師走の落語・・・落語聴くなら12月

ネタ切れですみません。
日曜にやっている「うちの師匠はしっぽがない」は、実に楽しい。
美しい師弟愛に毎回泣きそうであるが、1日分のネタにはまだならなくて。

さてそろそろ12月である。
落語を聴くのにいちばんいい季節は12月である。
正月だけ初席で落語を聴くなんて人も多い。習慣をどうこういう気はないけれど、何と言うか、もったいないなあと。

12月がいいのは、この時季ならではの噺が掛かるからである。特に、借金取りから逃れる噺。
この時季だけなので、珍品も多いけども。ちょっと見てみます。

掛け取り

年末物ではいちばんメジャーな噺。
市馬、文治といった師匠が代表ですか。
実に遊び心豊富な噺だ。
借金取りが好きなものを入れてご機嫌で帰ってもらえばいいのであり、創作力が試されるが、本当に得意なものがあればそれをやればいい。
市馬師なら当然歌うし、文治師なら昔の師匠方のモノマネをする。
桂竹千代、林家けい木なんてモノマネ好きの二ツ目さんはやるだろうか?
今度真打になる林家木りんさんなんて、競馬実況でもやればいいのに。できなくても覚えればいい。
古今亭駒治師には鉄道掛取りを、柳家小ゑん師にはアキバ掛取りをやって欲しい。絶対、一度は考えてると思うんですけどね。

睨み返し

掛取りの「喧嘩」のシーンが最初に来ていたら、掛取りでなく「睨み返し」。
場面が変わると、ただただ怖い顔で借金取りを追い返すビジュアル落語。
もう4年前に春風亭一之輔師から聴いた。というか、観た。実に怖く楽しい顔だった。
顔の怖い噺家さんはチャレンジしてみたらいかがでしょう。
だからといって、橘家文蔵師がやっても別に似合わないと思うのだ。
春風亭鯉枝師なんてどうかな。

言訳座頭

これは柳家小里ん師から聴いた。このブログ始める前だ。
依頼を受けた按摩が、口八丁手八丁、あらゆる言い訳を駆使して借金を待ってもらうという。
依頼を完遂するためには、炭屋に因縁を付けることも厭わないが、敵もさるもの。丁々発止の攻防が繰り広げられる。
どこまで行っても、どこか切迫感がないのが落語のいいところ。

尻餅

尻餅には、借金取りは出ない。
借金はないが、カネはない暮れの夫婦。長屋で餅が搗けないのはうちだけだと女房が文句を言うので、じゃあ餅を搗くかと八っつぁん。
声を使い分けて、架空の餅屋を呼び寄せ、女房の尻を叩いて架空の餅をこしらえる。
究極のごっこ遊び。

何人もの声を出すということは、なんのことはない、劇中人物である八っつぁんが落語をするようなものである。
上手い尻餅を聴くと、「夫婦二人だけの部屋」「若い衆を連れた餅屋」の両方が二重に浮かび上がる。
高座の上にはひとりしかいないわけで、話芸も実に奥が深い。

願い事や

年末にはクリスマスもある。
古典落語にはもちろんクリスマスは出てこないが、新作には多少ある。
三遊亭円丈「紙飛行機イブ」とか、三遊亭天どん「クリスマスの夜に」など。
いちばん好きなのが、柳家小ゑん師匠の「願い事や」。
私は師のオタク落語も好きだが、もっと好きなのがメルヘン落語。メルヘン的な噺は他に演る人がいない、
下仁田に単身赴任のお父さん、おでん屋で流しの「願い事や」に遭遇する。
さまざまな願い事を有料で叶えてもらったあと、最後には天を飛ぶ馬車に乗って柏の家族に会いに行く。
2019年の年末に聴いて、あまりにも波長が合ったがゆえ「5年は聴かなくて大丈夫」などとブログに書いているのだが、3年経って、もう聴きたいな。

けんげしゃ茶屋

上方落語でも珍品中の珍品。
設定としては新年なのだが、本当にめでたい新年でなく、年末に出すものだろう。
桂文珍師が日本の話芸で出していた。
ばっちいわ、縁起でもないことばかり言って人を嫌がらせるわ、とんでもない噺である。
だが、こういうのにたまらない味を感じるのである。

二番煎じ

大好きなこの噺が、落語THE MOVIEで取り上げられていた。
三遊亭兼好師の落語に併せ、役者がアテた演技をする。
想像力を固定されそうなので、嫌いではないがそれほど見てこなかった。だが、この噺に関しては、思い描くイメージと、映像とにほぼブレがなかった。
私は、勝手にこれを人情噺と捉えております。

 
 
他にも味噌蔵や時そば、ふぐ鍋など料理関係の噺も年末がいい。
芝浜や文七元結も年末が最適。
あと徂徠豆腐とか。
寒いときは落語も楽しいものですね。

作成者: でっち定吉

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