久々の新宿末広亭へ。
でっち定吉は先日、「新宿末広亭がなくなったっていいじゃないか」って書いてたじゃないかって?
別に嫌ってるわけじゃないわさ。
行ってよかった。最高峰の落語が楽しめました。
もともと演者の持ち時間があまりにも短い末広亭に、数年前まで不満もあったところ。
しかし1周して、この短さがクセになるななんて。
長いのがよければ池袋や国立行けばいいので。
そして、お客さんも実にいい。
芸協の披露目と被り、鈴本上席の喬太郎師に行けなかった。
幸い、次の中席も末広亭夜席でトリ。この人のトリは、私は末広亭では初めて。
膝の痛いキョンキョン、前日まで釈台使っていたそうだが、この日は通常通り。ただしあいびきは使う。
三連休の翌日で、喬太郎師の席とは思えない少人数。雨降りでもあり、夜席開演時はスカスカ。
その後満員になるかと思ったらそうでもなかったが、通常レベルからすれば十分盛況ではある。
喬太郎師、前日は「孫、帰る」を出したらしい。新作の人情噺。
他に当席「お札はがし」「宗悦殺し」など出しているらしい。ゾクゾクするね。あとは居残り佐平次など。
この日勝手に期待していた演目は、古典だと「品川心中」「死神」。
新作だと、「母恋くらげ」。
蓋を開けると、古典の人情噺「心眼」だった。
あ、検索で当ブログがトップの演目。1年前に池袋で聴いたばかりの人情噺。
最近実によくあるようにカブったが、しかしまたパワーアップしていて、さらに素晴らしい内容でした。
この日のお客さん、多少その記事にお越しくださった模様。
道具屋 | 左ん坊 |
浮世床(本) | さん光 |
ストレート松浦 | |
演題不明(家庭菜園) | 志ん五 |
つる | 圓太郎 |
ジキジキ | |
お菊の皿 | 左龍 |
たいこ腹 | ひな太郎 |
翁家社中 | |
天狗裁き | さん喬 |
(仲入り) | |
夢の国コブシーランド | 小せん |
風藤松原 | |
岸柳島 | 扇生 |
銀河の恋の物語 | 小ゑん |
正楽 | |
心眼 | 喬太郎 |
クイツキは本来、百栄師。コロナ感染で休演し、代演は小せん師。
あと、しん平師の代演が、扇生師。聴きたかった人なので嬉しい限り。
前座は期待の左ん坊さん。
左龍師の弟子だから亭号は柳亭だが、「さん坊」は喬太郎師が前座時代に名乗っていた由緒ある名だ。
昨年二度遭遇し、三度目。もともと上手い人がみるみる上達している。
さすが柳家らしく、力をまったく入れず実に聴きやすい、楽しい道具屋。クスグリの多い噺だが、すべてサラッと。
ウケたくて、「木刀ですから」のあたりに力を込めて自爆するような前座とはまるで違う。
語る自分の姿を客観的に見られているのがすばらしい。
小はぜ、小もんといった柳家の先輩のように、このままのスタイルで出世していくと思われる。
ストレート松浦先生は、末広亭だから短い。ディアボロとお手玉、デビルスティック。シガーボックスはなし。
今日のお客は手を叩くのが早く、「あの、回ってますよ」は出せない。
海外のサーカスにいたという昔話は初めて聴いた。
サーカスで修業した結果、それほどサーカスが好きでないことがわかったのだと。好きじゃないというより、あれはすべての演目が命がけなので。
真っ赤な着物に黒い羽織の派手な志ん五師はマクラ長め。
貸し切り屋形船で、マイクスタンドがなかったので関係者の女性が手で持ってくれた話。
バーベキュー会場で、トラックの荷台でもって誰も聞いてない子別れを演じた話。
そして新作。最近作ったようで、調べたが演題不明。「家庭菜園」とでもいうのかな。
泥だらけになって帰ってくる亭主をかみさんが家に入れてくれない。
畑仕事して帰ってきたんだよと亭主は言うが、あんた別に農家じゃないでしょ、プランターで野菜育ててるだけでなんでそんなに泥だらけなのよ。
古典落語の夫婦みたいで面白い。
タクシー運転手のクセに一丁前の農家みたいなことを言う旦那が気に入らないかみさん。畑もないのにトラクターまで買いやがって。
亭主が作ったゴーヤ棚のおかげで、陽が当たらなくなって洗濯物が乾かないと不平たらたら。
サゲ付近は忘れてしまったが、楽しい新作。
志ん五師は古典もやる人だが、やはり新作に期待されて顔付けされているのでしょう。寄席で聴くとだいたい新作だもの。
ハイレベル末広亭、続きます。
(追記)
小ゑん師が例によりツイッターでネタ帳をアップしてくださっている。
志ん五師の新作は「素人野菜」だそうな。
ちなみにネタ帳には「道具屋」じゃなくて「道具や」と書いてある。これはまあ、どちらでもいい。
「道具や」という表記も落語っぽくて好きだけど。
先代文治によると、店を持っているのが「屋」で持たないのが「や」(例、豆や)だそうな。