TV落語いろいろ(芸協若手メイン)

ネタがないときはテレビ・ラジオから拾います。
一本立ちするネタはなかったが、まとめて取り上げるとなかなか面白いかもしれない。
たまたま芸協の若手が集まった。

ちょっと前だが、4月17日に録れた番組。
「東京蕎麦族~TOKYO SOBA TRIBE~」だそうな。単発みたいだが、頭に「MUSIC・S」と付いていて、これが枠の名前なのかもしれない。
ミュージックとは何の関係もないけれど。

柳亭小痴楽、桂宮治のふたりが、立ち食いそばの実際のストーリーを高座で語るという番組。
いま、この二人が芸協を代表しているということだ。
私も立ち食いそば好きなのもあるが、これが意外なぐらい面白くて。
語っているのは、落語そのものではない。
落語の手法による登場人物の会話はちゃんと入れている。だが性質はというと、むしろ講談に近い。
地のセリフが極めて重要なのだ。
二人の噺家についての紹介は一切ない。

通常、番組のナレーションに該当するものを、噺家の地語りで置き換えている。
この手法はありそうで、なかった。
志ん朝なんか結構ナレーションしていた記憶がある。今でもたい平師がナレーションの仕事が多い。その方法論ではないのだ。
そういった、ナレーションらしく喋るのではなく、落語の語り口を使っていて、高座姿もずっと映す。
これが妙にハマっていた。途中で羽織を脱いだり。
今後もこういう番組、作られるんじゃないかな。噺家さんの語りにまかせようよと。
本物の落語にしようとすると、これは労力がすごいのだが、落語のエッセンスだけ使うという。

噺家の語りがストーリーを引き立てる。
前半、宮治師が語ったのは飲食未経験の立ち食いそば店主が、仲間の支えにより成功する物語。
後半、小痴楽師は、そばの修業をしていながら父のそば屋を継がなかった店主が、父の店「長寿庵」の名を復活させる物語。
まあ、人情噺だ。

先週日曜の早朝「演芸図鑑」。
演芸コーナーの1本目は「JP」。
5時20分からやっている番組で、JPが松本人志はじめ「すべらない話」のメンバーのモノマネをひとりでする。
そのシュールな状況自体に笑ってしまった。
これ、絶対制作側が遊んでるよね。フジテレビから、本物のオープニング音源を借りたみたいだし。
もちろん、JPの松ちゃんモノマネ自体は瓜二つで面白かった。

そして落語のほうは、瀧川鯉斗師。
いやあ、びっくり。下手すぎて。
強情灸を掛けてるのに、啖呵も切れてない。
鯉斗師、トリも取っているのにいいのかこれで。
暴走族を売り物にしてるのは不快感しかないが、そのことをもって、実力を勝手にマイナススタートするほど私はズルくない。
どこか一瞬でも褒めるポイントがあるならまだいいのだけど、本当にひとつもなかったよ。
それに驚いた。

なのだが、ブログに書こうと思って先ほどもう1回聴いてみた。
あれ、最初に聴いたほどは悪くない。
なるほど、オリジナルのクスグリを一切入れない(よく言うと、本寸法)高座なので、繰り返してしくじることはない。
音楽としてはよくできているかもしれない。これはいい。
鯉斗師を褒める人の気持ちぐらいまでは徐々にわかってきた。「カッコイイ」「色っぽい」等はビジュアルを説明しているだけだと思っていたのだが、それは言い過ぎだったようだ。
なにごとも偏見はよくないですな。そして、上手くなりやすい資質を持っている人だ。
というわけで、嫌いな噺家を克服したという話。だんだん、この人の目指すところまで見えてきた。
もともとこの一門自体好きなので、嫌いたいわけでもない。
もっとも、無観客で客の代わりをしているスタッフには全然ウケてない。ピンと来ないのだろう。それもまだまだわかる。

浅草お茶の間寄席では、三笑亭夢丸師が「馬大家」という珍しい噺。さすがのセレクト。
貸家に住まわせてもらうため、大家の大好きな馬にまつわる地名やエピソードを話していくという、シンプルな噺。
「好きな食べ物」を訊かれ、「うま煮」は正解だが、「馬刺し」は当然不正解で、こう答えると大家をしくじることになる。
まあ、「ざるや」の系統だ。こんな噺はちょこちょこある。
夢丸師のせわしない語りがとてもマッチしている。

二席目が、笑福亭羽光師。浅草お茶の間寄席ではヘビロテに入ったみたいだ。
ここで掛けたのが、「私小説落語~月の光編~」。
先日「上方落語をきく会」に出し、上方落語界を騒然とさせた一席である。
当ブログにも、「ぽっちゃり熟女のエキサイティングハリケーン」での検索訪問がありました。
お茶の間寄席経由では、まだない。
上方落語をきく会では照明を暗くしていたようだが、千葉テレビが入っているのでさすがにそれはできない。
エロ本自動販売機の噺なのだが、ただの面白い新作にはとどまらない。この人の噺を聴くと、青春のどろどろした澱を浄化される感覚を味わうのである。

三本目は打って変わって落語協会の重鎮、柳家さん喬師で、転宅。
おやと思ったのだが、「静かにしろイ」の前。
文蔵、白酒師などの開発した、「お菊に見つかってからもしばし食い続ける泥棒」という型を、さん喬師も採用していた。
弟子の喬太郎師からもらってきたんじゃないかと。
そうならば、すばらしく柔軟な師匠だなと。

作成者: でっち定吉

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