今日こそM-1の記事をと思ったのですが、ほぼなんにも書いていません。
とりあえず池袋に戻ります。
ちなみに本業のほうで急に来た締め切りがふたつあるので、明朝の更新は休んでしまう可能性大です。気が向いたら昼からなにかアップしますので。
楽しい池袋、ちょっとさかのぼります。
笑福亭里光師は、あちこちにある非接触型の体温計がおかしいというマクラ。
35度はおろか、34度台が計測されることもある。なんだか楽しくなり、この芝居の最中も毎日池袋東武で体温を測ってくるそうである。
そのうち32度台が出そうだとのこと。
ネタは非常に軽い小噺、始末の極意。
気づいたら寝落ち。どこかで寝る気ではいたのだが。
続いて桂米福師。
高校時代にパチンコ屋で学校の先生に出くわしたマクラ。
そこから鷺とりなのだが、この噺も普段耳にするのとは細部が結構違っていた。
たとえば、鷺とりは一度すでに実践している。隠居にそんなに上手くいくはずないだろうと言われ、再度試しにいくのだ。
本命は鴨とりなのだが、まずは鷺を。
全般的には一緒なのだが、わずかなズレがとても楽しい。
サゲは浅草寺の坊さんたちが死んでしまう昔のタイプ。
瞳ナナ先生は、サンタコスプレ。
寄席らしい緩いマジックで去っていく。
流れを元に戻す。クイツキ、新宿カウボーイの後の出番が三笑亭可風師。
頭のシルエットがハケたばかりのかねきよさんに似てるななんて思ったが、そんなあざといネタは振らず、いつもの師匠(可楽)いじり。
師匠とおかみさんの言い間違い。
可楽師は現在デイサービスに通っているらしい。
新宿カウボーイがかき回した後で、とてもやりにくい空気。定番マクラでじっと我慢しながら、流れを取り戻していく可風師。
空気が戻ったところで、満を持して時そばへ。
芸協には爆笑時そばの系譜があるが、可風師のものは極めてスタンダード。
知らないクスグリなんて入っていないのだが、これがやたら面白かったのだ。
時そばも冬の間よく掛かる(芸協では年中掛かる)噺であり、冬の凍てついた空気を描く情景描写の見事なものから、爆笑ものまで実にさまざまなバラエティがある。
本寸法でなおかつ面白いという時そばは、あまり聴かない。
この面白さがどこから来るか。明らかに、可風師自身が面白いからだと思う。
可風師の描く、「我々同様呑気な男」は、真の馬鹿。だが、馬鹿描写はそれほど強調されていない。
9つでなく早く4つに出かけてしまう男であるから、馬鹿な様子を入れておくとわかりやすい。そもそも二日目は、そば屋のほうがひどいのであり、最後まで男は失敗はしてないのだし。
でも、そば屋との掛け合いの中で、馬鹿さ加減がしっかり伝わってくる。
面白い時そばも多数あるけども、どうしてもクスグリを工夫しないとウケない。演者もそう思っているかも。
その道を行かない可風師、さすがだ。本寸法で爆笑なんて、三遊亭小遊三師のようだ。
面白いのでもっと売れて欲しい師匠。私の期待通り今年はついにトリも取って躍進中のようである。
私ももっと聴かないと。
トリはお目当て、柳家蝠丸師。
残念なことに、2年前と演目が被ってしまった。「徂徠豆腐」。
珍品を多数お持ちの蝠丸師の珍品が被ってしまうとはなあ。
まあ、季節は同じなのであり、被るのは決して天文学的確率ではない。
ちなみにこの日の池袋にいた方でしょうか。2年前のその徂徠豆腐を、検索で訪ねてこられた方もいらした。
今日は記事の食い合いを防ぐため、表題を可風師にしますが。
2年前のその演目と、マクラから展開から、すべてが一緒でした。
とはいえ、落語というものは当たり前だが話術。一度聴いたぐらいのことでは、楽しさは消えはしない。
蝠丸師の緩いイメージからすると不思議なぐらい、作り込むんだなと。
この芸風を確立するまで、どのぐらい作り込んで、どのぐらい壊してきたのだろうか。
釈ネタだから人情噺のはずなのに、いっさい人情を直接は語らない蝠丸師。
といって、ギャグまみれに改造した噺ではないのだ。
終始愉快な蝠丸師の徂徠豆腐。私はこの師匠を芸協の「愉快派」だと理解している。
とっておきのギャグはあるけども、その効果は意外なぐらいぬるい。冷めないぬるま湯は実に心地がいい。
来年こそ、蝠丸師の高座を3席は聴きたいと思います。トリと仲入りと軽い出番と、それぞれ。
この12月中席にもまた来るつもりだ。
芸協は楽しい。