落語界の老害・柳家小三治

本格的老害ブーム到来である。
老害という言葉は昔からあったが、糾弾される側はどこ吹く風であった。
かつての老害には、就職氷河期以来の、社会の末端で苦しむ若者から見たときの、勝ち逃げ世代を非難するニュアンスがあったと思う。個人の性向ではなく、傾向に過ぎなかったのだ。
だが最近では、古い価値観を引きずって世間を不快にさせる、特殊な人材の塊を指すように変わってきたようだ。年寄りから見てもひどい言動の連中であり、安心して叩いていいのである。
むしろ、権力を手放してもらわないと、ハラスメントが固定化されてしまう。
叩かれるほうは、これまでの成功が頭にあっての言動を繰り返すわけだが、なに、クソの役にも立たぬ。
落合、イチロー、松井、大谷翔平と出てきたあとでは、かつての打撃の職人は度を超えて威張りすぎ。レフトのポジションはまともに守れなかったわけだし。
まあ、ダルビッシュなどイキのいいのが抗うことで、現役からの尊敬もとうに消えていたのだけど。

この張本勲など、やらかした連中のほうは、反省することはない。する能力も持ち合わせていないし、そんなことを誰も期待していない。
ただ影響力の落ちた晩年を、さみしく過ごし死んでいくだけ。自業自得。
さて落語界にだって、価値観の転換を理解できない老害がいるわけである。
ひとつ老害の代表を糾弾してみよう。

落語協会元会長・柳家小三治は最近の老害ブームの主役たちと、実によく似ている。
未来を担う若者たちを次々粛清していったダメ師匠。反省しない点も同様。
現役だという点は他の老害と大きく異なるものの、実際は引退同然なので同じだと思う。
たまに高座に上がるのを、ファンが幻影でもって眺めているだけだろう。いや、幻影が聴き手に面白い以上、その感想をどうこう言う気はないことは断っておく。

だが、落語界の若手たちが、小三治を今もって尊敬しているとはまったく思わない。馬風師を尊敬していたとしても。
もともとうるさがた(「鼻濁音を守れ」「噺で笑わせるな」等)としては、噺家である以上、一目置いていただろう。だが今になって、小三治が落語史に残る偉人かどうか、疑問に思う人も多いのでは。
歴史に残るには、人格高潔、もしくは後輩から強く愛されることが望ましいが、どちらの資質もまるでない。
どちらもない以上、その芸にだって、時代を経れば焦点は当てづらいのである。そしてストレートに楽しいというより、聴き手に強い錯覚を求める、とてもあざとい芸である。
あざと芸なのに、超本格派であってひとつの完成形(さらに先がある)という主張をし、これが落語だとファンをだまくらかしている。
師匠である先代小さんのように、没後いつまでも懐かしがられる人なのかどうか。
談志と比べても、その影響力がみるみる消えていくから、まあ、見ているといい。
一門もやがて消えますけどね。

小三治という人の性格を見ていて、常に気になる点がある。
父親は、東大以外大学ではないと常に言う人だったという。いや、そんな人も世にはいる。
問題は、80を超えた小三治本人が、ずっとこんなことを言い続けていることである。これがわからない。
学歴で人を判断する家庭に生まれて不幸だったが、そのハンデに負けず異なる道で成功したと言いたいのだろう。
でも、東大よりも落語の名人のほうが一般的には尊敬されるもんだが。
それはいいとしてこの人、師匠である小さんの温かみはまったく引き継がず、もっぱら父への反発だけで生きてきたらしい。
師匠との師弟関係でなく、父との実親子関係を、自分の弟子に対して持ち込んでしまう人。
次々と師弟関係が破綻するのは、ここに原因があると思う。最終的に半分クビ。
孫弟子までクビ。人の人生について思い悩まない、共感性の欠如した暴君。
まあ、滅びたほうがいい一門なのであろう。

春風亭一之輔師は賢い。
事実としては、偏見丸出しの小三治抜擢で世に出たわけである。
この色眼鏡で見続けられると損である。だから小三治への感謝など現わさない。
といって無視すると天狗と見られてこれもまずいので、当たらず触らずといった程度にいじる。
でも、小三治のほうは「俺が世に出してやった」とずっと思ってそうだ。「俺が目を掛けなくても、必ず世に出ただろう」という発想のほうが普通だと思うけど。
昇太師が、宮治師を世に出してやったというマウントをずっと続けていたら変だろう。

もうひとり老害を糾弾しようと思っていたのだけど、人間国宝だけで今日の記事が埋まってしまいました。
国宝のファンの方もいるでしょうが、立川流批判と同じく、面と向かって反駁しづらいところがでっち定吉の真骨頂です。
テメエで言うな。

作成者: でっち定吉

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