ぎゅぎゅっと笑福亭づくしの会@横浜にぎわい座 その2(笑福亭生寿「近日息子」)

上方落語はどうしても料金高めと昨日書いたのだが、この会は3,200円なのでそれほどでもない。
ただ、同じクラスの東京の噺家の会だと、2,800円相当じゃないかなと。
セコイね。反省しましょう。一人のハズレもない、本当にいい会だったのでなおさらですね。
さらに言うなら、関西在住の上方落語ファンが羨む顔付けと内容ではなかったかなと。

にぎわい座はクレジットカードに加えSuicaも使えるのは嬉しい。世間ではごく当たり前のことなんですがねー。

笑利さんが見台と膝隠しを持ってきて、高座にセット。
二番手は笑福亭生寿師。メクリには生壽とある。
昨年のNHK2位の人だが、この出番は真打相当の意味だろう。芸歴15年。
NHKはそれまで出ていなかったが、最後の年だと思って出たと聞いた。

いちいち「東京なら真打」「東京なら二ツ目」と例えるのは面倒なのだけども、上方でも結構必要な概念である。
私も真打扱いして師匠の敬称を付けます。

駅弁から付いた名だったんですね。
この会のチラシ見ましたらね、演者の受賞歴が書いてあります。
笑利さんは初代三題噺王ですし、仁智師匠は芸術祭(優秀賞)です。銀瓶師匠も繁昌亭大賞ですしね(芸術祭優秀賞もある)。
鶴光師匠だって、ブルーリボン賞ですか?(実際はゴールデンアロー賞)まあ、なにか取ってるわけです。
私のプロフィール見たら、「宝塚歌劇大好き」。いえ、事実ですけどね。

私の受賞歴がないのは事実です。ただ、惜しいのがあったんです。
昨年のNHK新人落語大賞です。史上最高の48点での2位でした。
一席終わって、文珍師匠に褒めていただきました。なのにオンエア見たら、褒めていただいた部分カットされて、「近日息子という噺は」という部分だけ拾われてました。
NHKめ、受信料払うのやめたろか・・・関係者いらしたらすみません。

大会終わってから文珍師匠に挨拶したら、「君は技術だけなら優勝や。そやけど技術だけやないからなー」。

昨年のNHKは、事前情報がなかったので私は観ていて本当に楽しかった。
制作側の、採点前に優勝者を徐々に匂わせていく編集の作為を感じたのは事実だし、そのことは書いた。生寿さんの編集にも作為があったということだ。
本編をいじってるわけではないし、悪いこととは思わないけど。
ちなみに私も生寿さんが準優勝の評価でした。

優勝したのは女性の桂二葉さんです。
私二葉さんとは因縁ありまして。以前鶴橋の居酒屋で友達と飲んでたら、隣にいた人が落語家だと知って話しかけてきます。
「私二葉さんの大ファンなんです。二葉さんに会うことありますか」
一門が違うのでしょっちゅう会いはしませんが、会おうと思えば会えます。
「じゃあ、二葉さんに会ったら『応援してます』と伝えてください」。

二葉さんは、NHK戴冠で、キャリアからすると異例だが繁昌亭でトリを取った。
生寿師はその裏で、神戸喜楽館で中入り後の出番をもらっていた。
これだって立派なものなのだが、すでに噺家が何人も出た後で、お客さんは休憩の場だと思っている。20人程度のお客の前で、1週間スベり倒しました。
あと2点取れていたら、私が繫昌亭だったのに。

愚痴っぽい生寿師だが、東京の私から見てすら十分な売れっ子モードに入っている。
当人も売れている実感がひたひたとあるんでしょう。
NHK新人落語大賞は最も格の高い賞レース。であれば、惜しい2位の人も売れないといけないよね。そうなってるようなのはいいことだ。

その際に披露した近日息子をやります。客は拍手。
ただし、二葉さんに負けた内容ですからね。先日もお客さんに、「なるほど二葉さんにかなわない内容ですね」って言われました。
ここで本編に入ろうとして、「思い出したんで喋っていいですか」。
NHKで一緒だった、春風亭昇也師。今度真打になりましたね。
先日東京でご一緒したのですが、昇也さんを師匠と呼ぶお客さんが、私には「生寿くんも頑張ってね」。
先輩やっちゅうねん。せめてさん付けにして欲しかったです。
生寿師は語らないが、上方落語家は、東京の階級制度がこういうときにうらやましくなるみたいですね。

さて、持って生まれたフラを持つ二葉さんに負けた生寿師、これを機に一皮剥けたのだと思うのである。
技術以外のものも落語に持ち込まないといけない。
そんなすばらしい近日息子で。感動しましたよ。

マクラだけで1日分埋まってしまいました。本編は明日に

作成者: でっち定吉

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