上野広小路亭しのばず寄席4 その5(三遊亭好楽「一眼国」上)

好楽師の高座に触れるため、SNSの自由について1日論じました。しのばず寄席に戻ります。

ヒザはブリッコ魔女の瞳ナナ先生。若い娘にしか見えない、真の魔女。
ピン芸は一年振りだが、「北見伸&スティファニー」の舞台なら今年国立で観た。
ハロウィンのとんがり帽子、パンプキンスタイル。
少しでも照れると変な感じになるだろうが、そんなことはない。

最後に紙に描いたスプーンを曲げてしまうマジック。
私もこれ、1年前の舞台で助手を務めたので、もらってます。

トリは「中の舞」の出囃子で、好楽師。待ってました。
円楽党は亡くなったばかりの円楽師で持ってたということになっている。否定はしないが、ここ数年私は好楽師のとりこである。
殺伐した師弟関係もある中、好楽師こそ理想のボスである。
笑点のポンコツ振りからすると、「上司にしたい芸能人No.1」には程遠いだろうけども、でも私にとってはそんなイメージ。
思えば、好楽師を初めて聴いたのもしのばず寄席だった。日頃はだいたい亀戸で聴いてるんだけど。

9月30日に円楽が亡くなりました。
家を訪問し、「なんで俺より先に逝くんだ!」と声を掛けたら、おかみさんも弟子たちもみな泣いてました。
そしてここからが聴きたかった部分。
圓生という名前、それから圓楽も、ちゃんと誰かに継がせますからと好楽師。
誰かというほど人材はたくさんいないから、内定しているのだろう。

円楽は私より若かったけど、9つ上の木久扇さんは元気ですね。
「なんでアニさん死なないの」って訊いたら、「死ぬの忘れちゃった」って言ってました。
先日笑点で熊本に行きました。弟子の披露目もあったんですけど、木久扇さんが予定にないのに口上に付き合ってくれて。
木久ちゃんはもうお酒はやめてるんですけど、相変わらず飲み会が好きで。打ち上げもずっと付き合ってくれてます。
このアニさんは同じ正蔵門下です。
師匠はすでに高齢だったので、大阪に呼ばれる際など夫婦で出かけますから、弟子が留守を守るわけです。
そんなときアニさんがやってきて、みんな行こうよって誘ってくれるわけです。
初めて天ぷらをご馳走になりました。私天ぷらなんて、お惣菜の冷えたものしか知らないから。紙の上に載せられた熱々の天ぷら、びっくりしましたね。

好楽師の昔話は聴いていて本当に楽しい。
先代圓歌、馬風といった師匠のように、これだけでも高座が務まると思う。
そして胆力がいよいよ強くなった今、以前のようにオチ・ツッコミを急いだりしなくなっていて、噺に軽さと厚みが増している。相反する要素っぽいけど、本当だ。
好楽師の漫談は、圓歌馬風と違いほぼアドリブ。どこへ進むかはわからない。まあ、どこへ進んだって楽しいのだが。
そういえば最近芸協で、「柳亭春楽」という名前が復活した。
先代は、好楽師の著書に出てくる師匠。「よび」だったので高座には上がらない、愉快な楽屋の大将。
本のおかげで復活したんだと思う。

先代正蔵一門に、紙切りの正楽師(先代)がいた。
埼玉出身でなまりが取れないので、噺家を断念し、初代正楽に預けられて紙切りに進んだ。別に素養があったわけでもないのに、努力したらできるようになったから立派だ。
この正楽さんが、師匠の家の前の掃き掃除をしていると、警官に呼び止められた。そこでなにをしてると。
いかにも田舎から出たての格好だったためだろう。
正楽師、師匠の家の掃除ですと答えるが、警官はなお不審がる。
お前なんかが弟子なものか。ここの師匠は「はやしけまさぞう」っていう立派な先生なんだ。
居間でやりとりを全部聞いていた師匠、そろそろ出ていこうかと思っていたが、やめたという。

そんな正蔵から教わった噺をやりますと言って、昔の見世物小屋。
「口が三つに歯が二本の化け物」「八間の大灯籠」「六尺の大イタチ」「べな」「蛇女」。
とくれば、一眼国だ。
好楽師からも以前聴いた。
正蔵系と圓生系、両方持ってる好楽師は持ちネタが多いのだが、最近になって寄席で聴くネタが被り出した。
だが、この師匠はキチッと寸分たがわない高座を務めるスタイルではない。毎回違うので、聴き飽きないのだった。

ずいぶん長くなったので、もう1日伸ばします。
本編だけで1日分あるかやや不安だが。

続きます。

 

 

作成者: でっち定吉

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