スタジオフォー四の日寄席4 その1(古今亭駒治「ママテツ」前半)

先月末、神田連雀亭ワンコインの後予定していた、池袋へのハシゴをやめた。
この分1回、どこへ行ってもいい、そんな気分。
ちょうど1年振りになる、巣鴨スタジオフォー四の日寄席に出向いてみる。レギュラーメンバーの古今亭駒治師から、タモリ俱楽部出演の話が聴きたい。

縁日の地蔵通りは大賑わい。緊急事態宣言明けというのもあるでしょう。
スタジオフォーに着くと、決して混んではいなかった。開演時にはほぼ満員になったのだが、わりと出足はのんびりしている。
客席と演者を仕切るアクリル板は消滅。
銀行に寄って現金引き出したのだが、スタジオフォーはPayPayが導入されていたのでありがたく使わせていただく。
3月の巣ごもり寄席に来たときはまだなかった。
専用のQRコードを読むと2,000円の金額が自動表示された。四の日寄席専用のQRコードを用意しているのだ。やるな。
私はキャッシュレスライターなのだが、落語界ほどキャッシュレスに遅れた分野もそうそうない。だが東京で最も年齢の高いとされる地において、キャッシュレスで落語に入れるなんて感激。
キャッシュレス導入記念に回数券でも買っちゃおうかと一瞬思ったが、今回はやめる。回数券、4枚分の値段で5枚付いてる優れものだが、四の日寄席に年間何回来るかというとなあ。

お目当ての駒治師は、今回トリだった。これは行ってみないとわからないどころか、現場でも、4人目が出て初めて知る情報である。こんなのも面白い。
ところで駒治師だけでなく、その前の4人の古典落語がいずれも素晴らしいものだった。大満足の2時間であります。

熊の皮やまと
疝気の虫左橋
松曳き馬石
(仲入り)
湯屋番文菊
ママテツ駒治

トリの駒治師から先に出します。
冒頭の挨拶は、「奇跡が起きましたよ。我がヤクルトスワローズ、首位です」。
おめでとうございます。ヤクルトファンに悪い人はいないと思う。
タモリ倶楽部の話はこのあと。
思春期の頃からずっと視ていた番組に出られて光栄ですが、「視たよ」と言ってくれるのは仲間だけです。一般からの反響はそれほどないです。
思えば、「前駅」コラムを東京新聞に書いていた際も、反響は仲間内からだけでしただって。
スタジオフォーに集まるお客は、タモリ俱楽部はあまり視てないみたい。私を含め、数人は拍手していたが。出演の裏話は聴けず。

緊急事態宣言も終わったが、まだ中止になる落語会もある。
10月31日に、十条駅111周年記念で落語を披露するはずだった駒治師。これは残念で仕方ないとのこと。
この会は参加要件が厳しい。十条駅のニューデイズで500円以上買い物した人に、引換券が渡される。
JRの人と話していて、それより入場券にセットできませんかと訊いたら、ダメなんですと返答。鉄道ファンが買い占めるから。
なるほど、入場券は完売したが落語会には誰も来ないということになりそうだなと。

世間を騒がす迷惑鉄と、その報道、それからヤフーコメントの話。
いつもの生徒の作文みたいに、懐から紙を出して読み上げる駒治師。
電車の引退を撮りにきた鉄道ファンの一部が、線路内に乱入したニュース。
これに対するヤフコメ。「この報道はまるで間違っている」。
テツを擁護する意見かと思いきや、「電車じゃない。気動車だ。ディーゼルエンジンで動く列車なのに、まるでわかっていない」。
重症ですねと駒治師。

初めて聴く新作だが、駒治節全開。
知らぬ人どうしのトラブルがあり、思わぬ人物の登場で解決し、大団円という黄金パターン。
ただこの「ママテツ」には、他の駒治落語のような超トンデモ状況は発生しない。比較的おとなしめの世界観。
だが、噺のストーリー以上に私に響いてきた要素がある。
噺のテーマはタイトル通り「ママ鉄」。自分の生んだ男の子が電車好きに育ったため、感化されて鉄道好きになったお母さん。
前から感じていたのだが、子供が喜ぶのでいろいろ与えてやり、ついには自分まで興味を持ってしまうお母さんたち、実にいとおしい存在だなと。
我が家はママ鉄ではない。パパの私がいろいろ連れていってやっていたら、立派なテツになってしまった。
本人は小さい頃から英才教育を受けたなんて言うのだが、別にテツに育てようなんて一度も考えたことがない。柳家小ゑん師の「鉄の男」とは違うのだ。
ただ、子供が喜ぶようにいろいろしてやっただけ。
そんなことを考えながら聴いていて、ちょっとグッと来てしまった。
客の中には男の子を育て上げたお母さんも当然いて、そういう人の琴線には間違いなく触れたはず。

続きます。

作成者: でっち定吉

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