国立演芸場19 その2(柳亭小痴楽「浮世床」)

続いて本日の大きなお楽しみ、披露目の口上の司会である柳亭小痴楽師。
この国立定席は、この真打の出番が成金メンバーで統一されている。すべて口上の司会込みの顔付けの模様。
昇太会長の方策である、若手強化の一環でもあろう。

ここ最近の小痴楽師、まったくもって凄みがある。浅草お茶の間寄席とか、もっぱらテレビで観てるんだけど。
おなじはなし寄席の「桃太郎」も最高だった。
小痴楽師、今後考えられないぐらいの伸びを見せるに違いない。
笑点特大号の若手大喜利でも実にスムーズだった。タレント性も抜群。
世間には、「二世=ダメ」なんて数式を勝手にこしらえてるパーも多々いるが、そんな思い込みをアッサリ覆す存在。
宮治ブームの続いた後だが、今となっては成金で実は一番上手いのが小痴楽師じゃないかと。
今月の新宿下席では夜のトリ。これにも行きたい。
席亭の評価もうなぎのぼりと思われる。
単独で真打に上がった頃を振り返ると、勢いあって若々しくいいけども、そこまでだなと思っていた気がする。
ファンも業界にも、そんな見立てがあったかもしれない。別に当時評価が低かったということではないが、天井を見ていた気がするのだ。
今や青天井。

20年後には痴楽になったうえで、芸協の会長に就任してるんじゃないか。ふわふわした感じがいいんだ。
成金メンバーの誰かが副会長として支えていそう。それこそ鯉八、柳雀、昇也あたりが。

例によって、「あちらにメクリが出てますが、小さく痴漢を楽しむと書いて小痴楽です」。
今日はお着物の女性もたくさんいらっしゃいますが、きっとずいぶん早起きして身支度整えてきたのでしょう。アタシは起きて1時間しか経ってません。
まだ目が覚めてませんので、今日はイマイチかもしれません。この後アタシ、池袋に行きますのでそちらではいい感じになると思います。
この7月上席国立には思い出があるんです。
入門するときに、この後出る文治師匠の元に見学に来たんです。
文治師匠に入門したのに、今は楽輔のところにいるんですけども。一体どういうことなんでしょう。

この世界は一日でも早く入ったら先輩です。
柳雀さんは一緒に前座をやった仲間ですけど私より17も年が上ですからね。入門した時、今のアタシよりすでに年上だったんですから。
たまに酔っぱらうと柳雀さん、「俺はアニさんが生まれた頃もう大学受験してたんだ」なんて言うんですけど、知らねーよ。
大学はとっとと行ってください。

本当に1時間前に起きたかどうかは別にして、目が本当に覚めてないらしくマクラで一度、本編で一度噛む小痴楽師。
どちらもしっかりアドリブでギャグにする。

本編は浮世床(夢)。賑やかで披露目にはいい噺。
披露目の定番、一目上がりでも出すかと思っていたのだけど、あれは通常営業用らしい。
居眠りしている半公を起こす若い衆。
半公は小痴楽師がそのまま落語に出てきたような威勢のいい造形。

半公このやろ、テメエもてやがんだな、二丁目行ってろとこれは文治いじり。

色っぽい半ちゃんの芝居の思い出、実にもってウキウキしてくる。
官能的なことばの羅列に、寝ていた私の頭も徐々に冴えてくる。
「にこり、にこりでしこり」なんて別に面白くもないクスグリが、小痴楽師の語りによって生命を吹き込まれるのだ。
そして濡れ場にかかるが変ないやらしさはなく、あくまでも瑞々しい。

半公の話が夢であるとわかったとたん、客席がドッと湧いたのには驚いた。
初心者が多く、噺を知らないからと言ったらそれまでだが、そこまで引き込まれていた話にオチがつき本当に面白かったわけである。
枝雀の言う緊張と緩和の最適な例。
いっぽうでは文治師との師弟関係エピソードを知っている客で、本当の初心者とも思えない。噺を知らないモードで聴ける器用な客なのだろう。

話それるのだが、「昭和元禄落語心中(助六再び編)」のアニメ第一話に、浮世床が出ている。
ところが放映後からずっと、Wikipediaではこの劇中の噺が「なめる」になってる。当時の間違ったまとめが固定化されているのだ。
私のブログでも、放映直後から「浮世床」って書いてるんだけどもな。なめるは夢の噺じゃないっつうの。
またずいぶんと難しく間違えやがって。

最近ブレイク中の桂小すみ先生は初めて高座を聴いた。
尺八によるホイットニー・ヒューストンI Will Always Love Youは大ウケ。
小痴楽師が長くやったので巻き気味。

まだまだ始まったばかり、白熱の披露目、続きます

 
 

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 小痴楽師いいですよねぇ。
    二つ目時代からキレのいい江戸弁の啖呵が好きで機会があれば聞いてました。地方在住にも関わらず披露目も池袋1回、末廣亭2回いったし。
    口上での司会の宮治師とのプロレスも面白かったし文治師の口上もほっこりしたし。
    今の二つ目・前座も小痴楽師には頭が上がらないという話も聞きますし今後の芸協を引っ張っていく人なんでしょうね。
    東北の方へも来てくれないかなぁ。

    1. 小痴楽師、好き嫌いではなく「いい」と言ってくださる方がいて嬉しいです。
      全国で近いうちに、落語協会のビッグネームと一緒の会があるんじゃないでしょうか。

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