メリークリスマス。無事締め切りをクリアしたので朝から書きます。
毎年いろいろ書かせてもらっているM-1グランプリ。
今年は三平降板のニュースなどいろいろありまして、すっかり出遅れました。
しかし大会から5日経って、すでに世間に論評が溢れている今さら、なにを書こうかな。
実に散漫になるがお付き合いください。
M-1も毎年採点をするようになり、キングオブコントまで採点を始めた。
NHK新人落語大賞は当然。
すると、今年あたり、私のテンションがおかしくなってきた。
完全なる、審査目線になってしまったのであった。
自分の好き嫌いは当然あるし、採点にあたって依然重要ではある。だが、観戦直後の感想としては、好き嫌いはあまり浮かび上がってこなくなる。
「応援」なんてまるでない。
今回のメンバーでは、オズワルドのことはかなり好きだけども、「優勝して欲しい」「すると嬉しいな」なんて気持ちはどこかに行ってしまう。
自分であって自分でないような心持ち。
スポーツだって好き嫌いを前提に観るものなのに、なんだこれは。
もちろん、本当に面白い漫才に遭遇したとき、心を動かされないわけではないけども。
優勝決定戦の3組を観終わって、「オズワルドの勝ちだろう」と客観的に思った。
外したのだが、まあ巨人師匠がこうだから恥ではないでしょう。
それに、評価の客観性が強かった分、錦鯉の優勝にすんなり喜べたりなどして。
丁稚採点 | 結果 | |
モグライダー | 91 | 637 |
ランジャタイ | 80 | 628 |
ゆにばーす | 88 | 638 |
ハライチ | 93 | 636 |
真空ジェシカ | 92 | 638 |
オズワルド | 92 | 665 |
ロングコートダディ | 94 | 649 |
錦鯉 | 92 | 655 |
インディアンス | 91 | 655 |
もも | 91 | 645 |
個人的にはロングコートダディがトップ。もう1本見たかった。
全体的に点数低めなのは、別にレベルが低いということではなく、たまたまです。
91あたりを基本にしつつ、差を付けていこうとしたのだが。
もっとも、ランジャタイを除きこんな幅の狭い点数の付け方では、審査員の価値はないですな(もともと審査員じゃないけど)。
ところで、時間を置いて録画を再度観ると、また感想が違ってきてしまう。
トップバッターのモグライダーは、見直すたび本当に面白い。
私はトップバッターが不利にならないよう熟慮して点数を付けている(かさ上げはしない)。90点でなく91点だというのは、そういうこと。
だがそれでも、まだモグライダーのネタには隠れた伸びしろがあったのだ。
なるほど、客席があったまっていない以上、どうやっても不利にはなるのだ。
敗者復活戦の2位にでも一席やってもらい、みんなで点数も付けて基準にする以外ないかな。
モグライダーより高評価の真空ジェシカは逆に、見直すたび点数が落ちてしまう。一瞬刺さったと思ったら、案外そうでもなかったということだ。
まあ、後付けの評価に、大会としての意味はないわけだけど。
ランジャタイは思い切って低い点数。
面白いかどうか、理解できるかどうかの前に、客に合わせる気がないのは、スポーツの大会として捉えたときには気に入らない。
爪痕だけ残しに来ているのだから、まともな点数でなく低いほうがむしろいいかもしれない。
とにかく頭から進めます。全組にはあえて触れない。
モグライダー
令和の世に「さそり座の女」とは。1972年の曲だ。
思い切ったネタに思うが、ちゃんと若者にも刺さっているだろう。
ちょっと昔、明石家さんまがこの歌に観覧客みんなでツッコむというネタをやっていたのを思い出す。しかし二番煎じにはしない。
「美川さんがかわいそう」と、ともしげの唐突なボケで始まる。
だから、「いいえ私はさそり座の女」のセリフがちゃんと意味が通るようにしてあげようという、実に余計な、不毛な議論。
ボケは馬鹿だが、よく考えたらツッコミの芝のほうも相当馬鹿だ。「美川さんがかわいそう」を解決するため、馬鹿に付き合ってやる必要などないのだ。
どうやったら冒頭の「いいえ」が引き出せるかも、アドバイスしてやる必要なんかもともとない。
繰り返し録画を観るうち、この構造に改めて感心した次第。
ツッコミの役割は、日常の感性から飛んでいってしまいがちなネタを、よく伸びるロープでもって地上につなぎ留めておくこと。
こういう器用な構造なので、ツッコミの演じる美川憲一のモノマネでもって笑いも取りやすい。ツッコミがボケると違和感が生じることがあるのだが、この流れだと自然にボケられる。
ボケはツッコまれ、ボケたツッコミは客に内心でツッコまれる。よくできている。
私はよくできた新作落語を分析しているうち、「飛躍」があることに気付いた。飛躍は古典落語にもよく見受けられる要素。
飛躍があるのに、それが噺から浮き上がっておらず、日常の視点を残したまま眺められたとき、思わぬ感動が生じる。
今年のM-1で、飛躍があったのがオズワルド、錦鯉、ロングコートダディ、モグライダー。そしてハライチ(やや微妙)。
飛躍がありそうでなかったのが、真空ジェシカと、もも。飛躍があってもわかりにくいのがインディアンス。