寄席の色物はどこの一門所属なのか

ABCラジオの「なみはや亭」を聴いていた。今週はライブラリからの音源で、先代桂文枝の「宿屋仇」。いはちー!
その高座が終わったあと、東京かわら版の「東西寄席演芸家名鑑2」の」紹介があった。かわら版の編集者と電話をつないで、本の紹介。
西のラジオで東京かわら版が取り上げられるなど非常に珍しい。
とはいえ、東西寄席演芸家名鑑は全国の芸人が掲載されているので、西の落語ファン・演芸ファンにも役立つはずだ。
2015年に東西寄席演芸家名鑑が出て、今回が6年振りの改訂版。

さてこの名鑑、芸人のプロフィールが全部出ているわけだ。
だが、落語協会および芸術協会に所属する色物さんや講談師が、どの噺家の一門に所属しているかまで書いてある? そこまでは載っていなかったと思う。
東京の寄席に出るためには、色物さんは噺家の一門に所属していなければならない。
別に落語の師匠について修業をする必要はなくて、ごく形式的なもの。悪い言葉で言えばケツモチ。
面倒見のいい鈴々舎馬風一門など、多くの色物さんが所属していることで有名。
すず風にゃん子・金魚先生の亭号、「すず風」は鈴々舎から来ている。ちなみに先日間違えて「鈴風」と書いてしまった。
寄席に出るために一門に所属したのに、寄席からは大してお声が掛からず、結局一門を離脱して落語界から去る漫才コンビもいるようである。
色物の競争は結構熾烈。
寄席好きは、いつもおんなじ色物だなと思ったりしているのだが、実は勝ち抜いてきた人たちばかりなわけで。

寄席によく出ている色物さん、どの一門に所属しているのか私もまた、知らないことが多い。
鯉昇師の会でお目にかかったばかりの「のだゆき」さんも、知らないや。
わかる人も多少いる。林家ペー先生が正蔵一門なんだろうということは、聞いてなくても想像がつく。
以前はこん平一門だったであろうことも。

色物さんの所属一門、知らなきゃいけないか。全然、必要なんてない。
知ったところで、そうですかってなものだ。どうってことはない。
ナイツが小遊三一門というのは、本人たちがネタにしているから有名だが、落語の師匠との関係など、語らない芸人の方がずっと多い。
小遊三師をネタにするナイツのほうが少々変わっている。宮田陽・昇もロケット団もホンキートンクもそんな関係性は語らない。
ナイツの兄弟子である笑組は、珍しくネタとして語っていた。
もともと古今亭志ん朝門下。師匠が亡くなったので先代古今亭志ん五門下に移り、そしてまた師匠が亡くなる。
現在は志ん輔師のところ。今度は・・・というネタ。
破門大好き志ん輔師も、さすがに一門の漫才師は破門できまい。
ところで、兄弟弟子でも芸協と落語協会と、所属が違う。所属が違えば当然門下も違う。

たまに、落語の師匠との師弟関係が、Wikipediaに書いてある芸人もいる。
たとえば。

  • ロケット団・・・鈴々舎馬風
  • マグナム小林・・・三遊亭遊三
  • ナオユキ・・・笑福亭鶴光
  • 玉川太福・・・春風亭昇太
  • 青空一風・千風・・・林家正蔵
  • 神田茜・・・春風亭小朝

もっとも、最後の神田茜先生は、すでに2020年に林家たい平門下に移っている(ご本人のブログより)ので、間違いということになる。
落語協会だから落語の一門に入るのだろうけど、芸協にはこういうのはたぶんないはず。講談師は芸協に、普通に所属しているから。

ホンキートンクも、Wikiでは鈴々舎馬風一門となっている。ただ新しいボケの遊次さんは三遊亭金翁師の孫。
そちらに移籍しているほうがむしろ自然だと思うのだが、どうなんでしょう。
それとも、形式上の所属だから替わる必要もない?

ナオユキは、関西芸人つながりのようだ。

浪曲の玉川太福先生は、昇太門下。
春風亭昇々師たちと新作ユニット「ソーゾーシー」をやっているように、関係性が強いようだ。ソーゾーシーと一門加入と、どっちが先かはよくわからないけど。

柳貴家雪之介という太神楽の人が、柳家花緑門下にいる。
師匠は、コロナで生活苦の弟子に給付金を手渡したそうだ。ちなみに、芸人にはのたれ死ぬ覚悟が必要と吠える志らくはこんなことはしない。
それはさておき、色物の雪之介先生も給付金をもらったそうだ。弟子の花いちさんから高座で聴いた。
ところでこの雪之介という先生、落語協会に所属していない。なんで花緑門下なんだろう?
地方の落語会でヒザを務めるのでしょうか?

作成者: でっち定吉

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