していた。
意志の強そうな目と上を向いた鼻。
あ、喋り出すと、立川志らく師によく似てる。
もっとも、似てるのは顔だけね。客への立ち向かい方は180度逆で、極めてソフト。
客の下手からやんわりと入り、たちまちにして高座と寄席の空気を支配してしまった。見事。

噺を覚えるのは大変。緑助さんは、先代小さんのように、「朝教わった噺を夜席で掛けた」なんて天才ではないのだと。
面倒でも、台本に起こして覚える。
ちなみに、この小さんのエピソードは初めて聴いた。さすが花緑門下。

喫茶店で台本に書き起こすが、熟年カップルの面白い会話が耳に入り、手に着かない。
実在のカップルの会話に客を引き込む見事なマクラ。
そんなにすごく面白いことを言っているわけではないのだが、演者が楽しそうなので聴いていてとても楽しい。マクラの見本だと思う。

それから、実家で飼っていた狆のエピソード。とにかくビビりだったので、雷が鳴ると人の布団に潜り込んできたりして、とても可愛かったのだと。
実家のマンション点検で、ベランダの上の階の避難ハシゴが開いていたのを見て、小便を漏らしていたとか。
本物の犬から学んだ要素が、元犬に相当織り込まれている。

ひとつだけ注文。
緑助さん、マクラで使っている日常用語に「やっぱ」がやたらと多い。「やっぱり」だったら別に気にならないんですけどね。
これが漫才師だったら、相方との会話に「やっぱ」を多用しても全然気にしないけどさ。

本編に続きます。

 

作成者: でっち定吉

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