子供を落語好きにするには

夏休みらしいネタにしましょうか。
7月8月は、こども向けの企画がたくさんある。
私も息子が小学校低学年の頃に鈴本のおやこ寄席に連れていったものだ。今年はないようですが。

うちの子は高校生だが、おかげさまで立派な落語好きに育ちました。
数ある趣味のうち、落語がいちばんというわけではないけれど。
もともとテツであり、最近は競馬好きになってしまった。それでも落語もかなり好きなようだ。
落語好きに育てようと思ったことはない。だから「子供を落語好きにしたい」という要望があるとして、わかるような、そうでもないような。
それでも、親子で好きなものが共通していれば楽しいものではある。
あるいは、孫を落語好きにしたいと思う爺さん婆さんも多かろう。

「落語を聴くときっと賢くなる」と余計な期待をしている方もいるのでは。
落語好きより、落語に勝手に憧れている人に多いかも。
これはどうだかわからない。
「落語好きが賢い」という前提が世で一般的ならわかるが。
賢い落語好きも頭の悪い落語好きもいますからね。一般社会とまったく一緒。
「まあ知的な趣味をお持ちで」とは言ってもらえるかもしれないが。

落語好きの子供は、芸術的感性を身につける、そんな期待もあるかも。
ただ、たぶんこれは期待するだけ無駄であろう。
子供の喜ぶ落語なんて、前座噺か、そんな類が大部分。
落語が好きになったとして、大人になるまで人情噺はわかるまい。「子別れ」「藪入り」あたりを除き。

とりあえず、子供が落語が好きになるとだいたい「寿限無」の長い名前を覚える。
寿限無の名前だけでは、「うちの子は記憶力がいい」といって喜んでいてもダメ。
まあ、覚えないよりは覚える能力はあって損はない。
噺家になったのはいいが、噺が全然覚えられない困った人もいるらしいから。
もっとも、金明竹の言い立てを覚える子供はいない。
黄金餅の道中付けを覚える子供がいたら、変態。

私自身の経験で言うと、子供を落語好きにするのはわりと簡単だ。
まず、親が落語好きだということ。これは必須。
親が好きでもないのに、子供を落語好きにしようなんて人はいないとは思うけど。

親が自宅で楽しんでいれば、子供も勝手に興味を持つというものだ。
ちなみに笑点は見せたほうがいいと思う。笑点嫌いの落語ファンも多いだろうが、いきなり落語からスタートというのもね。
親が五街道雲助師が好きだからってこればかり聴いていても、子供がそうそう好きになるとは思わない。この時季掛かる「お菊の皿」ぐらいだろうな。
まあ、そんなエリート子供、いたらそれはそれで楽しいが。

子供に与えるのなら、やはり「えほん寄席」がいいでしょう。
うちの子もこれで好きになりました。
DVD買ったのではなく、当時NHKで流れていたので、録画したのだ。だいたいコンプリートできたと思う。
一流の噺家が5分で落語を語り、そして楽しい絵もついている。
上方落語が多く含まれているのもいい。
絵師も一流の人ばかりだ。

面白いからDVDを与えておけば子供は勝手に見るはず。
こんなことで下地ができていれば、小学2年生ぐらいから寄席にも連れていけるはず。
寄席はちょっと時間が長いから、国立演芸場の仲入り後なんてどうでしょうか。
3割引きです。子供料金の割引はないけれど。
トリの前、ヒザの師匠はマジックでもいいが、太神楽だとさらにいいと思う。
ボンボンブラザースなら最高。
紙切りもいい。子供だとわりともらいやすい。ポチ袋を用意してやって、子供に祝儀の渡し方を教えるのもよかろう。

落語に慣れたらお勧めは池袋演芸場。
池袋自体いい寄席だが、ここは小学生1,000円で入れる(親とセット)のだ。安いですよ。
池袋では結構子供を見かける気がするな。そして、退屈そうにしている子などあまり見ない。
うちの子も小学生のときに連れていき、さん喬師に話しかけてもらった。

噺家さんの幼少期の噺を聞くと、小学生の際から自分自身で落語に興味を持ち、親に頼んでちょくちょく寄席通いをしていた人がいるので驚く。
三三師とか。
まあ、親が勝手に期待したところで、みんなが三三にはならないと思うけど。

作成者: でっち定吉

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