ようやく年始の落語始動です。聴いてきたので撮って出し。
寄席はまだ「二之席」だが、国立演芸場だけは中席だ。芸協。
瀧川鯉昇師の主任で、クイツキ兼ヒザ前が三遊亭遊雀師。
この席は11~14日が貸し切りで、一般向けは本日から。どこが借り切ってるんですかね?
当初、江戸川区城東図書館で開催される無料の会に行きたかった。西大島。
徐々に無料の会が増えてきている。
当日朝に電話したら、50名もう予約でいっぱいだった。
ちなみに、桂扇生師。なかなか寄席で見かけない人だが、もう何年も前に黒門亭で聴いて、ウデのある人なのは知っている。
師匠・文生について芸協から移ってきた人なので、大所帯の落語協会内で基盤が弱いみたい。
でも、公式サイトのスケジュール見るとご自分の会はずいぶんやっていて、なかなかお忙しい様子。
扇生師は今度リベンジします。
来春の新真打、春風亭柳若さんなどの顔も見えるが、二人の師匠を目当てに仲入り後から突撃する。
ちょっと不安なのは、鯉昇師も遊雀師も、ネタ数多い人ではない。特に寄席では。
これはカブりもあるかなあと。
仲入り後は3割引きで1,400円。
キャッシュレスOKなのが落語界の異端児(どっちが異端なんだ)。Suicaで払う。
すぐに幕が開いて遊雀師登場。この人の高座が、2022年の最初とは悪くない。
遊雀師、2021年はついに一度も聴けなかった。いろんなところに出ている師匠だけど。
そして本編は、2018年に、国立で続けて二度聴いている「熊の皮」なのであった。
残念だがまあ、仕方ないな。遊雀師の場合、トリを立てる出番における飛び道具が熊の皮なのだ。
2020年にやはり国立で聴いた際は、四段目だった。短縮版の寄席だったが、通常は仲入りに該当するところである。
こちらなら、カブってもいいななんて思っていた。
座布団に座って、「正月早々、いいことがあったんだよ」と語り出す。
まあ、内容はいつもの地下鉄マネーロンダリングなんだけども。
そしていつもの奥様小噺と、ピカソ。
半蔵門の駅で千円拾ったが、千円札に変な印がついているので、きれいにしようと企む遊雀師。
師が語り出した直後に、くしゃみをする客。
「くしゃみしてる場合じゃないよ」とすかさず遊雀師。
しかし、実にいいタイミングのくしゃみだった。遊雀師のファンが、タイミングを計ってこよりでも入れてるんじゃないかと思うぐらい見事な。
遊雀師の前でくしゃみを発すると、必ず返答があります。
私の過去に聴いた席でも、高い確率でくしゃみ返しが入っている。
次に、客席から変なピー音がする。
通信スクランブルが掛かっているので、携帯電話ではないと思うのだけど、なにかのタイマーか。
変なピー音、二度目まではスルーしていた遊雀師、続けての三度目にさすがに耐えかねて、「携帯も鳴ったしね」と小噺のセリフに入れてしまう。
客、爆笑。
「ちゃんと切っておきなさい。ここは国立なんだよ。池袋じゃないんだ」
一般的には「浅草」を使っておくと無難な場面だが、遊雀師にとっては池袋らしい。池袋のトリはないからかな。
「国立演芸場の精鋭のお客さんなんだよ。なにしてもいいってもんじゃないよ。この前の『鹿政談』でやったらエライことになるよ」
文字に起こすと厳しめだが、どこまでもギャグの装いが乗っていて、お客に恥をかかせないのは立派。
幸い、四度目のピー音はありませんでした。
遊雀師の熊の皮はもう、完全に頭に入っている。師匠の前で一席やったらアゲてもらえるんじゃないかというぐらいに。
一時期、浅草お茶の間寄席のVTRを繰り返し聴いていたので。
もちろん楽しい噺。だからこそ繰り返し聴いたのだ。
せっかくなので、この定番の噺を掛ける演者の気持ちになってみる。
そうすると、まだまだかなり楽しい。なるほど、演者のほうも、何度やっても楽しい噺なのだ。
この噺は、しっかりものおかみさんになり、ポーっとした甚兵衛さんにどう用事を言いつけるかというタスクでできているのである。
おかみさんの見事なリードによって、水汲み、米研ぎ、洗濯と全部やらせられる甚兵衛さん。そしてそんなに嫌そうでない。
こういう楽しみ方をすると、笑い転げている他の客と別のものが見えてくる。
先生のところへ行って、ハチャメチャな口上を申し上げる甚兵衛さん。本人は大まじめ。
最後に「以上です」。口上に大笑いした他の客がスルーした、このセリフにひとり爆笑してしまった。
今年こそ、遊雀師の寄席のトリに行きたいものである。