国立演芸場19 その1(桂南太郎「狸札」)

春風亭かけ橋まつりが続いているので、これ幸いと朝のブログ更新をお休みしました。
想像通り、昼を過ぎてもずっとお客さんが多い。ちゃんと更新した日より多いぐらい。
それでもまあ、日曜日は現場に行ってきたので律儀に出してまいります。
寄席がはねた後、ガーデンテラス紀尾井町の成城石井内のイートインで書いてます。

狸札 南太郎
かぼちゃ屋 鯉丸
浮世床(夢) 小痴楽
小すみ
唄入りお血脈 文治
(仲入り)
春風亭柳雀真打昇進披露口上
虱茶屋 小助六
粗忽の釘 鯉昇
正二郎
御神酒徳利 柳雀

 

柳雀師の披露目、一日来たいと思っていた。
落語協会も芸術協会も、披露目といえば私は国立。安いからである。
東京かわら版の割引もちゃんと使えるし。
7月上席の国立にしようと早くから考えていたら、鈴本の喬太郎師と被っちゃった。
鈴本に行けるかどうかは不明だが、とりあえず国立のほうに。
国立の柳雀師は、7日が私好みのいい顔付け。蝠丸、遊雀、鯉八といった人が出る。遊雀師は入院しているらしいが、この日から復帰するみたい。
まあ、この3日日曜日もなかなかいいです。

真打に昇進前の柳若時代、3月に「堀之内寄席」で御神酒徳利を聴いた。
なかなかいいデキで、披露目でも出るだろうと思っていたら、自分の来た日に見事に被っちゃった。まあ、よくあることさ。

半蔵門でお昼を食べる。
この街は日曜は休みばかりだが、カレー屋さんが開いていた。
ナンのお代わりを勧められたのだが、断る。眠くなるし。
だが、相手はインド人(実際はバングラデシュ人やネパール人が多いそうだが)。私の断る意思は正しく伝わらず、お代わりナンが来てしまう。
これは私が悪い。落語ばっかり聴いてると国際人にはなれません。
この日の特製、長芋とチキンのカレーは大変おいしかったですがね。
ともかく、いらないナンを食べていたので国立に着いたのがギリギリ。前座が上がった直後に席に着く。

前座はなんと桂南太郎さんだ。実にラッキー。
この人は今月のかけ橋さんに次いで、来月二ツ目昇進。
「来月から二ツ目です」なんてここで言ってもいいのだろうけど、余計なことは言わない。遊雀師の会で言ってくれたおかげで、私はかけ橋ネタが作れたんだけども。

狐・狸は人を化かすとマクラを振るが、マクラからなんだか面白い。
この人は、「天然の面白い自分」を高座の上から冷静に観察しているらしい。
作り込んで面白いのではなく、天然の面白さをいじらずそのまま出せば面白い、そんな高度な判断が働いているのだ、きっと。
二ツ目になって面白さが薄れてしまうようなことはないと思う。

狐は襟巻きに化けて、女性の顔の隣で並んでいる。女性がひきたっていいとそんなベテランみたいなマクラ。
狸札はつい最近、入船亭辰ぢろさんで聴いたばかりなのだが。でもやはり面白い。
冒頭の「タヌキデス」にいきなり変な声が入っているし。変な声のシーンに変な声を被せるのだ。

たぬきの八畳敷でもって一緒に寝ますかなんてクスグリは珍しめ。
タン大出てるのはタヌキ本人でなくて親父だった。
でも、クスグリだって別に多いわけじゃない。ストーリー的にもストレート。
前回衝撃を受けた「茄子娘」に比べれば、だいぶ普通。
でも演者が楽しいので、あらゆるシーンが楽しい。実際、客もよく笑っていた。
実に楽しみな人である。

余計なお代わりのナンが徐々に効いてきて、実に眠い私。
カレー自体が眠くなるみたいだけども。
どこかで寝てしまうかなと思っていたが、熟睡はしなかった。しかし次の二ツ目、鯉丸さんで意識が途切れ途切れである。
鯉丸さんは、新真打の弟弟子なので顔付けされているのだ。
半分寝てるヤツの言うことなのだが、鯉丸さんはずいぶん上達しているようである。
瀧川一門でも、傳枝、鯉橋といった本格派の兄弟子を追いかけているらしい人。もともと達者だけど、久々に聴いたらピタッと古典にハマる感覚。

とはいえ鯉丸さん、自分の名前を言う段でいきなり噛んでしまう。どういうことだ。
でもちゃんと取り返していたから偉い。次の小痴楽師みたいな人なら噛んでも(噛んでいた)全然平気なのだが、本格タイプの人は取り返しづらいのだけど。

演目はかぼちゃ屋。与太郎が出るから金明竹かと思った。
落語協会だともうちょっとでかいネタになり、寄席の二ツ目は出さない気がする。
「30はイタチか」をサラッと流して言い、こんなところでウケを狙わないセンスがすごく好き。
ウケようとしなければ、それこそクスっとする貯金ができるわけだ。まさにクスグリというだけあって。
与太郎が路地で転回できなくなって右往左往する場面は、慌てっぷりがリアルでこれもいい。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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