亀戸梅屋敷寄席25 その2(三遊亭ぽん太「道具屋」)

スーパー前座が完璧な高座をこなすと、二ツ目は大変だ。
うっかりすると潰されてしまう。前座がやたら上手いとそんなこともしばしばあります。
だが、二ツ目のぽん太さん、堂々の高座を魅せた。感動しましたよ。

黒紋付に袴姿。頭は坊主。
今度兄弟子の好吉が好一郎で真打になります。
来月、両国で10日まで披露目があります。亀戸では9日ですね。ぜひお越しください。
噺家は出世して名前が変わることがありますね。
私も前座の頃は好也という名でした。二ツ目になってぽん太です。
ぽん太という名前は、私は気に入っているんです。初代が三遊亭圓朝の弟子です。
真打になってもこの名がいいですね。
でも、真打になった際に名前を変えた方がいいと言われたら、その頃、6年後ぐらいですか、「円楽」が空いてるんじゃないかと思いますので、それで。

ツカミばっちり。
そしてずいぶんとスピーディに喋り、言葉のキレがいい。こんな方法論の人だったっけ。
ぽん太さんは圓朝にゆかりのある名前なので、圓朝モノも手掛けている。
好一郎師の披露目、亀戸では7月にやるかと思ったら6月に1日だけみたいだ。
好楽師は披露目の話をしなかったので、ぽん太さんがしてくれてよかった。

与太郎なんて人がいますと「酒の粕」へ。
意外とこの小噺は聴かない。末広亭だと、「からぬけ」の前に振っているかもしれないが。
そして本編は道具屋。
20ははたち、じゃ30はイタチか。こういうクスグリをサラッと入れて、いい感じ。

最近、あまり聴く噺ではない。与太郎モノが廃れたわけではなく、理由はまったくわからない。
母親が泣いているので、「女泣かせた」と妙に嬉しそうな無職の与太郎。

ぽん太さんのせいじゃないのだが、「ど」のつく仕事と道具の仕込み、店の展開までのあたりでちょっとうつらうつらしてしまった。
まあ、抜けた部分としては最も差支えはない。そういうことにする。
残りの部分がよかったから。

火事場で拾ったのこぎり、しょんべんできないひょろびりの股引ときて、名古屋っぽい田舎紳士。
短刀見せろのあたりはたっぷり、いいかたち。
短刀は木刀だから抜けなかったが、ここから聴いたことのない展開に進むので、驚いた。
「値は」「ズドーン」なんて珍しいサゲだって聴いたことはある。だがこの展開は聴いたことがない。
ただ、かろうじて知ってはいた。
以前熟読した「桂平治の噺の穴」に載っていたからだ。20年前のWebサイト。

神田連雀亭では、「珍品好きなので馬久アニさんと気が合います」なんて語っていたぽん太さん、道具屋ぐらいでは普通だなと思ったのだが、さすがだった。
田舎紳士が、汚れた笛を拭うため、中に差した指が抜けなくなってしまう。
仕方ないから、お買い上げいただこうと。紳士も応じ、カネ払うから家まで来いと。
わしのうちはここだから、窓の外で待っておれと紳士。
「付き馬」や「お文さん」みたいな、ついてくる人をまく噺なのかと一瞬思ったが、そこはちゃんと紳士の家だ。
遅いので窓から与太郎が様子を覗くと、まだ紳士は笛から指を抜こうと懸命。
与太郎が、そんなのじゃ抜けませんよと声を掛けるが、テメエの顔が窓に挟まってしまう。「窓ごと売ってください」。
このビジュアルが見事だ。

前述の「噺の穴」では、笛のくだりは「値は」「ズドーン」のさらに先だという。ズドーンのくだりは省略。
笛のくだり、誰に教わったのだろう。実はたくさん噺を持ってる、師匠かな。
見事な一席でした。
ぽん太さんももっと聴こうと思う。圓朝ものも含め。

三遊亭神楽師は5年振りぐらいみたい。ブログ内を「神楽」で検索すると「太神楽」が、「神楽師」で検索すると「太神楽師」がそれぞれ出てくるのでよくわからぬ。
今日はおかげで大盛況ですが、いつもこうじゃありませんと。

この高座でまたしても寝てしまう。
寄席でしばしば寝てる私。普段はノンレム睡眠だが、この日はレム睡眠に入ってしまい、体が休憩して椅子からずり落ちそうになってしまう。
しかし脳は起きているので、噺はだいたい全部覚えている。へんな状態だ。
先に道具屋が出た前提を踏まえて、道具屋のマクラを続けるのでおかしいなと思った、それも覚えている。
瀬戸物屋のくだりがあったかどうかは記憶にないが、掘り出し物の甕を川の水で洗うのは覚えている。
終盤はおおむね覚えていた。「さっきまでコイがへえっていた」がサゲ。

仲入り休憩は短かった。缶コーヒー飲んで復活。
三遊亭朝橘師も、期待している人だが久しぶり。
マクラをスピーディに喋っていく。
この会場は音響がよくて喋りやすいんです。ただその代わり、外にまで音が響いているというのがね。
たまに外の休憩所でコーヒー飲んでるおじさんとかいるんですけど、あれ聴いてるんでしょうか。

中途半端ですが明日に続きます

 
 

作成者: でっち定吉

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