柳家小せん独演会@棕櫚亭(上・初めての棕櫚亭)

月が替わった6月1日、〆切も片づけたので出かけます。
以前から行きたかった、読売ランド前駅の駅前にある、棕櫚亭。棕櫚はしゅろ。
古民家をリノベーションした集会場である。
会場が棕櫚亭で、会の名は生田寄席。四半期に一度の落語会。

読売ランド前駅は、古今亭駒治師の「遥かなるよみうりランド」の舞台である。あいにく未聴なのだが。
前日に予約を入れたので、1,800円。
電話したらとても親切で、「お越しになったことは? 初めてでしたらね、南口出たマクドナルドの前に棕櫚亭の案内が出ています。小田急です。京王よみうりランドじゃありませんので」。
京王よみうりランド駅は、よみうりランドがある山の裏側であり、間違えたらもうどうにもなるまい。
間違えた人、いるんでしょうね。

棕櫚亭は昨年も扇辰師の会について問い合わせたのだが、折からのまん防で中止になっていた。
この日は柳家小せん師の会。大好きな師匠だが、2021年は聴いていない。できれば四半期ごとに聴きたい人だが。
確かに、駅前のマクドナルドの横に幟が出ている。ここから延びる路地を通り抜けると川が流れていて、橋を渡ったら棕櫚亭。
実に近い。

次の歌武蔵師の会、それから11月の扇辰師の会の案内が出ている。
昨年は橘家圓太郎師も出ていて、検討した覚えがある。
ここは基本的に落語協会の噺家さんを呼ぶようだが、1月には古今亭寿輔師も出ている。
着いたら、二ツ目の柳亭市若さんが出てきた。
驚くこともないけど、驚いた。ここは地元なんだそうで。
しかし生来の粗忽ものの私、時間を間違えていたのだった。1時間早く来てしまっていたのでマックで仕事してから再出撃。
改めて会場に向かうと、市若さんが、柳家ひろ馬さんと一緒にこちらにやってきた。恐らく、駅に小せん師が着いたのだろう。

40人制限だが、満員札止め。
市若さんとひろ馬さんが客席後方で、太鼓を叩いている。
前座さんはもうひとりいた(たぶん見習)が、誰かわからない。3番弟子かもしれない。

一目上がり ひろ馬
盃の殿様 小せん
(仲入り)
風邪の神送り 市若
ガーコン(通し) 小せん

 

前座は小せん師の2番弟子、ひろ馬さん。
兄弟子のあお馬さんと同様、柳家だか鈴々舎だかわからない名前。まあ、師匠は前名鈴々舎わか馬だし。
後で調べたらひろ馬さんは、5月1日に前座になったばかり。ただ、弟子入りしたのは2019年7月。
3年も見習務めるのは珍しい。ここまで長いと、コロナ禍で楽屋に入れないなどではなく、小せん師の考えあってのものと思われる。
ひろ馬さん、立派な鼻梁の持ち主。

さすが長い見習い期間を経ただけあり、じつに堂々としている。
八っつぁんが隠居を訪ねてくる。道灌かと思ったら、雪折れ笹が出てきて一目上がり。
前座になったばかりなので変なクスグリを入れたりはせず(当たり前だが)、しかしながら賛(3)、詩(4)、悟(5)と一目ずつ上がっていく噺の展開で、じわじわウケる。
実にいい前座さんだ。
かなり上手いと思うのだが、最近褒めている前座たちとは闘っている土俵が違うので、単純比較はできない。
上手い前座さんというのは、思わぬ工夫があり、つまりどこか明確に上手い点が見えるわけである。
いっぽうひろ馬さんの落語は、あえて徹底して「前座らしく」演じている。こうなると「前座のわりに」という評価はできないのだ。
ひろ馬さんは、前座らしく演じることで噺の肝を最速で手に入れ、二ツ目になったら即ブレイクするかもしれない。
ただ前座の間に巡り合うとずっと、今日のような評価になると思う。

気持ちのいい一席でした。さすが小せん師匠、弟子の育成もさすがだ。

主役の小せん師登場。
歴史のある棕櫚亭に、初めて呼んでいただいたと。へえ、そうなんだ。
顔付けからすると、レギュラーメンバーみたいな人だと思うのだが。お隣横浜が地元でもあるし。
実にいい雰囲気ですねと会場にヨイショ。まあ、雰囲気がいいのは間違いない。
窓を開けて、風が通り抜けるのが心地いいですねと小せん師。

一席やって、仲入り後は柳亭市若さんが一席やりますとのこと。地元期待の星ですからね。
メクリが用意されてなかったところを見ると、市若さんは見学に来て、よかったら上がったらと言ってもらったのだろう。
そしてちゃんと着物は持ってきているという。

落語ですからボーッと楽しんでくださいといつものとおり。
笑っても笑わなくても、終わるときは一緒です。ならまあ、笑ったほうがお互いいいのではないでしょうか。
「笑ってください」と笑いを強要している若手には、小せん師の穏やかな声掛けを見習って欲しいものである。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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