亀戸梅屋敷寄席28(中・三遊亭好楽 円楽の思い出、志ん朝の思い出)

トリは好楽師。
この師匠は、波長が合えば合うほど楽しい。だからついまた来てしまう。
持ちネタの多い好楽師だが、よく来てるので最近演目がカブるようになった。
だが、カブり出してからがこの師匠の真骨頂である。
毎回、噺が違うんだもの。
毎回演出を試しているというより、頭を空っぽにして、その場で作っている感じ。
ベテランの師匠で、他にこんな人はいない。
若い頃に覚えた噺、年取ってから掛けるとなると、それほど大きく変えられるものではないはず。
好楽師だけ、なぜこんなやり方が可能なのか。
それは、若い頃に多くの先輩の噺を体に入れてしまったから(想像)。
そんなスタイルだと、若いうちは明確な個性が発揮できなかったかもしれない。
だが今や、この高座自体唯一無二である。
師の体内には、ふたりの師匠や志ん朝、談志、その他すべてが入っているのだ。

当ブログ、好楽師の記事を出して、それほど数字が伸びた記憶がない。
同じ席で、孫弟子のけろよんさんのほうがずっと多かったときはずっこけた。
だが前回、上野広小路亭しのばず寄席の記事が個別アクセス1,200を超えて、快挙である。
まだまだ元気な師匠、これから5年で落語の評価をことごとく塗り替えていくから、見ていてください。
「人徳者」という評価では、足りない。本業のウデを思い知るべし。
まあ、毎回違う高座の楽しさを味わうためには、通わなければいけないのが難点だが。

もう11月も終わりですねと好楽師。
今年は多くの人が亡くなりました。小三治師匠に圓窓師匠、そして弟弟子の円楽。
9月30日は、2年前に亡くなったかみさんの命日で、墓参りに行ってたんです。
帰ってきたら円楽が亡くなったと聞いて。
かみさんは72で亡くなったんです。円楽も同じ日に、同じ年で亡くなりました。
円楽は腹黒キャラで売ってましたけども、本当は気配りの人でした。
なにしろA型ですから。あたしがずぼらなB型です。
円楽はあたしより早く笑点に出て、売れてました。
あたしがまだ出てない頃、仙台の会で一緒だったんです。
一緒に帰京すると、円楽が言います。

「アニさん、銀座で豪遊しようよ」
「いいけど、お前売れてるんだからお前がご馳走してよ」
「ダメだよ、この世界は先輩絶対なんだから」
「でも、ないよ」
「貸したげるよ」

円楽が20万貸してくれました。それで豪遊したら、20万じゃ足りなくなっちゃって。
追加でまた10万貸してもらいました。
それで翌朝、30万持って円楽のうちに返しにいきました。
なにやってんだろうと。

今後は志ん朝の話。
顔が似てるというのでかわいがってくれた。
「俺の噺は全部やって構わないから」
志ん朝の出囃子「老松」も、好楽師が使うのをお姉さんが許可してくれている。
なので会では老松を使うこともある。

飲みに連れていかれると、「実の弟」という設定になる。
あら、師匠のところはお姉さんがふたりと、それから馬生師匠じゃないの?
と聞かれると、こいつは隠し子なんだと真顔の志ん朝。
そんなことあり得ないんですけどねと好楽師。志ん生おとっつぁんはモテなかったんですから。

師がよく語る、池袋演芸場の志ん朝の芝居に10日通った話。
常に最前列で志ん朝を待ち構える信夫少年。
志ん朝が楽屋で言う。
「なに、あいつまた来てるの。やりにくくって仕方ない。今日も野ざらし掛けるつもりだったのに、仕方ない、火焔太鼓にするか」
その後楽屋入りした好楽師。志ん朝に挨拶すると、「あ、あのときのお前! お前のせいでネタ変えなきゃならなかったんだ」
志ん朝の腕が上がったのはあたしのおかげ。

そんな志ん朝から教わった噺を今日はやります。
「にいさん大変」とお咲さんが上がり込んでくる。
厩火事かと思うと、風呂敷である。
これもかつて一度聴いているのでカブったが、まったく気にならないし、記憶とずいぶん違っていた。

風呂敷はもともとバレ噺であったという。
かみさんが男を連れ込む噺だったのだ。菊志ん師からそんなスタイルを聴いたことがある。
好楽師から前回聴いたものは、かなりおかみさんに隙がある演出だった。
お咲さん、アニイに嘘はひとつもついていないのだが、内心はどうだったか。
語らないだけで、間男の既遂だったのではないかと。

そんな、噺の根幹すら今回は異なっている。
隙はかなり多いのだが、かろうじて未遂かなと。
既遂か未遂かはもともと聴く側次第というところがあるが、それが未遂のほうにブレたのであろう。
もちろん、現在の一般的な風呂敷のように、亭主の一方的な焼きもちと解釈しても構わない。

また長くなってしまった。
好楽師の高座は、メモも録音もなくても全部頭に入るのである。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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