神田連雀亭ワンコイン寄席45(上・春雨や晴太「洒落番頭」)

12月末まで、足立区、北区、葛飾区、江戸川区、文京区でQRコード決済の30%還元をやっている。
台東区、荒川区、練馬区、港区でも20%。
今日もまた、日常の買い物のために遠くの中小スーパーまで出向くのであった。
とはいえ、スーパーと昼ごはんだけでは、JR1日券の費用を考えるとさしてペイしない。
ここに落語を加えると、たちまちにしてお得な気分になる。

行き先は千代田区の神田連雀亭。出かける先がありさえすれば、何区でもいいし、時間も問わない。
連雀亭、つ離れしていて盛況だ。

2番手の演者が、前回聴いて口に合わなかった人。
今日もやはり口に合わなかった。
学校寄席のマクラはありものだし。
三平みたいな無駄な圧の強さがね。圧が強くても好きな人は、桂竹千代さんぐらいだ。

トップバッターの春雨や晴太さんは、わりと好きという程度の人。今までは。
だが今回、私の中で一段昇格した。次からはもう、目当てにする。
キャリアの浅い人がどんどん達者になっていくさまを目の当たりにすると、とても嬉しい。
決して押さず、といってぐんと引いて客に身を乗り出させるような芸でもない。
実に中庸な語り口が好ましい。

春雨や晴太と申します。
我々のほうで名字にあたる亭号ですが、春雨やというのは3人しかいません。
本当はもう少しいたんですけど。
今笑った方は落語界に詳しい方です。
日本にパンダが13頭いるんですが、我々のほうが希少です。
このようにアクリル板もついてますし、我々も保護して欲しいです。

1月からこの連雀亭、人数制限なくなって38人になるそうですよ。
アクリル板が取れるのかどうかは知りませんけど。
私は、コロナ禍でこの席に加入したので、満員というのは一度も経験していないんですね。
半数だからって定員いっぱいになるわけじゃないんで。本当に少ないときもありますよ。

お客さんが来ないときも、人数を記載しなきゃいけないんですよ。
「お前のときは客が来ない」というのが丸バレのシステムなんです。
たまに本当にゼロのときがあるんですが、そのときの演者は悔しかったんでしょう。理由も書いてあります。
「オリンピックのため0人」とか、雨の日だと「雨天中止」とかです。

このアクリル板、だいぶ曇ってはきましたが、毎日ちゃんと拭き掃除しています。
この連雀亭の番頭を務めていた先輩がいます。最近どうしてるのか、たまにフライデーなんか出てますけど。
その先輩が熱演するのを袖で聴かせてもらっていました。そうしたら、アクリル板が倒れてきたんですよ。
びっくりしたんですが、先輩は「ああ大丈夫大丈夫」と。
今思えば、慣れてたんですかね。アクリル板が倒れることにじゃないですよ、痛みに。

と、かなりヤバめのネタ。
当ブログに書いていいのか。
いいと思います。後方支援なんだし。
あいにくこの日の客は、ピンと来ない様子。
アクリル板が倒れてきたのはウソでしょう。

「春雨や」は師匠雷蔵と、師匠から真打にしてもらえない弟子の風子、そして晴太の3人である。
他に、地方でやっている弟子(協会員ではない)もいるが、これは人数に入っていない。
3人以外に、抜けた春雨やがいたわけである。

こういうネタを繰ると、二ツ目さんはどんどん前に出てきてしまい、白けてしまうこともある。
晴太さんは一切前に出ないので聴きやすい。

番頭さんが小僧の定吉に声を掛けている。今のお客さんはなにを買われた。
豆5合です。
お前も商売人なら、5合の豆を買いに来たお客さんに、1升2升買ってもらうようにしなさい。
でもいいんじゃないですか5合で、商売半升といいますから。
うまい。お前シャレが好きなのか。

冒頭、位牌屋でも始まるのかと思ったら、洒落番頭。
最近地味に流行るようになった噺。芸協では初めて聴く。
なぞかけブームが背景にあると見ている。
「庭蟹」とも言うが、最近はネタ帳に洒落番頭と書かれることが多いのではないかな。
どちらの演題も落語らしく私は好きです。

メガネ外して本編に入り、ますます感心。
この噺は寄席の小品。
だから柳家わさび師など典型例だが、オリジナルのシャレを入れて盛り上げる。それがごく普通の方法論だ。
だが晴太さん、「すみに置けませんな」「そうすずけってはできません」「にわかにはできません」と従来のシャレだけで乗り切る。
これが実に楽しいのだった。
番頭が定吉に、お前小豆はいつできたか知ってるかと問う。
「あずき桃山時代です」「それだ」
この呼吸だけで大爆笑。

番頭が堂々シャレを語るのに、旦那がことごとく真面目にスルーしていくだけでこの噺は楽しい。
序盤はスタンダードに進める方法論だったようだ。
旦那が番頭に詫びるため再度呼ぶシーンでは、取次の定吉がオリジナルシャレをぶつけていた。
番頭がついに我慢しきれずシャレをぶっ放したのに返して、「ビーンビーンですね」。

また楽しみな人が現れました。

トリの立川笑二さんに続きます

 
 
※洒落小町は洒落番頭とは違います

作成者: でっち定吉

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