邪魔が入った花ごめさんのマクラを不意に思い出した。
初めての昭和大、会場の講堂でなくホールに行ってしまい、「落語しに来ました」と言ってポカンとされたという。
勝手に落語をしに来た素人みたいじゃないですか。
左楽師の高座が終わり、幕が一度閉まる。
ご高齢の師匠が板付きで登場するのはあるが、ちゃんと出てきたのに終わりが板付き?
ということではなくて、色物さんの高座のときに幕を閉める国立演芸場方式らしい。過去、そんなふうにしてたっけ?
幕が閉まったので多くの客が、仲入り休憩だと思って出て行ってしまう。出囃子が鳴り続けてる以上、休憩のわけはないが。
この日のお客さんは、落語は数回行ったことがあるという程度に映る。
国立演芸場で幕が閉まる際は、高座の板を片付ける大掛かりなもの。この高座にはそんな大掛かりはなく。
ただし前座が、色物と落語で舞台全面のジャックを切り替えなければならない手間がある。
前座のいっ休さん、それで頭がいっぱいらしく、どこかで再度メクリを替え忘れ掛けていた。
幕が開いて、のだゆきさん登場。
この人も二楽師と同様、10日前にほぼ同じネタを観たばかり。
ただし10月になったためか、リコーダーの頭部分だけでジングルベルを吹くのが入っていた。
再び幕を閉め、次に開いたら本当に板付きで、すでに金原亭伯楽師があぐら姿で座布団に座っている。
またあぐらか。やはり釈台がいると思う。
2〜3年前に足を悪くしましてすみませんと伯楽師。最近、高座に上がっていたか?
落語とはオチがつくものですと。
隣の空き地や、「やーねー」を振り、雷門の仁王を振り、といって泥棒噺ではなく。
猫の皿だった。
うーん。世代に特有かもしれないが、昔むかしの軽い落語でも、現在流行りの(たぶんお笑いの影響で)ツッコミを刈り込んだ落語でもない、そんな、現代視点からはムダが多く映る高座。
オールドファンには感じ入るところもあろうが、左楽師と違い、現役感はもうないなと。
ここで本当の仲入り。
今度は客の誰も立ち上がらない。でも「おなかーいりー」の声が掛かっていたから大丈夫。
女性の声だった。前座さんがいっ休さん以外にいるみたい。
仲入り休憩後は柳朝師。トリの夢太楼師ともども大森在住で、近いこの会にはよく顔付されているみたい。
春風亭だが、自分は彦六の林家正蔵の一門です。
大師匠、先代柳朝が怪談噺をやる際にも駆り出されました。
誰とは言えないのでイニシャルで言いますが、古今亭菊太楼という人が、まだ明かりが消えていないのに幽霊で出てきて、笑われていました。
執念妄念残念から、お菊の皿へ。
10月なら、まだまだやる?
ハメものまで入り、贅沢な一席でした。
お菊さんの言いかわした男につき、「三平と言っても」のあと、「三瓶です」の三瓶でも、(どーもすみませんのポーズ)でもなく、だって。
三平師をいじるトレンドがあるが、そこまではしたくなくてわざわざ三瓶を入れるらしい。客はわかんないと思うけど。
皿屋敷にお客が大勢集まってきて、「お菊、マンモスうれぴー」。
今どきどうかと思ったけど、昔、小朝師がうれぴーを入れてたなと思い出す。
全体を見るとギャグは刈り込み気味でスピーディ。最近のお菊さんは芝居がクサくなっちゃってというくだりがなかった。
そして、食べ物がいいせいで最近ぽっちゃりしてきたお菊さんは、それでむしろいい女になったって。
なんだか、柳朝師のポジティブぶりがよくわかる。いい人だな。
お菊が斬り殺されるシーンも手短だし。
全体は変わらないが、細かい部分のオリジナリティがある高座。
そして終始余裕がある。
以前もそうだったのだが、ここまで落語協会員。
後半2組が芸術協会。
ヒザはうめ吉姐さん。
三味線も踊りも綺麗で、心が洗われます。
トリは三笑亭夢太朗師。
4年前のこの会でもトリだった。
73歳の超ベテランであるが、80代の師匠がふたり出たこの会では若手の部類かもしれない。
左甚五郎について。最初からネタバレしているタイプだ。
ねずみ対決を鰹節の彫り物で勝利。
長逗留する宿屋は大津宿だった。西なんだ。この設定は初めて聴く。
この宿屋は関西弁ではない。
上方でやる抜け雀は逆に小田原宿で関西弁だったり、まあテキトーなのがよろしい。
甚五郎は日に1斗酒飲んでるんだって。試し酒もびっくり。
いいけど、日に18キロの液体流し込んでることになる。
宿屋の亭主が、からっけつな甚五郎にさして怒っていない。
抜け雀でもそうなのだが、私はこういうのが好きで。感情の起伏が激しいほうがわかりやすいだろうけども。
裏の竹やぶに出かける際、のこぎりを持っていくというので恐れる亭主が、もし首を飛ばす気ならうちのかかあを連れてってくれと。
200両の値に怒った侍が戻ってきたとき、300両の値にするのは亭主の判断。
幸せな一席で終了です。
この後抽選会は、柳朝師が仕切り、いっ休さんが手伝っていた。
左楽師もニコニコと客席に登場。
来年も左楽師を聴きにきたいものだ。
できれば、看板になる人を一人入れてくださると、なおありがたい。
明日はキングオブコントを。