キングオブコントの記事が書きかけなのだが、あんなことがあった後なので「落語は楽しい」という事実を世に出したい。
ニュース当日に聴いた落語会から先に出します。今日明日で終えますから。
春風亭かけ橋さんを聴きに巣鴨へ。
スタジオフォー巣ごもり寄席は、三遊亭天歌さんと同じ二ツ目の会。
朝はいささか落語嫌いになりかけた。前日に予約してなかったら、出かけるのやめた気がする。
師匠と闘う弟子のニュースに触れたばかりの日に、移籍を余儀なくされたかけ橋さんとはある種タイムリー。
この日はかけ橋さんだけでなく、初めて聴く他のふたりも素晴らしい高座。
感激した。
落語好きでよかった、本当に。
ちなみに使っていた時間は、それぞれ順に20分、30分、30分。
東京かわら版では2時間も取ってあるように書かれているけど、そんなにやらないことはわかっている。
スタジオフォーは昼間からお年寄りで満員。
ここはPayPayで支払えるのがありがたい。落語界が世間水準から極端に遅れてるのだが。
ちなみに千円で、神田連雀亭の昼席とおおむね同じ規模。ただしこちらは3人なので必然的に長講となる。
火の用心 | かけ橋 |
権助提灯 | こはる |
宿屋の仇討 | 音助 |
かけ橋さんから。
横浜生まれ横浜育ちの挨拶。鶴見の会では「横浜高校出身」で拍手が起こっていたが、巣鴨ではこれはなし。
初めてここ、巣ごもり寄席に出させていただきます。
私が言うのもなんですけど、今日のメンバー、すごくありません?
いえ、私は含めていませんよ。私は宮治アニさんの腰の低さを見習おうと思ってるんですから。
あのアニさん、自分の会で大ホール満員にしておきながら、最初のあいさつが「こんなどこの誰かもわからないようなやつの会にお越しいただいて」ですよ。全国区なのに。
今日はこはる姉さん、音助アニさんと一緒で、数日前から興奮してました。
テンション最高潮だったんですけど、今朝のFRIDAY見てがっくりしまい、テンション落ちました。
師匠柳橋とともに、大師匠である先代柳橋を偲ぶ会に出るんです。
かけ橋さんも先代の噺をネタ出ししてくださいと言われたんですけど、火事息子しか持ってなくて、そんな大ネタ師匠の前で出せません。
ただ鯉朝師匠が、先代の噺持ってるから稽古してあげると言ってくださったんです。断れませんから、教わってネタ出ししました。
その「火の用心」という珍しい噺をやります。
珍しい噺ってだいたいつまらないものなんですが、やりようによると思います。
口の悪い熊さんに、やられっぱなしのお人好し、甚兵衛さん。
娘のお七夜だというのに、押し掛けてきた熊さんに、
「初七日か」「青いから青ん坊」「吉原に売れ」その他ひどいことを言われまくる。
初めての娘なので「お初」と名付けたが、屋敷の奉公に上がったりすると、「徳兵衛」って野郎と一緒になって心中すらあと。
ひと月後、熊さんにも娘が生まれたので復讐しようとする甚兵衛さん。だが見事に返り討ちに遭う。
「でけえなあ。なんだかかあか」など、子ほめと似ている箇所が多数ある。この噺の場合、わざと間違えるんだけど。
そして子ほめと同じ、オウム返しの失敗の噺。
落語の文法は使っているのに、よくある噺と違うのは、悪口雑言を浴びせようとするのが目的だということ。
「野崎詣り」の悪態は八百長だから違う。
まあ、噺の了見がよくないわなあ。
かけ橋さんが上手いから面白かったけども、相当に嫌な噺だった。
パワハラ報道の後にする噺としては、どうか。
同じこと思った人、多かったと思う。珍しさの喜びを、噺の無軌道振りが打ち消してしまう。
先日書きかけのキングオブコントで触れたばかりだが、聴き手が暴力性をよしとするかしないかで、楽しみは大きく違う。
こんな噺、売り物にできたらそれは凄いけど。
「徳兵衛」を「徳三郎」と間違った箇所があった。
お初徳三郎ではなににも掛からない。
熊さんの娘は「お七」。
かみさんに入れ知恵され、再度「(八百屋)お七なら自分のうちに火を付けらあ」と言いにいくが、やはり失敗。
落語って、失敗しないと終わらないのね、ホント。
落語は「スカッと」系のネタには向かないことがよくわかる。
私はスカッと系の仕事をちょっとしているので、この噺を、「嫌な友人を切りたいのに切れない人の話」として捉えてしまうのだった。
落語だから、本当はそんな深刻なものじゃないんだけど。
まあ、でもこの日の会全体を見たとき、こんなものがあってもまあいいか。
かけ橋さんも今後どんどん聴いていくつもりだし。日頃はメジャーな古典落語が多いはずだ。
ちなみに芸協に移籍してから覚えた噺でも、元の師匠の口調が出ることがわかったのは面白かった。