東京落語界における「二ツ目」

ネタさえあれば毎日更新、でっち定吉らくご日常&非日常です。
仕事の締め切りのほうはメドがたったが、ブログのネタがないまま夜になりました。

円楽党の二ツ目昇進のニュースを知ったので、今日は「二ツ目」について書いてみましょう。
ちょうど、芸協の二ツ目昇進も話題にしたところだし。

円楽党で3月から二ツ目になるのは、三遊亭しゅりけん改め三遊亭兼矢。
兼好師の3番弟子であるしゅりけんさん、私はそこそこ聴いている。なにしろ円楽党は前座が少ないので、遭遇率が非常に高い。
上手い人だし、柔らかい。兼好師に似た部分もあって将来性は高そう。
兼矢という名前は、本名から取ったものでもあろうか。本名を知らないので現時点では想像するだけだが。
兄弟子・好二郎さんは二ツ目の披露目をやってもらっていたので当時亀戸に出向いた。
このご時世なので、兼矢さんの披露目は両国ではやらないようだ。亀戸でも、番組まだ出てないが、なさそう。

円楽党は、これでまた前座二人体制である。
未成年の楽太さん(4月1日で法改正により成人でしょう)と、先日恐ろしく上手い高座を聴いた、けろよんさん。
またしても、二ツ目に手伝ってもらわなければならない。
いっそ芸協の前座にでも来てもらえばいいのになんて思う。
そうすると、楽屋入りを待っている見習いも芸協で前座に上がれるし、円楽党の師匠にも目を掛けてもらえるし、なんて。

さて、二ツ目とは改めて不思議な存在である。
考えれば考えるほど不思議。

  • 師匠の家に毎日通わなくていいが、ご飯も食べさせてもらえなくなる
  • 寄席に通わなくていいが、呼ばれることも少ない
  • 羽織が着られる一人前の身分なのに、破門されると廃業必至
  • 師匠に死なれると(廃業されると)別の師匠に付かないといけない
  • 襲名しても、代数(○代目)を名乗れない
  • 自分で仕事を取ってきていいし、仲間と会を開いてもいい
  • 自由はたっぷりあるが、仕事はそんなにない
  • お金を使わなきゃいけないが、そんなには入ってこない
  • 神田連雀亭や、スタジオフォー巣ごもり寄席など、二ツ目の寄席がある
  • 賞レースがたくさんある(NHK、さがみはら、北とぴあ等)
  • 先輩が、自分が受けなくなった低単価の仕事を回してくれる(アルバイトはしなくてもやっていける)

これが二ツ目である。ほぼ、実力に対する評価は出てこない(襲名に若干)。
落語を知らない人は、二ツ目という段階から、実力を認められた人が真打になる、そう認識する。
もう長いこと年功序列で真打制度が実施されているのにもかかわらず。
確かに一応、理事会で承認されないと、二ツ目にも真打にもなれない以上、誤解を招くのも無理はない気もする。
だからといって、「あいつはヘタクソだから真打にしない」なんてことはない。そんなこと言ったら、***とか、###とかは万年二ツ目である。
今年の芸協では、なぜか香盤のトップにいた春雨や風子さんが昇進しなくてちょっとザワついているのだが、まず間違いなく実力とは無関係だろう。
二ツ目から真打に掛けて一気に実力が伸びるなんてことはない。シームレスだからこそ区切りを設けているというのが現代の真実。

そういえば、落語のニュースを探していたらこんなのが見つかった。
なぜヤフーに転載されたのかよくわからない。リンク先消えるの早そう。

“極小かつ究極のエンタメ”落語を題材に描く新連載がジャンプで始動(リンク切れ)

少年ジャンプで「あかね噺」という新連載が始まったのだと。
引用しておく。

「あかね噺」は落語家の父を持つ少女・桜咲朱音を主人公にした物語。父親はなかなか真打になることができずくすぶっていながらも、朱音は彼のことを尊敬している。そんな中で父が真打昇進試験に挑むことになり……。

なにこのマンガ、先代小さんが落語協会の会長を務めていた1970年代が舞台?
そうでないなら、「真打昇進試験」って。
フィクションとはいえ、こういう試験がかつてあり、紛糾した歴史を考えないで設定が出てくるわけがない。
なんだかイヤ。

そもそも、誰か個人が昇進を決めようなんておこがましいのです。談志だって、本来そんなことをする資格なんてなかったと思う。
真打昇進試験があろうがなかろうがいえること。決めるのは客だ。
客を呼べない二ツ目だったら、文句を言う資格はない。呼べる二ツ目だったら、昇進させない環境が間違っている。それだけ。
どうせこのマンガ、真打昇進試験を審査する協会の古株が、嫌な奴ばっかりの設定だろうな。協会の真打に実力を認めさせようなんて、マンガ的には盛り上がるかもしれないけども陳腐だって。
実際に理事を務めるような師匠はだいたい魅力的である。変な設定を持ち込むとストーリーがどんどん腐っていくこと請け合い。

二ツ目についてはまたいずれ。

作成者: でっち定吉

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