NHK新人落語大賞に出す古典落語の演目を考える

今日日曜日は出かけるつもりで会の予約も入れていたが、久々にコロナ中止になってしまった。
上方の笑福亭喬介師の会「あほかいな」が新宿・道楽亭であったのだが、ご本人が濃厚接触者該当だって。
予約を入れたその日に中止メールが返ってきて、崩れ落ちている。
まあいい、落語会は上方落語含めて星の数ほどあるんだから。

NHK新人落語大賞は立川吉笑さんが「ぷるぷる」で優勝。
「立川吉笑 ぷるぷる」で検索訪問がもうちょっとあるかなと思ったのだが、私の既存の記事がニュースに追いやられて順位が落ちてしまい、期待ほどでもないのだった。
Googleで上位を目指すって本当に難しいのだ。新しく出した記事と、神田連雀亭の高座を書いた既存の記事がカニバリズム(食い合い)を起こしてしまっているようで。
まあ、徐々に増えると思う。
それはさておき。

この大会、新作落語は伝統的に強い。
新作落語の場合、創作力を足しこんで評価してもらえるからであろう。
もちろん創作がよくできていることは大前提。ゼロベースで客にフックを掛けないといけないのから大変だ。
外した場合は取り返しのつかないことになって、たまに本当に取り返しのつかないことになっている人も見る。

新作が強いことは共通認識としてあっても、やはり多くは古典落語を出す。
さてその場合、受賞しやすい演目というものがあるのではないかと。
「自分の持ちネタからウケそうな演目を選ぶ」というのが普通の考え方だが、でも「NHKを受賞するためにこの演目を覚える」という方法論があったっていいのではないかな。
ひとつ、今から大会を目指す若手二ツ目をたらしこんでみよう。

過去の受賞だけでなく、出場演目をWikipediaで調べているが、演目の出ている年と出ていない年とがあって困る。
古くなると資料も散逸するのだな。

今年のトップバッター、桂源太さんは「元犬」。
前座噺の元犬じゃ優勝は無理だろうと思ったのだが、よく考えたら桂宮治師がすでにこの演目で優勝していた。すみません。
とはいえ、よほどの面白落語にしていなければ、やはり無理だと思うのだが。
「初天神」だったらイケそうな気もする。
実際に春風亭一之輔師がこれで優勝しているのだが、でもあの人はあまり参考にしちゃいけない。素材は古典でも方法論が新作に近いので。
前座噺はもともとウケを目的にするものじゃない。やめたほうがよかろう。
学校寄席で「転失気」がウケても調子に乗らないほうがいい。

過去にも「真田小僧」「桃太郎」「子ほめ」「たぬき」「金明竹」などの演目が見られる。
いかなる勝算があったのだろう。
寄席では重宝する噺ばかりなのだが、大会では爆発力に欠けすぎている気がする。
桂文治師が「平林」で勝っているのだが、これも危険だと思う。
フレーズでウケるだけでは優勝まで届くまい。

前座噺でなくても、「あくび指南」「浮世床」「大安売り」「権兵衛狸」等の、寄席の小品はあまり大会向けでないと思う。
たいこ腹もそう思うけど、でも菊之丞師がこれで優勝している。

近年の古典落語の優勝演目を見ると、こう。

  • 天狗刺し(桂二葉)
  • ふぐ鍋(桂華紋)
  • 磯の鮑(現・三遊亭志う歌)
  • 愛宕山(桂佐ん吉)
  • やかんなめ(現・春風亭三朝)

実にいいヒントになる。いずれも珍しめである。
そして、ストーリーは単純だが、クスグリの入れよう次第で爆発力を持つ。クスグリだけでできているような噺は向かないが、そういうタイプではない。
あるいは、愛宕山みたいな大ネタを編集するかということ。
珍しめのネタは、なにしろ新鮮に映る。ここに爆発力を加えてやるといい。
といって、ここに挙げたネタを再度なんてのはいけない。
これをヒントに、受賞できそうな珍しめ古典落語を考えてみます。

こんなのどうですか。

  • 人形買い
  • 掛取り
  • 岸柳島
  • 馬の田楽
  • 蔵前駕籠
  • 疝気の虫
  • ろくろ首
  • 親子茶屋
  • 虱茶屋
  • 風邪の神送り
  • 天神山(安兵衛狐)
  • 幽霊の辻(小佐田定雄作)
  • 月に郡雲(小佐田定雄作)

珍しければいいというものではなくて、爆発力を秘めた落語を選んでみた。
武助馬、蛙茶番、権助芝居などの芝居ものはちょっと難しいと判断。
廓噺も入れたいが、「五人廻し」など11分では無理だ。

ふぐ鍋がオンエアされたときはびっくりした。なにしろ乞食に毒味をさせる噺である。
これがいいのだから、「犬の目」や「唖の釣り」も良さそうな気がする。
ちょっと怖いので載せませんでした。

「花見酒」も入れたかったのだが、季節が逆なのでやめた。
「人形買い」も季節ものだが、季節要素はそれほど強くはない。「壺算」と似ているが違う部分に味がある。
ただ、前半で切らないといけないのが難点。

掛取りは、入れ込むギャグがよくできてないとダメ。むしろ新作落語の方法論が求められる。

それから古典設定の新作落語を二つ入れてみました。
小佐田先生の作品であるが、これは古典としてやればいい。

というわけで、若手も今からプランニングして、勝てる噺を覚えましょう。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. なかなか興味深い視点で、考えてみれば今まで、そんな視点での記事などもあまりなかったような・・・
    で、これは! と思ったのは「掛け取り」ですね、長短の時間調整も簡単だし、コンテンツの変更も簡単。何より演者の個性が出しやすいという。逆に今までなかったのも? 「虱茶屋」も個人的には好きな噺ですが、これもまたレアですかね。
    過去の大賞というのでは、定吉さん的にどう見えるかは別にして、小朝師の「稽古屋」は当時はかなり新鮮でしたし、王楽師の「鼓ヶ滝」もニッチをうまくついたかなあと。

    1. いらっしゃいませ。
      「鼓ヶ滝」は観てましたが、今思うとなんでこれで獲れたのか、やや不思議です。
      近年はレベルアップが著しいので、噺自体ハネないと戴冠できないのでは。
      新作に負けない強い古典が必要な気がします。

      「虱茶屋」は、もう一度よく考えてみたら、ちょっとキザな気がしてきました。
      仕草で感心させるわけですから。
      代わりにひとつ思いつきました。兵庫船(鮫講釈)なんかいいのでは。

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