神田連雀亭ワンコイン寄席40(上・桂優々「動物園」)

6席行った4月はもうやめておこうかと思ったのだが、結局月末の神田連雀亭へ。
仕事する意思はあるのだけど、世間が止まってしまっているから私も結局、半分休みみたいなもん。
パッと行ってパッと帰る。

今日のトリは立川吉笑さん。
ほか桂優々、三遊亭仁馬というメンバー。
仁馬さんは、昨年の二ツ目の披露目で聴いて以来。いい印象を持っている。

たびたび当ブログでも取り上げている才人吉笑、なんと2020年、2021年と聴いていないではないか。驚いた。
満員札止め。
ぼやぼやしてたら入れないところでした。

前説の時間だが、テケツにいた吉笑さんが後ろから声を掛ける。
「時間になりましたが、仁馬さんと連絡が取れません。あ、今取れたそうです。こちらに着くのが12時だそうで。とりあえず最初の優々さんはいいとしまして、二番手には私が上がります」

困ったもんだが、この席ではしばしばこんなのに出くわす。
桂翔丸さんも、遅刻してトリになっていた。
今はなき早朝寄席(鈴本)でも、春風亭朝之助さんが遅刻してトリを取っていた。
11時30分というのは、噺家にとっては早朝なんでしょう。

ザワザワしている中で、まず桂優々さん。私服でいる姿を見ると、そこらのアンちゃんという感じ。
連休の本日は、満員でありがとうございます。
2日前に、柳家さん光さんから連絡があって、急遽この日に入ったんですよ、ラッキーでした。
さん光さんは権太楼師匠のお弟子さんです。師匠が体調不良なのでそういう用事かなと思ったら、単なるダブルブッキングだったそうで。

前回私が出た連雀亭は5人でした。
ちなみに吉笑さんは、今回3回連続満員がかかってるそうですよ。すごいですね。

優々さんが、急遽呼ばれたという話。
呼んだのは、先日私が初めて聴いたばかりの立川かしめさん。
かしめさん、あるとき前橋で会をやっていた。2部制なのだが、1部はお客さんが来なくて、急遽席亭とのトークライブを配信する。
それをたまたま、埼玉の自宅で見ていた優々さん。
かわいそうなので、頑張ってねとコメント付ける。
そうしたら、コメント読んだかしめさんから電話が来る。実はこの後の2部の出演者が来れなくなってしまいました。アニさん助けてくださいませんかと。
ギャラなんぼと口を出すおかみさんと喧嘩しながら、優々さんは新幹線に乗って前橋まで駆けつける。お客は3人だったが、よく笑ってくれた。
終演後、かしめさんがギャラを用意してくれている。お客さん3人でもらえないよと優々さん。
かしめさんが言う「補助金です」。ならと受け取る。

優々さん、マクラすごく面白いのだけど、なんだか言葉のひとつひとつにムダが多いのだよな。
噺の本編でないにもかかわらず、常に言葉を選び抜いて喋るのが達者な人が、次の吉笑さんなのだ。
ちなみに優々さんのWikipediaには、大阪・吹田在住と書いてある。
実際は埼玉で、奥さんと娘さんと暮らしているのだと。

ちなみに4月にらくごカフェで「優々白書」という会を開いた優々さん。
ゲストに今をときめく桂宮治師を呼んだのに、お客2人だったとのこと。
調べたら3日、つまり日曜の会なのに。
かしめさんの話を気に入り、あちこちでマクラとして掛けていた。この会でも披露したら、「オレにギャラ出さないということか」と宮治師に嫌な顔をされたそうで

演目は動物園。東京の噺家はそれほどやらないにもかかわらず、しょっちゅう聴く噺。
優々さんからは、前回も動物園を聴いた。またかよと思ったのだが、まるで違う形に発展していて驚いた。
落語というもの、ハウツー要素を入れると価値が上がるなと最近思うようになった。
粗忽長屋だったら、「いかにして自分の死を受け入れない熊の野郎を納得させるか」という要素を入れると価値が上がる。
夏泥なら、「いかにして泥棒から有り金巻き上げるか」だ。
そして優々さんは、「動物の毛皮をいかにして人間が着込むか」に焦点を当てる。
毛皮は重くて通気性が悪くて、熱い。
丁寧に足から着込んでみせることで、実にリアルな虎の皮がそこに生まれる。
笑福亭希光さんが、わりとこんなことを入念にやっていて感心した覚えがあるが、さらに優々さんは徹底する。
リアルな描写は面白い。

アホの男のアホ振りは、優々さんご本人が好きなのだろう、かなりそれっぽい。
ライオンとして登場するのは園長の「前田」。これは大師匠枝雀の本名。

ところで、優々さんの新演出、明らかな穴がある。
虎の皮を被って檻に入ったのち、アホ男はライオンを見つけ「おーい、よろしく」と声を掛けているのである。
このライオン、最初から園長が皮を被って入っているのでないと、整合性が取れないではないか。
まさか気づいてないわけはあるまいが。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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