鶴見さるびあ寄席の春風亭かけ橋(上・祝二ツ目昇進)

今月は落語会がたくさんスケジュールに入っている。計画性のない私にはとても珍しいことである。
拝鈍亭に続く第二弾は、鶴見のさるびあ寄席。話題の春風亭かけ橋さんが500円で聴けるありがたい会。
当ブログはこの人のおかげで随分集客したのだから、足を向けて寝られない。でも、昇進後初めて。

鶴見のサルビアホールに来るのは二度目。前回は3年前の、さるびあ寄席特別版。
立川雲水を聴いた、最初であり間違いなく最後の機会だ。
その際とは異なり、定員90人くらいの音楽ホールが会場。平日昼間からほぼ満員である。

元・柳家小かじのかけ橋さんは、二度目の二ツ目に上がったばかりだというのに、大変な人気である。
このまま順調に行けば、真打へは抜擢があると私は思っている。
かつて立川吉幸師に1年間前座をさせたものの、アッという間に真打に上げた事例が芸協にはある。
かけ橋さんは吉幸師とは異なり、キャリア的には落語協会にいた期間はリセットされているわけだ。だが、芸協はそうした見えないキャリアにちゃんと配慮してくれると思う。
もちろん、実力あっての話。なければ当然のように順送りとなる。
ちなみに、真打昇進時には、元師匠三三が寄席の披露口上に並ぶと見た。協会違いだが、あり得ないことではない。

開演前、かながわPayで20%還元になる、京急鶴見駅下の「鶴見食堂」に行ってみた。
牛丼や焼きそば、カレー等のお店。リトル松屋みたいなものか。
ここの炭火牛丼490円があまりにも旨く驚愕した。こんないいお店があるなんて。
落語と関係なくても、また仕事しにこの街に来ようと決意。

サルビアホールに「ちむどんどん」のポスターが貼られていた。鶴見はドラマの舞台ですかね。
私はこの、評価ワーストのドラマは見ていないが、主演の黒島結菜については、鈴木京香と共演した「行列の女神」のゆとりちゃんがいたく気に入っていたので悪評を残念に思っている。
希代のコメディエンヌだと思ったのです。

ムダ話はこれくらいに。まあ、基本だいたいムダ話なんだけど。

千早ふる
ろくろ首
試し酒

休憩なし、通しで3席。1時間の会だが、5分強の時間オーバー。
いや、素晴らしい内容でした。特に試し酒で描かれた世界は絶品。
完全に真打の芸。この場合の真打とは、もちろん辞めなければ誰でもなれる身分を意味するわけではなく。

先に挙げた抜擢予想は、開演前に書き上げていた。この会終わった後では、もう完全に実力に基づいての抜擢があると見た。
落語協会で二ツ目昇進直後に聴いた際は、私の評価は「なかなか上手い」だった。それから5年経つ今、押しも押されぬスーパー二ツ目になっている。
NHK新人落語大賞とか、賞レースに出たら反則じゃないかというぐらいの。
二度目の前座修業はムダじゃなかった。

かけ橋さんの、ごく少ない悪い点だけ先に書いておく。
しばしば言葉が不明瞭になる部分があった。千早ふるの「女乞食」とか。噺を知らないと、なんて言ったのかなと思ってしまうだろう。
滑舌のよさそうな声なのに、やや不思議ではある。でもまあ、声はいいのに滑舌悪いという噺家さん、誰とは言わないがたまにいる。
かけ橋さんの場合は演者の意識次第で解消できるレベル。致命的な欠点ではないと思うけど。

これ以外すべていい感想。
特にかけ橋さんの「ほどのよさ」は特筆すべきものだと思う。
もうちょっと噺に深く潜り込んでいけるのに、手前でやめる。
柳家の味(小三治の味ではなく)であり、そして芸協の春風亭の味でもある。
その結果、登場人物のやり取りに、客がいつまでも触れていたい世界ができあがる。千早ふるも、そして試し酒においてこれが圧巻だった。

ひとりの会なので、時間になるとかけ橋さんがいきなり登場。
先日二ツ目に上がったばかりなんですよと。二ツ目になるとこうやっていろいろな会ができます。
私は横浜出身です(拍手)。京急鶴見駅の裏なんです(おお)。
そこから電車に乗ってちょっとだけ行った、上大岡というところが実家です(ああ)。ちょっとじゃないですか? でも同じ横浜ですから。
高校は先日も甲子園に出た横浜高校です(拍手)。
そして大学は、横浜国立大学に(歓声)、落ちまして。
今日はせっかくなので、上大岡の実家から来ました。私ぐらいでしょう、さるびあ寄席の前ノリは。
いずれにしても、横浜に縁があるんです。
横浜のかけ橋になりたいと思います。ベイブリッジと声かけてください。

客席の反応が面白い。それを手玉に取っているかけ橋さん。
やり直し前座の際にはこんなのはご法度だったわけで、しかしずっと考え抜いていたのだろう。

本編に続きます

 
 

作成者: でっち定吉

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