正蔵喬太郎ガチンコ二人会 その2(柳家喬太郎「初音の鼓」と街のマクラ)

この鶴川落語会、正蔵師の2席のデキも間違いなくよかった。
ただ、それ以上にこの日はマクラで喬太郎師が爆発していた。2席とも。
柳家喬太郎独演会だったような印象を受けて帰ることになる。
二人会で先輩食っちゃっていいのか? まあ、正蔵師の穏やかなスタイルは、それでいいのか。
喬太郎師喋りすぎて、最近は聞かなかった咳き込みも2〜3回。

先月の池袋の芝居に行かなかったが、代わりにこの会に来れてよかった。
寄席の喬太郎師も実にいいが、長い長いマクラの喬太郎師が聴けて幸せだ。
しかし、私のブログのスタイルからすると困っちゃうな、この面白マクラ。
どこまで取り上げるか、作法の妥当性とは別に。
ともかく、覚えているマクラを機械的にここで出しても、面白さが伝わるとは限らない。
字に起こすとつまらないこともたくさん喋っている喬太郎師。しかしそんなのも、聴いてる限りはむちゃくちゃ楽しい。
活字にない話術の妙。

前座の枝平さんが釈台を持ってくる。そして座布団を曲げて作ったあいびきを。
喬太郎師登場し、座布団あいびきを90度回転させてからあぐらをかく。

そこはかとない違和感をお持ちかもしれません。東京の噺家は、こういうものは使わないのでございます。
こんな釈台を使っているからといって、笑点の司会者を狙っているわけではありません。あれは鼻メガネ師匠にお任せします。
歩くのはなんてことないんですけど、正座が難しいんです。職業病です。

なんだったか、これがダメなら理事やめますなんて言うキョンキョン。
あ、今日は副会長と常任理事との会なんですよ。オーラないでしょ。

私も小田急線出身ですからと喬太郎師。
小学3年生まで祖師ヶ谷大蔵でした。
今では池袋に住んでますけど、この沿線に来るとホッとします。
今日だってちゃんと、新百合ヶ丘で乗り換えて一人でやってくるんです。間違えて唐木田のほうに行かないように気をつけて。やればできる子なんです。

毎年来ている鶴川を上げたり下げたり。下げた後は必ず謝罪してギャグにする。
逆に言えば、言い方ひとつで必ずギャグにできるので、この人は発言が自由なのである。
鶴川といえば、箱根そばとC&Cなんだそうだ。
箱根そばのコロッケそばのコロッケはカレー味。そしてC&Cのカレーは甘くてあの中途半端な感じがいい。
あの中途半端さはココイチには出せない。
もっとも鶴川、ココイチはあってもC&Cはないみたい。勘違いなのか閉店したのか。
京王系の啓文堂書店はあるから、C&Cがあったっていいわけだが。
明大前のC&Cでひとり佇んでいるのが好きなんだって。

現在師の住んでる要町が、アド街に登場した。
谷根千に対抗し、要町と千川を合わせて、「かなせん」と言うと番組で言っていた。
ええ〜聞いたことないよと喬太郎師。あのあたり同業者がたくさん住んでいるが、楽屋でも誰もかなせんを知らない。
ランキングには「福しん」が出ていた。福しん行くし好きだけどさとキョンキョン。チャーン店じゃん。
チェーン店が取り上げられる街なんです。

我々は旅の仕事が多いですね。「ツアー」なんて言ったりもします。
柳家三三とか、春風亭一之輔とか、彼らなんかは「ツアー」も似合うんですけど。
私が落語教育委員会でご一緒している歌武蔵師匠は、「巡業」って言いますね。元力士ですから。

最近喬太郎師も、北海道と東北を回ったばかり。
ホール落語会の合間に、学校寄席も組み込まれている。
ある高校では、男子生徒の膝の上に女子生徒が座っていた。
帯広のホテル客室で、全裸でくつろぐ喬太郎師。東京では経験のない、北朝鮮ミサイルの速報(Jアラート)を経験する。
TV画面いっぱいに「ミサイル発射」の警告が出る。
地下に潜れとも案内が出るが、帯広には地下がない。
たぶん帯広のリッチモンドホテルは、ミサイルには勝てないと思う。
ともかく、裸で死んだら発見時にシャレにならないので、慌ててパンツを履く師匠。

さらにJアラートから脱線し、ジェラートの話。元の話題自体脱線なんですがと。
落語教育委員会の九州巡業中、久留米の街に出た喬太郎師、二ツ目の月の家鏡太(現・小圓鏡)にジェラートをおごってやる。
一つだけテイクアウトを頼んだが、店員に「スプーン2つ」にするか訊かれる。なんで後輩とひとつのアイスを二人でいちゃいちゃしながら食わなきゃいけないんだ。
ちなみにこのネタ、二席目の演目選択に影響したみたい。

本編は軽めの一席で、初音の鼓。
なにしろマクラが長いので、こんなのがちょうどいい。
冒頭、「やっと噺に入ったな」と殿さまに言わせる。
「釈台があると楽で、つい長くなるんですよ」だって。
古典落語だが喬太郎師が発掘した噺であり、「古典設定の新作」っぽい。
師の番組や落語研究会で出していたのと比べると、また進化していた気がする。

道具屋と三太夫、それから殿さまが、狐が憑いて鳴く際の、鳴き方の描き分けが見事。
道具屋はまったく照れず、三太夫は激しく照れ、そして殿さまは貫禄を持って。
マクラの爆笑を、ちゃんと締めていく喬太郎師。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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