今月は珍しいことに、月末まで落語会の予定がぎっしり詰まっている。
ちなみにビンボー人の私にありがたい、安い席ばかり。無料もある。
全部行けるかどうかはわからないけど。
今日もまた、安いワンコインへ。
トリの鷹治さん、それから文吾さんは私の評価がすでに確立している。安心して聴ける。
トップバッターの、立川志のぽんという、初めての人だけ正直不安。
外れても、2人よければまあいいだろうと思う。
ぐずつく天気。私はあまり、雨だからやめとこうという思考回路がない。
客6人。
前説の文吾さんは、特に面白いことは言わずに諸注意のみ。
のめる | 志のぽん |
五人廻し | 文吾 |
能狂言 | 鷹治 |
志のぽんさん登場。
二ツ目のくせに妙にベテランっぽい人だ。
今日は客席若いですね!とヨイショ。いつもはお年寄りばかりですよと。
どっしりしてはいないのだけど、客のあしらいが軽く、負担を感じさせない人だ。
第一印象非常によし。
細面の顔も相まって、軽妙な語りは桂伸治師っぽい。
そこに、ウエストランドの井口を被せると志のぽんになる。声も井口に似ているが、別に毒は吐かない。
扇子を見せる。これ、楽太郎時代の円楽師匠のなんです。お客さんからもらいました。
今はなき楽太郎です。あ、もちろん名跡がってことですよ。
師匠、志の輔に付いて、かつて新幹線の駅で楽太郎師匠に会ったことがある。
楽太郎師は、全身真っ白のコーディネート。ゴルフ焼けで顔が黒い。そこに、全身真っ黒の志の輔が「おはようございます」(似てるモノマネつき)と挨拶する。
大変怖い遭遇であったと。
私のクセは、話し始めるときに「まあ」が頭に付くことですね。それから、自分に自身がなくて、すぐ「一応」が付くんです。
「まあ一応」これが私の口グセです。
本当に師匠に注意されてそう。「自信のなさ」もすでにここに至るまでにうかがえる。
立川流は無意味に厳しそうだが、落語協会だったらこんなムードの噺家たくさんいるのにね。
売れっ子でもわさび師がそんな感じ。きっとこれから売れる花いち師とかも。
クセの話から「のめる」。
普通の骨格なのだが、会話のほどが実によく、聴きやすい。
二ツ目だと変にセリフを強調する人がいるものだが。とにかくナチュラル。
外へ向かわない方法論を確立しておいて、さりげなく、しかし地味に破壊力のあるクスグリを入れてくる。
隠居に相談し、糠まみれになって熊さんの家に出向く八っつぁん。
糠を頭に塗って、文蔵師匠みたいにしてみようと。
「今日、文吾さんいるから文蔵師匠の名前出してみたけど、あんまり反応ないね。(袖に向かって)ごめんなさい」。
結構面白かったのだけど、なにしろ外に向かわない人なので、内輪で完結してしまう。それがまた面白い。
大根百本詰まろうかねと熊さんに水を向けたが、敵もさるもの。
あべこべに、「今から妹の婚礼だから」と出かけようとして、八っつぁんから1円巻き上げる。
なんと熊さん、「妹なんていねえよ」。あ、お前さん一人っ子だったなと思い出す八っつぁん。
それどころか、「かかあ羽織出せ」と言っているのに、かみさんすらいない。実は独身の熊さん。
こんな設定初めて聴いた。
そしてつくづく感心するのは、この設定自体をいじったギャグを「どうだ!」と出すのではないこと。
なにしろ内向きの人なので、実にひっそりと出してくる。
万人に響く芸ではないかも知れないが、私にとっては、実によく響く。
すっかり気に入ってしまった。トリで出たらまだどうかわからないけども、開口一番で前座噺を出す今日の仕事には得難い人だ。
そしてその仕事ができる以上、まだ飛び道具があるかもしれない。
自分のキャラがよくわかっている人だという印象。おどおどしているのをキャラ化してしまえば売り物になる。
後で調べたのだが、志のぽんさんはなんとキャリア17年。
前座が長かったようだ。師匠は最速で二ツ目になった人なのに。
筑波大学を実に院まで出ている。オチケン出身。
ベテランぽいのも無理はなく、すでに45歳だ。これからベテランぽい芸を違和感なく出していくかもしれない。