昨日出した「上」はずいぶんアクセス多かったです。
侮れませんな。
大会にどうアプローチしていこうか悩んで、冒頭から進めます。
落語本編の前の、全員のプロフィール紹介が長すぎて、ちょっとうんざりした。
噺家のプロフィールに興味がないわけじゃない。だが、できればドキュメンタリー番組でもって観たいシーンだ。
それにそれほど斬新な切り取り方もなく。
まずAブロック。
三遊亭好志朗「権助魚」
昨年、立川寸志さんを選んだ年寄枠。
そんな枠が必要かどうかは知らないが、個人的には非常に好きな人。
NHK新人落語大賞に続きトップバッター。そして同じ権助魚。
自信の演目なんだろうが、変えて欲しかった気はする。
楽しい権助、非常にいいと思うけどな。ベテラン感が漂うためか点数は伸びない。
NHKではカットしていた魚屋のくだりを入れる。ただ、それでも「2時15分」のくだりがウケない。
お話の中に、現実の時間枠というのが飛び込んできて、ピンと来なかったんだろうか。
別れ際旦那に声を掛けて赤面させるシーンとか、いつまでもお魚たちとおしゃべりしているとか、オリジナルのクスグリも入っている。
かなり面白いと思うんだが。
好志朗さんは、若い子にウケないとしても、既存の落語世界のほうで大いに評価しましょう。
三遊亭わん丈「お見立て」
師匠円丈を喪ったわん丈さん、このたび2月1日に、ふう丈ともども天どん門下になったそうで。
全然方向性の違うふう丈さんとは、別々の師匠の下に行くものと、なんとなく思っていたけどな。
天どん師は古典もかなりやる人だからいいのだろう。
わん丈さんは、さすがのお見立て。
「親父にだって殴られたことないのに」のクスグリだけ味消しに思った。
喜瀬川花魁にいいように操られ、喜助だんだん楽しくなってくるというかなり斬新なギャグがある。このギャグは古典落語の世界にせっかくマッチしているのに、その世界をわざわざぶった切ることないよね。
こんなクスグリを入れるためには、その世界観を用意しておかないといけない。
どうして山谷の寺に行く羽目になるのかは、さりげなく抜いていた。
わん丈さん、さわやか好青年で客に与える印象もいいけど、新たに付け加えた持ち味が少ない気がする。
これだけ心配。
林家けい木「親子酒」
どうした。
昨年優勝したというのに、まるでいいところなし。
演目がよくなかったか。酔っぱらいを見せる親子酒は、5分じゃできないということかな。
渾身のオリジナルギャグがどんどんしぼんでいく。
退屈な5分だった。
桂二葉「真田小僧」
二葉さん、今週は天満天神繁盛亭でトリを取ってるそうな。NHK受賞のお祝い興行である。
大阪では今まではNHK特需はなかったらしいのに、女性1号の彼女から急に生まれたみたい。業界にとってもよかったね。
上方の鶴二師のラジオと、FM東京の住吉美紀アナの番組にそれぞれゲストで出ていたので聴いたところである。
「男の落語をそのままやってウケてしまう」という、画期的な女流がブレイク中。
さすがのデキ。余計な演出なくまっすぐ噺に迫って予選突破するのは見事だ。
NHK戴冠この方、二葉さんをさまざまな機会に聴き続けているうち、すっかり慣れて楽しくなったという人もいると思う。
もともと演技力が極めて高いのだ。ドラマの演技ではなく舞台の演技だが。
サスペンスが必要な真田小僧にはぴったりの演技力。
露出が増えて聴き手にアジャストしたことで、ますます評価が高まるに違いない。
わん丈さんを倒して決勝進出も当然と思う。
続いてBブロック。
春風亭一蔵「鷺とり」
昨日もともと好きだと書いた一蔵さんだが、ブログを遡ったらなんと一度しか聴いてないじゃないか。
好きなのは本当だし、披露目も行くつもりだけど。
その一度が、黒門亭で聴いた「鷺とり」。自信の演目らしい。
ご本人も上方落語っぽい人だから、上方由来のアホ落語がぴったり。
面白落語だが、導入部分はごく普通の古典落語なのがまた上手い。ちょっと跳ね気味ではあるが、違和感はない。
鷺の仕草をきっかけにして、一気に面白世界に持っていく。客を全員載せてダッシュする。
進行役のDJ KOOの出身高校を調べておいて、サゲに強引に持っていく力技。
ズルいけど面白い。
点数とは関係ないが偉いなと思ったのは、この人だけ説明Vを使わず、本当に5分の尺でやっていた。
強い思いがあったものか。
お目付け役の鯉昇師が、鷺の所作のワンポイントを絶賛していた。
その日聴いたお客さんが、あの人の「これ」(鷺の所作)だけ覚えて帰ってくれたらいいじゃないかと。
まったくそうですな。