黒門亭16 その1

 

扇ぽう / 元犬
天歌  / 無限しりとり
小三太 / 万金丹
(仲入り)
丈二  / 大発生
小ゑん / 卒業写真(ネタ出し)

令和最初の日に両国に行って、竜楽師の「浜野矩随」に満足して帰ってきた。
この後、国立演芸場の円歌襲名披露のチケットも買っていて、そんなに気張らなくてもいいのだが、黒門亭に柳家小ゑん師が出るので行ってきました。
ネタ出しで「卒業写真」。
正月には「ぐるんぐるん」という、珍しいネタを聴きに黒門亭に来たが、今回の「卒業写真」は、小ゑん師のCD第1巻に、これとカップリングで入っている。


今回もまた、持っているCD収録の噺を聴きに、現場へ。
師もそんなに掛けてはいないだろう。黒門亭ならではの演目だ。

黒門亭だと実力をフルに発揮する、三遊亭丈二師も顔付けされている。
そして、「柳家の最終兵器」(と、小ゑん師もマクラでネタにしている)小三太師などという珍しい噺家の名前があったりして。

黒門亭は、世間のイベント動向とはまったく無縁。正月、大型連休、お盆などイベント時であっても、それを理由に混むということは別にない。
ただし小ゑん師が出るなら、それを理由に行列必死。
黒門亭の2部は、通しの10人をカウントすると、30人しか入れない。
入れないといけないので、早く行く。連休中、落語を聴けなかったら上野のお山に行っても混雑しているし、どこにも行くところはない。
2時開場だが、1時過ぎに出向く。前回聴いた菊之丞師のときより早い時刻。
さすがにまだそんなに列はできてなかった。だが、私が並んだ直後にみるみる列が伸びていく。
この日は通し券が3枚しか出ていないらしく、長い列の後ろのほうの人も入れたようだ。
番頭の柳家かゑるさんが出てくるのが遅く、列を切りそこなったということもあったようだが。
いずれにせよ超満員。1時間並んで疲れた。

入場後、大きなカミナリの音が響き驚いた。

前座は入船亭扇ぽうさん。この人は初めて。少年ぽい風貌の人。
扇遊師の弟子である。弟子には「遊」の字を付けるのが普通。扇辰師なら、「辰」の字を付ける。
だが、「扇」がついている扇ぽうさん。師匠の前座時代の名前をもらっているのだ。
前座噺「元犬」だが、聴いたことのない、かなり独自の演出。師匠がこんな形でやらないと思うので、自分で工夫したのだろうか? ならすごい。
まず、犬から人間になったシロが、敬語を使わない。
なるほど、人間になったばかりで世の中のことを知らないシロ、敬語だけ達者なのも変だ。
シロが雑巾がけをしてピタッとはまるシーンの前に、人間のルールのわからないシロが廊下をびちょびちょにしてしまうという場面があった。なるほど、自然に雑巾がけが始まるわけだ。
そして、おもとさんは出てこない。結構不自然な「もとはいぬか」ではなく、ずっとナチュラルで古典落語っぽいサゲがついている。
前座なのにフラっぽいものも漂う。なかなか楽しい。いい噺家になりそうな人。

続きます。

作成者: でっち定吉

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