神田連雀亭ワンコイン寄席36(上・馬久一花夫婦共演)

談志の続きものを手掛けていたのだが、現場に行ったのでそちらを先に出します。
「その3」以降も書き進めてはいるので、必ず出しますけどね。

今日のネタのほうがきっと人気を集めます。現場ネタでアクセス多いほうが私は嬉しい。
月曜日の連雀亭ワンコインは面白い。落語協会から、金原亭馬久、春風亭一花のふたりが登場。
実の夫婦である。落語界に二組しかいない夫婦噺家。
これは行かないと。
神田連雀亭の顔付けは、ランダムで組まれる。その分、代演や入れ替えも増えるが、今回は当初の顔付けのまま。
3人の中に、夫婦噺家が入ったということである。面白いな。
夫婦以外のもう一人は、円楽党の三遊亭ぽん太さん。

一花さんは最近よく聴いているのだが、旦那のほうは一年ぶり。ずっと聴きたかった人だが。
一花さんは、人のよさが漂う高座。かなり絞り込んで、ピンポイントで爆笑ギャグを入れてくる。
いっぽう、馬久さんのほうは、超本格派。
女流大喜利レギュラーで、さがみはらの大会も獲った奥さんのほうが先に出世しているが、旦那は今後焦らずゆっくり、大物になる。はず。

人が集まりそうだなと思い、11時の開場を狙っていったら、階段の下まで列ができていた。
じきに札止めに。危ないところだった。
夫婦のファンという人が集まっているみたい。
連雀亭はまだ定員20人なのだそうだ。オーナーの意向とのこと。

受付はトリの馬久さんの仕事だが、一花さんも表に出てきて、甲斐甲斐しく手伝っている。
一花さんの前説でスタート。つい先ほどまで表でいろいろしていたのに、ずいぶん手早く着替えるものだ。

宮戸川ぽん太
辰巳の辻占一花
岸柳島馬久

 

トップバッターは坊主頭のぽん太さん。
前座の頃両国で聴いて以来、今年の連雀亭で二ツ目として初めて遭遇した。演目はなんと「怪談乳房榎・おきせ口説き」。
今日は順序的に軽いネタであろう。

異様な熱気の席をアオるように、「今日の顔付け、私も楽しみにしてきたんですよ。どんな雰囲気になるかなと」。
よその家にお呼ばれしたみたいですとのこと。紅茶とカントリーマアムが出ていそうな。
協会が違うが、馬久アニさんとは珍品好きという共通項があって、話が弾みます。
確かに私も馬久さんからは、「富士詣り」「臆病源兵衛」なんて聴いた。
馬久さんが、最近ぽん太さんは「元犬」よくやってるみたいだけど、これ普通の? 変えたやつ?なんて訊いてくれます。
普通のですと答えると、横で一花ねえさんが、うんうんとうなずいてくれます。本当にお呼ばれです。
夫婦で出るなんてことはそうそうないので、本来ならこの会も2,000円ぐらい取っていいですよね。でも、私が出てるんでマイナス1,500円分、これでワンコインということで。

本編へ。
お花さんが家に入れてもらえず、締め出し食べちゃっている。宮戸川だ。
浮ついた席には向いた演目。
しかし宮戸川は、「お花半七」である。半ちゃんじゃなくてキュウちゃんとお花が呼んでいる。
登場人物の名前が違うことは落語の場合珍しくもないから、特に違和感なく聴いてはいた。
だがよくよく考えれば、「お初徳兵衛」「お若伊之助」「お藤松五郎」などなど、男女ワンセットの演題は落語でおなじみ。主人公の名前が変わるなんてありえない。
と思っていたら、半七でなくてキュウちゃんが、「お花さんじゃないですか。お隣の一花さん」と呼び掛けている。
あ、つまり久ちゃんか。
この夫婦をネタにしているのだ。すごいな、この日限定版じゃないか。
今年の新真打、古今亭志ん雀師が、「厩火事」をこの夫婦に見立てて描いていたのを思い出した。落語界でみんなの楽しいおもちゃになっているのだ。
みんなこの若夫婦のことが好きなんだろう。

物語の進行に連れ、おじさんも婆さんに「小網町の馬久が来た」とはっきり名を出している。客、爆笑。
「小網町で半鐘が鳴った」というのは、寝ぼけた婆さんのボケだが、名前が違うから使えない。
だが、「今、外でバキューンって音がしたって」と寝ぼける婆さん。おじさんツッコんで「強引だね」。

雷が鳴って、奥手の馬久と一花の濡れ場に入ってしまうところで「お時間でございます」。
お遊びはともかく、とことん刈り込んでいて、テンポの実にいい宮戸川。あとの二人に時間残す気遣いだろう、15分の高座。
口調もいいし、ぽん太さんはいいね。好楽一門には一見珍しいタイプのようだが、その実普通にいそうにも思える。
不思議な一門だ。

演題は、入り口付近のボードによると、「一花馬久の馴れ初め」だった。
これは宮戸川の別題である「お花半七馴れ初め」をもじっているのだ。面白いけど、ネタ帳としての意味を果たしてない気もする。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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