Zabu-1グランプリ2022(上・出場者の選出理由を考察)

数えて3回、二ツ目の大会、Zabu-1グランプリ。
放送日に東村山まで行ってたもんで、取り上げるのが遅くなりました。
当ブログを楽しみにして来てくださった方は今年はいるかな? なにしろ今年はツイートも少ない。飽きられたのではないか。
昨年、極端な演出が多くて苦情や反省が多かったのかもしれない。
だからといって落語のよさを普通に出そうとしても。そんなものは、あっさり世間に埋没してしまう。
「普通にやれ」なんて声だけ上げている人は、普通にやってる大会など観ません。日本の話芸や落語研究会を観る。
個人的には、過剰演出のほうがずっとマシだったのではと思わなくもない。
どのみちストーリーを大胆にカットし、見どころだけ演者が担当する演出である。ホンモノではあり得ないわけで。キワモノとして開き直ったほうが、むしろ価値がありそうだ。

そんなわけで、前回に比べて中途半端にしっかりやっている今年、ちょっと観ていてツラい部分もありました。
再度観ると、意外と楽しいけど。

ゴールデンとはいえ、「すべらない話」のウラのBS。今回はZabu-1を観たという人をアテにしないで進めよう。
ちなみに私も、この時間はすべらない話のほうを見てました。錦鯉・渡辺のぐっと引く話術について、落語との親和性を感じ、熱く語りたくなったりするのだが、昨日堀井憲一郎氏がコラム書いていたし、もういいや。
ホリイ氏、私と同様、渡辺に落語を見出したようだ。
最近嫌われ者一直線、霜降り明星・粗品のネタは世間で今回非常に評判悪かったそうで。
個人的にはそこまで悪いとは思っていないものの、渡辺の上手さを見たとき、確かに粗品は過剰に自分を押し出す対極の位置づけ。
嫌っている人の気持ちはよくわかる。

脱線した。
今回のZabu-1グランプリのメンバーをまず並べてみよう。1人減って8人。
予選があるわけじゃない。だから、昨年の金原亭乃ゝ香なんてビジュアル以外に武器のない人が出られるのである。
乃ゝ香がその後笑点女流大喜利に出るという、昨年の予想は当たった。廃業まではさすがに読めないが、この大会に出たのが廃業の遠因でもおかしくはない。
さて、各人の選出の理由を想像してみる。

【Aブロック】

  • 三遊亭好志朗・・・「円楽党」枠兼「年寄」枠
  • 三遊亭わん丈・・・第1回優勝によるシード
  • 林家けい木・・・・第2回優勝によるシード
  • 桂二葉・・・・・・「女流」枠兼「上方」枠。旬の人だから当然呼ぶところ。

【Bブロック】

  • 春風亭一蔵・・・・制作側にファンがいる(想像)
  • 立川談洲・・・・・「奥さんが芸人」枠兼「立川流」枠
  • 昔昔亭昇・・・・・わずかに残った「芸協」枠
  • 桂枝之進・・・・・「上方」枠兼「話題」枠

円楽党枠、立川流枠なんてものは常にあるものではない。このところ立川流なんて、年々話題性が落ちていることでもあり。
だが、他の話題があれば合わせ技。
それより、噺家の数の多い芸協が少ないのは、昨年もそうだった。ちょっと気になる。
昨年惜しかった瀧川鯉白さんを、新鮮味を出すため今年呼ばないのはわかる。
ただ、カデンツァから桂竹千代さんなんて呼んで不思議なさそうだけども。芸術祭優秀賞はまあ、最近の戴冠だからセレクトには間に合わないにせよ。
Z落語の桂枝之進は、この番組向きということだろう。それはわかる。
上方枠二人も固定ということはないだろう。だが最低でも、大会として成り立たせるならこのぐらいは割合として必要と思うが。

こうしてみると、優勝した一蔵さんが、一番選出理由がわからない。来年真打なんてのは、それこそ芸協の昇也さんをはじめ、他にもたくさんいるわけで。
いや、私ももともと一蔵さん好きですよ。今回も、私の好きな領域で見事な芸を見せていたし。
好きと結果は大きくはズレない。ただ、選出にあたっての客観的視野がややズレる。
ちなみに、結果はこう。落語に日ごろ触れない25人が下す評価である。

【Aブロック】

  • 三遊亭好志朗「権助魚」・・・2
  • 三遊亭わん丈「お見立て」・・10
  • 林家けい木「親子酒」・・・・1
  • 桂二葉「真田小僧」・・・・・12

【Bブロック】

  • 春風亭一蔵「鷺とり」・・・・11
  • 立川談洲「七段目」・・・・・0
  • 昔昔亭昇「やかんなめ」・・・9
  • 桂枝之進「普請ほめ」・・・・5

【決勝】

  • 桂二葉「近日息子」・・・・・8
  • 春風亭一蔵「夏泥」・・・・・17

結果的には、最大人数を誇る落語協会の三連覇となったわけだ。それをどうこう言う気はありません。
個人的には今回、二葉さんがいいと思いましたがね。ただこれは、落語の一般的な鑑賞法に基づく判断に過ぎないかも。
女流でも本格派(こんな称号には疑問もあるでしょうが)の二葉さんと比べると、一蔵さんはとにかく面白落語一直線の人だ。
兄弟子、一之輔がグイグイ伸びてきたときと同じ空気。そういうものを評価すること自体はよし。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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